1967年のアメリカで実際にあった出来事を現代のドイツに舞台を変更して映画化。実験の内容的には「es」という映画に似ていると思ったが、「es」の基になった実験は1971年のものだから、実際にはこちらの実験が先ということになる。ちなみにこの二つとよく似たアイヒマン実験は1963年に行なわれている。
ドイツのとある高校の体験授業で「独裁」を学ぶことになる。担当教官はロックなTシャツを着て、車でロックをガンガンかけながら通勤するライナーベンガーユルゲンフォーゲル。普段から生徒にはファーストネームで呼ばれるような水球部の顧問のオープンな体育教師だ。「独裁」と言えば、「ナチス」。ドイツの教育の中で生徒たちはナチスがいかに間違ったことをしてきたかを学び、はっきり言ってその話題にはうんざり。もうこの現代であんなこと起こりえるわけがない。そう言う生徒たちにライナーはとある実験を持ちかける。「独裁」になくてはならない要素は何だ?指導者。そう。このクラスの指導者は誰にする?多数決でほとんどの生徒がライナーを選ぶ。ならば、今日からこのクラスでは俺のことはベンガー様と呼べ。発言は立って簡潔に。俺の許可なく発言してはいけない。このクラスは全員仲間だ。団結のためには何が必要だ?制服を着用しよう。全員白いシャツにジーンズ。団体の名前を決めよう。ロゴを決めよう。敬礼のポーズを決めよう。
どんどん生徒たちからアイデアが出てくる。新聞部の子は初日で違和感を訴えこの体験クラスから抜けた。水球部のマルコマックスリーメイトと付き合っているカロジェニファーウルリッヒは全員が制服を着てくる日からおかしな方向に行っていることに気付き抜けることに決めた。当然マルコとはうまくいかなくなる。
団体の名前は「THE WAVE」(のドイツ語版)ロゴを考え町中にそのロゴをスプレーしてまわる生徒たち。いままで特に仲良くなかった連中同士も「THE WAVE」の仲間というだけで団結し始める。そして、「THE WAVE」以外の連中を排除しようとも。
このクラスの中でもっとも「THE WAVE」に心酔するのが、いじめられっ子のティムフレデリックラウ。彼はいままで自分の居場所がなかった。誰も彼のことを気に留めてくれたこともなかった。でも「THE WAVE」は違う。仲間が僕を受け入れ、助けてくれる。ベンガー様は偉大だ。「THE WAVE」は偉大だ。このティムを見ていると、独裁主義というものの怖さを顕著に見ることができる。良くない言い方ではあるが、ティムのような底辺にいる人間にとって「THE WAVE」のような団体に属することで、そこにいる他のメンバーと自分が同じ地位まで引き上げられることになる。学校という組織の中で力を持つ運動部の連中や不良の連中の仲間に自分も入ることができるような錯覚に陥り、恍惚感を覚える。これこそが独裁主義の怖さ。
そして、ティムのような底辺にいる子だけではなく、どこにでもいる普通の子たちが、普段から優秀な子たちが、みんな「自分たちだけは特別だ」という意識に陶酔する。この組織に属していて実験そのものに疑問を抱いたのは、ごくわずかの人数だった。
恐ろしいのはこれが、月曜から土曜までの「た っ た 6 日 間 の 出 来 事」であり、生徒たちは「い と も 簡 単 に」“ベルガー様”に洗脳されたということ。普段生活しているとナチスなんて狂気の沙汰だと思っている善良な人々が、(もちろんワタクシも含めて)簡単に洗脳されてしまう。人間とは、そういうものなのだ。だからこそ、それを分かった上で人間というものを扱わなければならないし、それを分かった上で行動しなければいけない。自分はそうじゃない、とか、もっと確固たる良心を持っているとかそういう過信が一番危険だと思う。
この物語のラストに起こったことは、容易に想像はついたが、実話が基になっているということで、本当にこのラストに起こったことが実際にあったのだろうか?(今の時点でネットで調べても出てこないのだけど、これは原作を読むしかないか)もし、そうだとしたらこの実験に参加した生徒たち全員のトラウマが心配だ。ベルガー様がタネ明かしをしたとき、ハッとすぐに我に帰ることができた生徒が果たして何割くらいいたのだろう。彼らの後日談を知りたい。
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人間って簡単に洗脳される生き物なんでしょうね。自分は大丈夫っていう過信は怖いですね。
ワタクシも映画を見てから原作を読んでみました。映画は脚色が多いですね。でも、やはりうまく作ってあるなぁと感じました。
で、実際にラストで起こった事はなかったようです。多くの部分が映画てして脚色したものです。