風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『愛という名のもとに』 1

2006-02-13 21:23:53 | テレビ

「...俺...」
「なに?」
「卒業して...社会に出るのが...怖かった...」
「...」
「けど、いまは、社会から出るのが...怖い...」
「...」
「きっと、いつも、俺は...なにかに怯えて生きてきたんだ」

~野島伸司『愛という名のもとに』(角川文庫)より

大学生活も終盤の春休み、私は友人とアメリカを旅していました。
ある夜、寝る前の話題にあがったのが上の台詞です。

有名なテレビドラマなのでご存知の方も多いと思います。
ご存知ない方のために簡単に説明しますと、この台詞の彼(チョロ)は大学の仲間達の中でも落ち零れで、大学卒業後は証券会社に就職しますが、そこで上司から執拗な苛めを受けます。けれど彼は会社を辞めず、かつての仲間達へも心の奥の苦痛をさらけ出せないまま、遂には自らの命を捨ててしまいます。

当時私達は社会に出るのが嫌で嫌でたまりませんでした。大学の4年間は夢のように自由な時間を親からも社会からも公然と許されていましたから、これから定年まで卒業のない社会人生活を送らねばならないのかと思うと、それはもう苦痛でした。まあ社会人となってしまった今では、なぜあそこまで苦痛に感じたのかが不思議なくらいですが、その頃は超超超真剣だったのです。そんな私達は「社会に出るのが怖い」気持ちは身を持って感じることができましたが、「社会から出るのが怖い」というのはどういう感じなんだろうね、、、とぼんやりとした想像をめぐらすことしかできませんでした。

あれから8年。
私はすぐに深刻に悩むくせに、妙なところで「人生なるようになるさ」というところがあり、正直まだ「社会から出るのが怖い」という気持ちをリアルに感じたことはありません。まぁ土壇場まで追い詰められないと焦らないのが私なので、これから実感することになるのかもしれません。
そんな私ですが、嫌なことがあって「この会社、辞めちゃいたいなぁー」と思うとき、なぜか必ずこの言葉が頭に浮かぶんです。そして、なんとなく思いとどまってしまうのです。だからどうというわけでもないのですが、私の心の片隅にいつもある印象深い言葉の一つです。

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