北森鴻著"メイン・ディッシュ"を読みました。
北森さんには冬狐堂シリーズ、 香菜里屋シリーズ、
蓮丈那智シリーズ、佐月恭壱シリーズといろいろな
人たちが活躍するシリーズがあります。
でもこのメイン・ディッシュはどれとも趣きが違います。
古美術、絵画、民俗学、絵画修復等の難しい話がない
ので入りやすいです。
北森さんを知ったのはここ一、二年前です。
それなのに知った時にはすでにお亡くなりになっていて
もう新しい本が読めないのはとても残念です。
題名の通り料理の話しが良く出てきます。
三津池修、ミケと呼ばれています。
劇団紅神楽の代表で女優の山岸亜佐はあねごと呼ばれて
いたのが短くなってねこ先輩と呼ばれています。
ミケは冬の日にねこに拾われ同居しています。
劇団員がねこの部屋に集まる時はミケが料理の腕を
ふるい皆を堪能させてくれます。
連作短編集です。
劇団員の話が主ですが間に別の話しが混じります。
最初のうちはそれぞれぜんぜん別の短編なんだなと
読んでいました。
だんだん関係のある話しなのがわかってきます。
もうひとつの話しは仲が良かった大学生たちの話です。
男四人に女一人の間に起こった出来事です。
一人の男が建物から飛び降り自殺をしています。
その何年か後には女性も病死しています。
何か彼らの間に起こったことを匂わせます。
劇団の仲間はわきあいあいとしてます。
座付き作家は小杉隆一です。
劇団員たちはどんどんテレビの世界へ引き抜かれ
ていってしまいついに劇団員がいなくなってしまいます。
ねこが昔同棲していた男の名前を聞いて、ミケは
黙って消えてしまいました。
どのように二つの話しが繋がってミケはどういう人
だっかのか、また戻ってくるのだろうかと思わせ
つつ話しは進みます。
劇団員たちのやり取りは楽しいしミケは料理が
じょうずでつぎはどんなものを作るのだろうか
楽しみです。
ねことミケは相性が良さそうだから必ず帰ってくる
だろうなとは感じながら読み進みます。
ミケの秘密はたいしたものではありません。
だけども人生ずいぶん損してないかと思います。
とはいっても回り道した経験が人生を豊かにしてくれる
ことはおおいにありますから、損だとはいえない
のですけどね。
劇団員の話題の部分はストレートですが、間に挟まれた
話しはかなりひねりがきいています。
本当の話なのか作り話なのか誰が語っているのか、
ごまかされてしまいます。
楽しい本でした。