シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

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2011-01-21 | シネマ さ行

ゴールデングローブ賞のドラマ部門で作品賞、監督賞、脚本賞、作曲賞を受賞しましたね。

ワタクシはfacebookをしていないし、SNS全般に興味がなくてmixiにも入ったことないんだけど、監督はデヴィットフィンチャーだし、アメリカで公開されたときから話題になっていたので、興味があって見に行ってきました。ただ、これ自体はおそらくかなりのフィクションなんだろうから、事実はこの際無視して映画のことだけを書きます。

映画の冒頭(のちにfacebookの生みの親となる)マークザッカーバーグジェシーアイゼンバーグとその彼女エリカルーニーマーラがパブで話している。マークは異常に早口でエリカもなんとかその早口についていっているけど、どうも会話が噛みあわない。「ん?なんか変な奴」と思っているとエリカも我慢できなくなったようで、「あなたとはもうこれきりよ」と言うがマークはしつこく食い下がる。“これきりにしないで”とお願いしている立場にしてはなんだか上から目線。「なんかムカつくな、コイツ」

映画の主人公の第一印象が「ムカつく」なんて、ほぼありえない。あったとしても、それはイヤな奴がイイ奴になるよっていうストーリーの場合でこっちもそれを分かって見ているパターンのやつなんですが、この作品の場合は違う。マークはとにかく物語の間中ずっとムカつく奴だった。

エリカに振られた腹いせにマークはブログにエリカの悪口を書き連ね、その勢いでハーバード大の名鑑にハックして、ファイスマッシュという女の子の写真を並べどっちかhotかと投票させるサイトをぶち上げる。それはたちまち学生の間で話題になり、なんとハーバード大のサーバーがパンク。

映画が始まってからここまでの勢いがすごい。観客はここまでで一気にこの話に引き込まれてしまう。フェイスマッシュについては下品な発想なんだけど、女子は「げーっ」っていうリアクションで、男子は必死で「右!」「左!」と言い合っているのがなんだか可笑しかった。

実際に訴訟は和解に至っているわけだから、もう終わったこととして考えないといけないんだろうけど、どう考えてもやっぱりマークはfacebookのアイデアをパクってるよね。確かにあの双子キャメロン&タイラーウィンクルボスアーミーハマーがSNSというものを考え出したわけでもなんでもないけど、彼らにその話をもちかけられたから、マークはfacebookを作れたんだよね。それを彼らの依頼を引き受けたふりして、裏でfacebook作っちゃったのはやっぱりマズかったんでない?(ところで、あの双子ってアーミーハマーが一人で演じていたんですよね。本物の双子みたい。やっぱ現代の映像の技術ってすごいですね)

あの双子の場合は、まぁあれだけ成功すればそれに群がる人たちもいるよねーという感じがしないでもないんですが、当初マークに出資を頼まれたエドゥアルドサベリンアンドリューガーフィールドに関しては、かなりかわいそうだったな。マークはエドゥアルドを金ヅルとしか思ってないのか?というふしがあって、エドゥアルドの気持ちなんてまるで考えてないですね。マークのことを本当に友達だと思ってくれていたのはエドゥアルドぐらいなのにね。エドゥアルドはグルーピーとしてついてきたクリスティブレンダソングをちゃんと彼女として付き合っていたし、良い子だったのになぁ。エドゥアルドも甘かったとは言え学生同士であんな裏切り方するなんてひどい。

マークが信奉しているナップスターを開発したショーンパーカーをジャスティンティンバーレイクが演じているんですが、彼ってもう少しハンサムだと思っていたんだけど、なんかヘンテコな顔だった。ショーンパーカーもかなりムカつく男として描かれているんですけど、見ていてすごくムカついたので、ジャスティンもなかなかに演技がうまいってことですかね。

まぁ何と言っても「世界はオタクが回している」んですなぁ。マークのあの早口のしゃべり方には辟易してしまったけど、まったくオタクって万国共通なところがある。その言語が分からなくてもしゃべり方とか仕草とかどうしてあんなに共通しているんでしょうか?それを思うとジェシーアイゼンバーグの演技ってすごいなぁ。

結局、全世界5億人をつないだfacebookの創設者にはただの一人も友達がいないっていう皮肉なお話だったわけですが、実生活でたくさん友達がいて楽しくやってる人なら、誰かとネットでつながろうなんて思わないのかもしれません。ショーンパーカーに言われた通りに名刺に"I'm CEO, Bitch."って書いちゃうところとか、最後にエリカに友達登録を依頼して返事を必死で待ってるとこなんて"How pathetic!"(痛ましいというか、情けないというか…)と思っちゃいましたけど、そういう彼だからこそ作れたのがfacebookだったのかも。

デヴィットフィンチャーがマークをアスペルガーのボーダーという感じで描いたと言っていたらしく、それを聞いてちょっと納得がいきました。彼の友達や訴訟に対する態度はどう考えても少し変だもの。(アスペルガーを“変”と表現するのは差別的に捉えられるかもしれませんが、そういう事情を知らなければやはり周囲は“少し変”と感じるのがアスペルガーの特徴でもあるかと思います)

デヴィットフィンチャーって「セブン」以外は「ファイトクラブ」とか「ゾディアック」とか「ベンジャミンバトン」とかまぁ好きだけど、メチャクチャ良いわけでもないっていう映画が多かったんですが、今回の作品はものすごくテンポがいいし、時間軸をいじってあるのにとてもスマートに進行して、観客をまったく飽きさせず、まさにマークがfacebookに求めていた“クール”な作品で、素晴らしかったです。アカデミー監督賞も取っちゃうかな?

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