シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

ヒッチコック

2013-04-15 | シネマ は行

アルフレッドヒッチコックアンソニーホプキンスが「サイコ」を撮影したときのお話。「サイコ」の厳密なメイキングというわけではなく、「サイコ」撮影時のヒッチコックの裏話と彼の妻アルマヘレンミレンとの夫婦愛の物語である。

ヒッチコック監督については当然知らない人はいないと思うんだけど、ワタクシも一応映画ファンとしては彼の映画はたくさん見てはいるけれど、彼ほどの人となるとものすごく入れ込んでいるファンの方も多いだろうし、ワタクシごときが滅多なことは言えないな~と思いつつ純粋にこの作品を見たレビューを書きたいと思います。

ワタクシのヒッチコックの印象と言うと、怖い映画を撮るわりに本人はとてもチャーミングな人というイメージが子供の時からついている。今回の物語でも彼のチャーミングさがとてもよく表れていてすごく茶目っ気のある作品になっていた。冒頭でいきなり「サイコ」のモデルとなった実際の殺人鬼エドゲインマイケルウィンコットの殺害現場が再現されてそこにヒッチコックが登場するというシーンにニンマリしてしまった。

「サイコ」という作品は当然知っているし、見てもいるけどこの作品の撮影に当たって、ヒッチコックが自分の邸宅を担保にしてまで撮ったものであったというのは知らなかった。原作本を気に入ったからって映画を見る人たちが先に本を読んで結末を知ってしまわないようにとスタッフに原作本を買い占めさせたとかってすごいエピソードですよねー。それほど徹底してまでもこの作品を撮りたかったんですね。「サイコ」公開時の演出もとてもヒッチコックっぽくてなんだか妙に嬉しくなってしまった。

この作品のみならず、ヒッチコックの陰になり日向になりずっと彼を支えてきたのが妻のアルマ。本人自身も才能ある脚本家などであるに関わらず、ほぼヒッチコックの陰で支えてきた女性ということらしい。彼女が別の男性ウィットフィールドダニーヒューストンと共同執筆していると浮気を疑うヒッチコックがなんだか可愛かったんだけど、アルマにしてみれば自分は主演のブロンド女優に目じりを下げながら、妻の浮気には嫉妬するという自分勝手な夫ってことになるんだろうけど。でも、アルマはもちろん(この作品で見る限り)実際に浮気なんかはしてなくて、そういうヒッチコックに怒りながらも「しょうがない人ね」という感じで見守っていたような感じだった。ただただ内助の功なんていうのではなくて彼女自身もとても自主性がありながら、夫を支えていたところが好印象だった。彼女がいなければ「サイコ」のあの有名なシャワーシーンだってあそこまでのものにはならなかったってことだもんね。

主演女優ジェネットリーをスカーレットヨハンソンがセクシーなブロンド美女でありながら、快活で利発そうな女性を演じていて、これまで彼女が演じてきた中でもなんだか一皮むけたような雰囲気だった。28歳、これから脂も乗ってすごく良い女優さんになっていく転機になった作品のような感じだ。

他にもヒッチコックのアシスタント・ペギー役にトニコレット、「サイコ」のジャネットリーの妹役ヴェラマイルズにジェシカビールとワタクシの好きな女優さんのオンパレードでヒッチコックばりにクラッと来てしまった。特にアシスタント役で当時の普通の服装をしていたトニコレットの衣装が非常に素敵なものが多かった。でもやっぱ大御所のヘレンミレンが一番素敵だったな。

ワタクシ程度の者からすればアンソニーホプキンスのヒッチコックのなりきり具合はすごいって思ったけど、熱烈なファンからすれば全然似てないよって言いたい人もいるかもしれませんね。彼の作品は子供の頃テレビで見たものが多いので喋り方なんかはどうしても吹き替え担当の熊倉一雄さんのほうが印象が強いんですよねー。だから実際ホプキンスの喋り方が似ていたかどうかちょっと分かりにくい。まぁ、しかしいまの特殊メイクの技術は本当にすごいですね。見ている最中頭の中からホプキンスの原型は完全に消えていましたもん。

それにしても1本の映画を撮るという話で1本の映画ができてしまうヒッチコックってやっぱり相当偉大な映画監督なんだなと再認識しました。最後に“インスピレーション”が舞い降りてくるシーンも思わずニンマリで、ヒッチコック愛に溢れた作品に非常に満足しました。