予告編でも良さそうだなぁと思ったし、クリストファープラマーが様々な賞にノミネートされているし、ユアンマクレガーもメラニーロランも好きだし公開を楽しみにしていた作品でした。
母メアリーペイジケラーの死後75歳にしてゲイだとカミングアウトした父(プラマー)。その父も晩年のゲイライフを満喫したあとガンで亡くなってしまった。38歳のオリヴァー(マクレガー)はいままで恋に臆病で女性と長く続いたことはなかったが、パーティでアナ(ロラン)に出会い心ときめくのだが…
75歳でカミングアウトした父親とその息子の騒動を描く作品なのかと思ったら映画の冒頭ですでに父親は死んでいた。あとは父親はオリヴァーの思い出の中に登場する。父親がゲイだったということは母親との愛はウソだったのか?それが気になるオリヴァー。子供の頃の寂しげな母親の顔はそのせいだったのか?何度も父と母の思い出を反芻するオリヴァーと現在進行形で進んでいくアナとの関係。
最後までアグレッシブにゲイライフを楽しんだ父親に背中を押される形でアナとの関係に踏み出していくオリヴァーを描いているというのは分かるのだけど、なんせ内容が暗い、というか、オリヴァーがほんとに真面目で受け身的でつまらない。アナタ、ほんとにアナのこと好き?アナもほんとにオリヴァーと一緒にいたいと思ってる?と聞きたくなるような恋人たちの関係にイライラする。なんでも自由にできるはずの2003年の恋人たちとクローゼットに入ったまま女性と結婚しなければならなかった1955年の父親の晩年があまりにも対照的。もう少し明るく恋人たちを描いてくれたら良かったんだけどなぁ。オリヴァーもアナも良い人には違いないけど、いまいち映画の主人公としての魅力に欠ける。
1955年当時のアメリカでは、同性愛は“治せる”と考えられていて、だからこそお母さんはお父さんが同性愛者だと知りながらも「私が治してあげる」と結婚したし、お父さんも「努力する」って思っていたんだよね。それでもやっぱりうまくはいかなくてオリヴァーの思い出に登場するお母さんは常に不幸そう。ユーモアのセンスのあるちょっとエキセントリックな雰囲気は人だったけど、やっぱり満たされてはいなかったんだろうね。そんなお母さんの人生にも何かしらの光を与えてほしかったな。お父さんは晩年を楽しめたから良かったけど。
そして、そんな二人に育てられたオリヴァーもやっぱりどこかで不幸そうな雰囲気を漂わせている。アナも深くは語られないけど家庭に問題があるようだったしね。オリヴァーは最後まで仕事もうまく行っているふうには見えなかったしな。結局一度別れた二人が最後にまた一緒になるけど、「あぁ、これから二人で幸せになるんだな」っていう実感がまったく湧かない珍しいラストシーンだった。最後に「Beginners」という題名がバンと出て二人ともBeginnersだから長い目で見てあげようかという気持ちになったのが少しだけ救いなのかな。
舞台がLAなのにユアンマクレガーとメラニーロランがヨーロッパの人だからなのか、まったくLA感がなく本当にヨーロッパが舞台のようでした。お父さんが残した犬アーサーが留守番ができない以外は賢すぎてビックリしたよ。うちの犬に爪のアカをやってくれ。