“インディアン”と聞くとどうしても「ネイティヴアメリカン」か「インディアンカレー」を思い浮かべてしまうと思うのだけど、ここでの“インディアン”というのはバイクの名称らしい。
ニュージーランドの片田舎に住むバートマンローアンソニーホプキンスは、年金暮らしで質素な生活をしているが、アメリカのユタ州ボンヌヴィルの塩湖で行われるスピード競争に出場することを夢見て日々インディアンの改造につとめている。
そんな彼は早朝からバイクのエンジン音を轟かせたり、庭の雑草を手入れしなかったり、庭の木に放尿したりして、隣の人から苦情を言われていたが、そんなものはどこ吹く風。つねにマイペースに生活している。隣の夫婦は文句は言うものの、バートの人の好さには理解を示しており、そこの息子トムアーロンマーフィもバートになついていた。
ニュージーランドからアメリカに行くお金がないバートだったが、周囲の人に励まされ、自分でも最後のチャンスと家を抵当に入れて銀行からお金を借りていざアメリカへ旅立った。
ニュージーランドからアメリカへ、アメリカの西海岸からユタまでの道のりが、ロードムービー調に描かれるのだが、行く先々で問題が生じたりするのだけど、それもバートの人柄で周囲に助けてくれる人が次々と現れ解決されていく。その過程で「悪い人」というのはちっとも現れず、都合よく問題が解決されていくのだけど、バートの素直でチャーミングでオープンな性格を考えると、それもまったく不自然に感じない。アンソニーホプキンスという人は、ものすごく複雑な役柄を演じる一方で、バートのようなシンプルな田舎者を誰が見ても魅力的に演じられるという素晴らしい才能を持っている。外見は対して変えていないのに、これがあのハンニバルレクター博士だとは想像がつかないくらいだ。
やっとボンヌヴィルに到着して、スピード競争に出場だ!と思っていたら、出場登録は締め切られていていまから参加することはできないと言われてしまう。これに関してはほんとに「ルールはルール」なので仕方ないと思ったんだけど、これさえもバートは周囲の力を借りて克服してしまう。それどころか、参加者たちがバートのためにカンパまでしてくれちゃうんだからすごいわな。
こんな心臓の悪い老いぼれじじいがこんなオンボロバイクで出場したいなんて、まぁ長年の夢だって言うし、せっかくニュージーランドからはるばるやってきたって言うし、ともかく一回走らしてやれば納得するだろう、くらいに思っていた人たちは、彼が新記録を更新したなんてほんとに度胆を抜かれただろうな。この映画の観客も含めて、か。
ワタクシはバートが新記録を更新して、ゴールで死んでしまうのか!?って思ってドキドキしながら見ていたら、記録は更新するわ、無事にニュージーランドに帰るわでめでたし、めでたし。って思ったら、これで終わりでもなかった。最後のテロップで「彼はこの後9回ボンヌヴィルでの大会に出場し、記録を更新し続けた。流線型バイクの部門で彼の記録を破った者はいない」って出たもんだから、最後にまたまた驚かされた。実話の映画化ではよく最後のテロップにびっくりさせられることがあるんだよなぁ。あんなじーさんが記録を作っただけでもすごいと思ったのに、それから9回も大会に出てしかも記録をまだ保持しているなんて本当にすごい。いやーすごいパワーのじーさんだった。
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ティナ役のクリスウィリアムズのことを記事に書こうと思っていたのにすっかり抜けてしまいました。
ワタクシも出番は少ないですが彼のニューハーフっぷりがとても素敵だと思いました。ティナに対するバートの反応もとても素敵でしたし。
クリスウィリアムズはアメリカのTVドラマなどにはちょこちょこと出演しているようですね。
ワタクシの映画評をお褒め頂いてめちゃくちゃ光栄です。恐縮いたします。本当にありがとうございます。
あの(大事な)インディアンを、キルトで包んで荷造りというところで、もう参りました。 泪無しには最後まで観れません。 すみません、じじいに弱いんです。
それはそれとして、ティナ役のクリス・ウィリアムズがわたしとしては見っけものだと思うのですが、(まだ)あまり有名な俳優さんではないみたいですね。 どうしてかな。
映画評がさらりと平明で読み易く、しかもFairなのでいつも楽しく読ませていただいてます。 同感する部分も多いので、その評価を頼りにしているというか、観ない映画も何となく観たような気分になったり。
いつもありがとうございます。