雑記帳

日常の出来事や、読んだ本のあらすじや感想など書いています。

まぐだら屋のマリア

2012-02-21 19:12:29 | 
原田 マハ
幻冬舎
発売日:2011-07-26

原田マハ著"まぐだら屋のマリア"を読みました。
ありえないでしょうという設定ではありますがとても
よかったです。

紫紋は料理人になる夢がありました。
一流料亭で下働きを続けてきました。
紫紋の数年後に入ってきて紫紋を慕ってくれた悠太の
自殺を止められませんでした。
悠太の死に責任を感じ、自分も死のうとして海沿いの
村にたどり着きました。
崖っぷちに建っている小屋はまぐだら屋という定食屋でした。
お金がないのに食事をしてしまいました。
食堂をやっているのはマリアです。
紫紋は店を手伝うことになります。
店の女将は病身の老女です。
マリアをひどく憎んでいます。
マリアを悪魔と呼びます。
マリアは朝晩食事を持っていき女将を大切にしています。
毎朝魚を届けてくれる近所の克夫や食べにきてくれる
精錬所の男たちと馴染んでいきます。

ある朝行き倒れになった男が店に運び込まれていました。
丸弧という男は紫紋のアパートに居候することになりました。
何もしないでじっとアパートにいます。
何ヶ月の後打ち明けた話は母親を殺したというのです。
いじめから閉じこもりになって何年にもなっていました。
面倒をみてくれている母を疎ましく思っていました。
インターネットで殺してやると持ちかけられ冗談で
話にのってしまいました。
住所も氏名もわからないだろうと思っていたのにある日
帰ってきた母はぐったり倒れていました。
殺したと思って家を飛び出してきました。

丸弧は女将の元へ食事を届けにいくようになりました。
女将が丸弧にお母さんは死んでないから帰れといいます。
丸弧は家を出たあと救急車を呼んだといいます。
それを聞いて紫紋は丸弧の携帯のスイッチを入れます。
お母さんからのメールがいくつも届いています。

紫紋の勤めていた料亭は一流と言われていながら
手がつけられず戻ってきた料理は使いまわしをするわ、
通信販売の食材は期限切れをごまかしたり、産地を
偽ったりとなさけないことをしていました。
内部告発した一人が悠太です。
悠太は自殺する前に何度も電話をしてきたのに重大な
話だと思わず電話に出なくて悠太を死なせてしまいました。

マリアの過去も壮絶です。
高校生の時母親の付き合っている男のDVにあい
話を聞いてくれた高校教師と恋に落ちました。
教師の妻にばれ、妻は娘を道連れに自殺しました。
その妻の母親がまぐだら屋の女将です。
マリアを憎んで当然です。

やがて女将は亡くなります。
家に帰った丸弧は体が利かなくなった母を助け
働いています。
紫紋は母の元へ帰ることにしました。

憎んでいるといいながらも店をまかせている女将、
大きな度量の人ですね。
娘と孫が死ぬ原因となった人をいったい人は側に
置けるものでしょうか。
この部分は有り得ないと思います。

心に悲しみを抱えた人たちがこの地にやってきて
癒され帰っていきます。
まぐだら屋はずっと続くことでしょう。
丸弧が母を殺したという話しはなんて重いものを
背負ったのだろうと暗澹とした気分になりました。
生きていたというところでは、読んでいるこちら
までほぉーとしました。
泣かせてやろうというところ見え見えなのに
読んでいてうるうるしてしまいました。