ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ハゲタカ』

2009-05-11 21:41:31 | 新作映画
-----ハゲタカという言葉、イメージがよくないニャあ。
一時期、ハゲタカ・ファンドとかいうのもなかった。
「うん。これはまさしくそれ。
現代社会の根底をなす経済構造を描いている。
ちょっと前にNHKでミニ・シリーズとして放映され、
世界でも権威のある国際番組コンクール『イタリア賞』を始め、
国内外で数々の賞を受賞したらしい」

----へぇ~っ。そうニャんだ。
でも経済の話って、ニャんだか難しそうな気がするニャあ。
それに監督がテレビ畑の人だと、あまり期待できそうにないし。
「観るまではぼくもそう思っていたんだけど、
これが実にオモシロい。
確かに経済に興味がないとついていけない部分もあるけど、
まあ、この映画は
敵対的買収であるTOB(株等の公開買い付け)と、
それを仕掛けられた対象会社を、買収社に対抗して友好的に買収または合併するホワイトナイト
このふたつを知っていれば、後はいいんじゃないかな。
映画の流れに身を任せるだけで、自然と分かってくる。
この映画版では、中国政府が『日本を買い叩け!』と、
劉一華(玉山鉄二)に指令を出すところから物語はスタート。
やがて“ハゲタカVS赤いハゲタカ”の壮絶な買収戦争が始まる。
このハゲタカ=天才ファンドマネージャー・鷲津政彦を演じるのが大森南朗
どうやら、彼は日本のマーケットに絶望して海外生活を送っているという設定。
このあたりはテレビを観ていないぼくでも分かるように作ってあるのが嬉しい。
その鷲津のもとに、
中国系巨大ファンドに狙われたアカマ自動車を救ってほしいと訪れたのが、
彼のかつての盟友・芝野(柴田恭兵)。
この柴田恭兵がなかなか泣かせる役で、
『こんな時代だからこそ、夢や希望を語るリーダーが必要』と、
アカマの社長・古谷(遠藤憲一)に訴える。
芝野は、子供のころからアカマの車に憧れていたんだね。
ところが古谷社長は
『憧れや夢。そんなもので飯が食えるほど生やさしい時代じゃない』と言い放つ」

----へぇ~っ。シビアな話だニャあ。
モデルがありそうだね。
「おそらく。
赤いGTがポイントになるしね。
この映画、これに限らず、印象的なセリフがポンポンと飛び出してくる。
いま社会問題化している派遣労働者についても映画は言及。
この会社では彼ら派遣工員を担当しているのは人事部じゃなく調達部。
劉に巧みに言い寄られ、利用される派遣工員・守山に高良健吾
『自分たちは誰かになってはいけないんです』となかば斜に構えていた彼が
劉の言葉によって変貌を遂げる。
『誰かになるんだ!』とアジテーションするさまは、観ていてほんとうに辛い。
社長の守山に対する目線、これまた厳しい。
『信念を持っているヤツは正社員にすると必ず面倒なことになる』」

----その守山。つくづくイヤな男だね。
主人公の鷲津は彼のために一肌脱ぐんでしょ。
ニャんだかノレないニャあ。
「さあ。どうかな。
映画は、劉の攻勢の前に、
さすがの鷲津も後手後手に回る。
でも、もちろんこれで終わるはずはない。
そこに現代社会に大きな影を落としているリーマン・ショックを取り入れているんだから、
この映画の作りは実にうまい。
企画の最初の時点では、まだリーマン・ショックも世界同時不況も起きてはいず、
急遽、現実の経済状況の激変にあわせて脚本も変えていったようだ。
そうそう。鷲津の次の言葉も響いたね。
『強くならなきゃ人を殺してしまう。
それが資本主義だ』」

----うわあ。そこまで言う。。
「うん。この映画は小泉改革もはっきりと批判している。
『既得権者はいつだって弱者を食い物にする』とね。
映画は、この経済だけでなく、
もっと根底のところで、
“人間である限り、夢を持つのはごく当たり前のことであるし、
本来ならば、それを心に持ち続けてほしい……”と
言っているようにも聞こえる。
途中、テレビ『太陽にほえろ』を思わせる、
ちょっとやりすぎのシーンもあるけど、
それでもラストは泣けたね。
まさかこの映画で泣けるとは、ぼく自身予想外だったね」




フォーンの一言「松田龍平、栗山千明も含め、役者がいいらしいのニャ」身を乗り出す

※なかでも玉山鉄二と高良健吾はいい。高良は今年の新人賞候補だ度


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