シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

日本のいちばん長い日

2010-10-19 | シネマ な行
邦画史に残る大作。ということを知ってはいたが、今回ケーブルテレビで放映があったのをやっと見た。

1945年8月14日の御前会議でポツダム宣言を受け入れることが決定してから翌日15日正午の玉音放送がされるまでの長く重苦しい一日を描く。

1967年白黒の作品であり157分という長丁場の作品でありながら、現代のワタクシたちが見てもまったく飽きない作品となっている。

ポツダム宣言を受け入れようとする内閣とそれに反対し本土決戦を主張する阿南陸軍大臣三船敏郎の緊迫したやり取りがまず伝えられ、実際には当然歴史の事実は変わらないのだけど、ここで陸軍大臣がどう出るのかということをハラハラしながら見つめてしまう。結局、御前会議でポツダム宣言の受け入れが決定したあとも、玉音放送の文言を巡ってまたもや内閣と陸軍大臣は対立。「戦勢日ニ非ニシテ」を「戦局必スシモ好転セス」に書き換えさせたのは、ワタクシ個人が賛成反対にかかわらず“軍人として”という意味においては阿南大臣の最大の功績と言えるものなのかもしれない。

しかし、陸軍大臣が自分が責任を持って軍に説明すると言ったにもかかわらず、一部の将校たちは玉音放送の録音盤を奪回しようと宮内省まで武器を持って押しかけたという宮城事件や厚木基地での反乱を起こす。このころの日本国民が神と崇めていた天皇が決定したことだというのに、それに納得しない兵士たちというのは、一体何なんだろうといつも思う。天皇を守ることが任務の近衛師団までが一緒になって反乱を企てるとは。しかし、彼らには彼らの理論があり、天皇を想う気持ちは逆に一般市民よりずっと大きいものだったのかもしれない。だからこそ、内閣に操られている(と彼らが思っている)天皇を内閣の陰謀から守らなければという気持ちがあったのだろう。あそこで、もし天皇自身が彼らの説得にあたっていたら、事はもっと小さく済んだのでは?と思うのだけど、たとえそれが現代でも日本で天皇にそんな仕事をさせることなんてできないんだろうな。

東宝の35周年記念映画として製作されただけあって、錚々たるメンバーが出演しているが(43年前の作品だけあって残念ながら亡くなった方も多い)とにかく阿南陸軍大臣を演じた三船敏郎の鬼気迫る演技がずば抜けて素晴らしい。実際にその行為どうこうということではないが、最後の割腹自殺のシーンもまさに映画史に残る名シーンだと言えるだろう。宮城事件を起こす畑中少佐を演じる黒沢年男はもうとにかくキンキン声でギャンギャンがなっていてセリフも聞き取れないところが多々あるのだけど、まぁこれは当時の陸軍少佐はこんなふうだったかもしれないなと思う。

ナレーションにもあるようにまさに「長い長い一日」のお話で、見終わったあとどっと疲れてしまった感があったが、それだけ優れた作品であると言えると思う。