私は、歴史小説を書いてきた。
もともと歴史が好きなのである。両親を愛するように、歴史を愛している。
歴史とは何でしょう、と聞かれるとき、
「それは、大きな世界です。かつて存在した何億という人生がそこにつめこまれている世界なのです」
と、答えることにしている。
私には、幸い、この世にたくさんのすばらしい友人がいる。
歴史の中にもいる。そこには、この世では求めがたいほどにすばらしい人たちがいて、私の日常を、はげましたり、なぐさめたりしてくれているのである。
(司馬遼太郎 『十六の話』~「21世紀に生きる君たちへ」より)
※写真:夜明けの京都