シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

パパが遺した物語

2015-10-07 | シネマ は行

1989年ニューヨーク。交通事故で妻を亡くし自分自身も脳に障害を負った小説家ジェイクデイヴィスラッセルクロウはシングルファーザーとして懸命に娘ケイティカイリーロジャースを育てていた。

25年後ケイティアマンダサイフリッドは大学で心理学を学ぶ優秀な学生である一方、自己破壊的な側面を持ち行きずりの男性と一夜限りの関係を次々と続けていた。

あの可愛らしかったケイティに一体何があったのか…

1989年と25年後の様子がほとんど交互に描かれます。脳に障害を負いながらも小説を書き、愛する娘との時間も大切にしようとしているジェイクの姿が胸にぐっときます。しかし、障害のせいで入院していた7か月の間ケイティを預かってくれていた妻の姉エリザベスダイアンクルーガーとその夫ブルースグリーンウッドにケイティを養女にしたいと言われ怒りと動揺を隠せません。しかも、エリザベスたちはジェイクの障害や金銭的なことを理由に裁判まで起こし、ジェイクからケイティを取り上げようとします。

25年後のケイティ。次々と好きでもない男性と関係を持ってしまう自分のことを、このままで良いと思ってはおらずカウンセラーに相談もしているものの、やはりやめられない。カウンセラーにはこのままでは本当に好きな人と出会ったときに後悔することになると言われ、それも当然だと分かってはいる。そんなある日、父ジェイクの小説のファンだと言うキャメロンアーロンポールという男性に出会い恋に落ちる。

このケイティの行動を見て、ただの尻軽女じゃないか、と思う人は多分この物語には共感できないと思います。ワタクシはアマンダサイフリッドが好きでひいき目に見ているせいもあるのかもしれませんが、子供時代に適切な愛情を得ることができなかった女性でケイティのような状態に陥ってしまう人がいるということを理解できるので共感できました。

ケイティを懸命に育てるジェイクの物語にも感動できるし、25年後のケイティの話にも感動できるんですが、この2点を結ぶ出来事というのが少し弱いかなぁという気はしました。突然母を亡くし、その後また突然父を亡くしてしまったケイティが人を愛することに非常に憶病になっているというのは分かるのですが、もう少し衝撃的な出来事がケイティの身に起こるのかと思ってドキドキしていましたが、そうでもなかったのが映画的には残念でした。もちろん、事故で母親を亡くしたあとに、病気の痙攣のせいで洗面所で頭を打って死んでしまった父親をおそらく朝になってまだ幼いケイティが発見したことを思うと彼女の人生の中では十分衝撃的な出来事だと言えるとは思うのですが。夜中の物音に気付いたケイティが起きずにそのまま寝てしまったことを後悔しているというセリフがあったほうが良かった気がするな。

心理学科のケイティがカウンセラーとして両親を亡くし、言葉を話さなくなってしまった少女ルーシークヮヴェンジェネウォレスとコミュニケーションを取ろうとする姿がジェイクがケイティを育てていた姿と重なって涙が出ました。ケイティ自身もお父さんとの思い出をルーシーと追体験することで癒される部分があったでしょう。ルーシーがケイティのおかげで話ができるようになり、里親の先が見つかってもう会えないとなったとき、ケイティはきちんとルーシーに「愛してるわ。さようなら」と告げます。「また会えるわ」という繕った言葉ではなくケイティは「さようなら」と言います。きちんとさよならをすることの重要性をケイティは知っているのだと思いました。

愛し愛されるという関係に慣れていないケイティは不安から一度は恋人のキャメロンを裏切ってしまいますが、キャメロンはそんなケイティを最後には許してくれます。アーロンポールは「ブレイキングバッド」でヤク中のジェシーという役を演じていてあまりにもハマっていたので、なかなかお金持ちで頭の良いキャメロンというふうに見られなかったのですが、優しい瞳をした役者さんなので、「ブレイキングバッド」を見ていない人にとっては全然違和感はなかったと思います。

ラッセルクロウ、アマンダサイフリッド、アーロンポール、ダイアンクルーガー、ジェーンフォンダ(ジェイクのエージェント)と好きな役者さんばかりが出演していたのでかなりひいき目になっていたかもしれないのですが、ワタクシは途中からかなり泣き通しでした。

しかし、この好きな役者陣の中で、一番目を引いたのがケイティの子ども時代を演じたカイリーロジャースちゃんでした。もうダコタちゃんもアビゲイルちゃんも目じゃない。カイリーちゃんの可愛さは今まで見た子役の中でダントツです。これからの活躍が楽しみです。