山本甲士著"あたり"を読みました。
釣りの話しの連作短編集です。
「奇跡を信じたければ釣りをするがいい。」という
いいつたえが残っている川で釣りをする話です。
それぞれの話しには基本的につながりはありません。
でもこちらの話があちらの話とちょっとだけ関連して
たりします。
同じ川の話しらしいとだんだんわかってきます。
いろんな魚が取れます。
漁業権はなくて誰でも釣っていい川です。
きれいな川で取れた魚は食べられます。
知らない者どうしが釣りで仲良くなります。
釣った魚を共に料理をして楽しそうに食べる場面が
出てきます。こういう仲間いいですね。
"おいかわ"
失業中でいらいらして喧嘩をしてしまう北畑新吾は
子供のころを思い出して川に行きます。
釣りをしていた人に教えてもらって釣りを始めます。
いろんな人と出会い、そのうちの一人の工場で働くことに
なります。穏やかな心になって今度は人に釣りを教える
側にまわります。
"らいぎょ"
やはり失業中の鵜川潤平はらいぎょ釣りをしています。
アパートのとなりの部屋の男の子にらいぎょ釣りを
教えてやります。
男の子はお母さんと二人暮らしです。
お母さんは夜働いていています。
男の子が幸せではないと思っていましたが、男の子に
お母さんの面倒は見られると言われて見方が変ります。
"うなぎ"
出張で故郷にやって来た石庭政志は心にくったくが
あります。
上司に頼まれ嘘をいうはめになったのです。
子供の時にうなぎ釣りを教えてくれた人がいます。
その人は暴力団員で車で人を撥ねて自分も死んだと
新聞に載りました。
死んだはずのその人に川で出会います。
実はこの人が被害者で写真が間違って載ったのです。
上司から悪かった、本当のことを公表すると電話が
あります。
"あゆ"
白谷俊也は父親が社長の会社に入社します。
希望の部署に配属されました。その部署の人が一人
辞める事になったと聞きます。
自分が希望したばかりに人を犠牲にしたと、その人を
訪ねていきます。
あゆ釣りをしているのに出会います。
どうして来たのかうちあけずにあゆ釣りを教えて
もらい、いっしょに釣りをするようになります。
実は彼は小説家を目指しており集中するために
仕事を辞めたのでした。
"たなご"
森西篤史は泥棒に出会います。
似た格好をした男に出会い警察に似ていると連絡しました。
しかしその男は犯人ではありませんでした。
その男に謝りにいくとミヤコタナゴを釣っていると
いいます。
いろいろ話しをしているうち彼とは異母兄弟だと
気づきます。
"まぶな"
車からバッグを盗んだら四千万円もの大金が入っていました。
郷野基一は自分を孫と間違えた老人のアパートについていきます。
老人の家で何日か過ごします。
バッグのお金は裏金で警察には届けられていません。
お金を探していた持ち主に出会い返しました。
川へ行くと前の話に関係ある人たちの亡霊があらわれては
生きている人に伝えてくれと伝言を頼まれます。
釣りの楽しさが伝わってきます。
一人から周りの人々に伝わって釣り仲間が増えていきます。
釣りができる川がある環境は守らなくてはいけませんね。
私の故郷も子供のころは魚がいて、蜆がとれて、どじょうも
いるところでした。
ところが数年のうちに何もかもいなくなってしまいました。
魚が住める川がある生活は豊かです。
奇跡が起きる話しですから辛くなったり嫌な思いをする
話しはありませんからゆったりと読めます。