ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『川の底からこんにちは』

2010-04-19 23:04:09 | 新作映画
----いま話題の満島ひかり主演作。
彼女の映画にしては楽しそうなタイトルだね。
「いやあ。これがなかなかシビア。
でも、前向きな映画であることは確かだね。
満島ひかり扮する主人公、OLの佐和子は
上京して5年。仕事も恋愛もうまくいかず、
妥協した毎日を過ごしている。
そんな中、父親(志賀廣太郎)が病に倒れたことで、
水辺の町にある“しじみ工場”の後を継ぐことに。
ところが、その工場で働くおばちゃんたちは、
『父親を見捨てて、駆け落ちして出て行ったくせに…』と、
佐和子のことをバカにしている」

----あらら。そんなんじゃ、仕事もやりにくいね。
「うん。しかもそこに、
一緒に工場の跡継ぎをしたいと東京からついてきた
バツイチの彼氏・健一(遠藤雅 )の物語も関わってくる。
この男の物語が、映画を重層的にし、
オモシロさを深めているんだ」

----どういうところが?
「健一は、佐和子の帰郷の話を聞き、
よし、自分もこれからはエコライフだと、
あっさりと会社を辞め、子供を連れて一緒に彼女の田舎についてくる。
ところが、田舎の生活はそんなに楽なものではない。
トイレは汲み取り式便所。
毎朝、食物などを植えている畑に糞尿を巻く佐和子の姿に尻込み。
挙句の果ては、佐和子の幼なじみと浮気し、東京へ舞い戻ってしまう」

----あらら。
「しかも、そのことをを知ったおばちゃんたちは一斉に、
『また、男に振られたんだよ』『これじゃ会社もダメだ』…。
佐和子にとってはまさに四面楚歌。
ところが彼女は決してめげない。
適当に生きてきたOL時代とは打って変わって、
開き直って叫びきる。
『私なんて、所詮中の下ですから』
いやあ、カッコいいのなんのって。
その姿勢は、あの『フラガール』に繋がってゆく」

----そういえば、あの映画でも
男よりも女たちが頑張っていたっけ。
「そういうこと。
『フラガール』でも『川の底からこんにちは』でも、
女たちは
『これは自分が本当にやりたいことじゃない』とか、
『ここは自分が本来いるはずの場所じゃない』とか、
ぐちぐち言う前に、まずは行動を起こす。
だって、生きて行かなくてはならないんだから」

----ふうむ。でも、聞いていると、
物語ばかり語っているような…。
「あらら。
でも、実際にこの脚本はよくできている。
田舎に戻った女性の、どん底からの浮上。
その前に現れる障壁を“笑い”という形で見せることで、
映画としての奥行き、ふくよかさを出しているんだ」

----笑いも多いんだ…。
「うん。
ヒロインを取り巻く従業員のおばちゃんたちが、とにかく強烈。
佐和子に対して、ほとんどいじめにも近い態度を取るんだけど、
その個性によって、それは笑いへ転化していくんだ。
笑いと言えば、映画の中で歌われる
『木村水産新社歌』は絶品。
笑いころげながらも、思わず涙がにじんでくる。
そして、ラスト。
ヒロインが叫ぶ、対となるふたつの単語。
それが何かは、ここでは明かせないけど、
満島ひかりの表情と共に
ぼくは一生忘れることができないな」



         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「この社歌とやら、フォーンも歌いたいのニャ」身を乗り出す

岩松了がまたオモシロい度


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