雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

ラ・パティスリー

2012-02-22 20:35:33 | 
上田 早夕里
角川春樹事務所
発売日:2005-11

上田早夕里著"ラ・パティスリー"を読みました。
お菓子を作る職人の話しです。
夏織は専門学校を出てフランス菓子店ロワゾ・ドールで
働き始めたばかりです。
パティシエをめざしていますが今は売り子で併設の喫茶部の
ウェートレス、掃除や準備に後片付けに朝5時半から夜
10時ごろまで働いています。
パティシエだった前オーナの夫を亡くした現女性オーナーは
夫の味を守っていこうとする保守的な人です。
ある朝夏織が出勤してみると見知らぬ男性が作業を
していました。
彼はロワゾ・ドールを自分の店だと思い込んでいます。
お菓子作りの腕は一流です。
男は市川恭也と名乗りました。
すっかり記憶を失くしています。
頭に怪我の痕があります。
オーナーは家を出て行って8年になる息子の知り合い
ではないかと疑っています。オーナーも市川です。
恭也は店でやとってもらい働き始めます。
恭也は昔食べたケーキを再現して欲しいという依頼を
受け何種類も作り見事合致するものを作ります。
出店しているデパートからケーキを一新して人を
ひき付けるものにして欲しいという要望に答えて
新しいデザインを提供します。

夏織は朝の準備を恭也といっしょにしたり彼の
作業を見たりして惹かれていきます。
恭也は仕事熱心ですが、人を拒絶しているような感じの
人です。
デパートに自分のデザインのケーキを置くことに
よって知っている人が現れるのではないかという
恭也の目論みは当たって訪ねてきた人がいます。
美濃田というその人は昔ロワゾ・ドールで働いて
いた人でした。
恭也がロワゾ・ドールへやってきたのは偶然では
ありませんでした。
美濃田が働いていた当時恭也を店に連れてきたことが
あったのです。
記憶を失った原因もわかりました。

恭也は店を出て行くことにしました。
夏織は恭也に対する思いを打ち明けます。
恭也は受け入れませんが出発するまで二人でお菓子屋
さんの食べ歩きをします。
やがて恭也は出て行きました。
夏織は厨房で仕事ができるようになりました。

お菓子の作り方の説明や道具の説明などが挿入
されていますが、お菓子に興味がないものにとって
へぇで終わってしまいます。
ケーキ、嫌いではありませんがさりとて夢中になる
ものでもありません。
お土産に持って行っていっしょに食べるということは
ありますが、自分が食べたいから買うということは
ここしばらくありません。
デザインが斬新でも味は想像できる範囲です。
私には興味がない世界ですがお菓子に人生をかける
人はたくさんいます。
知らない世界が垣間見えました。

恭也のちょっとかたくな性格はいつか溶けるでしょうか。
夏織と恭也はたぶん離れていくでしょう。
何年か、何十年か先に再会して、やあとうちとけて
お菓子のことを熱心に語り合える二人になるでしょうか。

それにしてもいくら修行中だからと朝5時半から夜
10時まで働かせてそれが当たり前みたいな顔
しているのはどこかおかしいと思います。
正常な労働時間以上働かせるのは間違いです。
一人前になるために必要な努力とは別物です。