シネマ日記

超映画オタクによるオタク的になり過ぎないシネマ日記。基本的にネタバレありですのでご注意ください。

幸せになるためのイタリア語講座

2010-04-27 | シネマ さ行

この作品はデンマークの「ドグマ95」という方式で撮られた作品。映画ファンではない方には「ドグマ95」という言葉はまったく聞いたことがないかもしれませんね。デンマーク出身の映画監督ラースフォントリアー(「ダンサーインザダーク」「ドッグヴィル」の監督ね)らが提唱したもので、代表的な条件としては、

セット撮影をしない。
自然光で撮影する。
効果音や音楽をあとから乗せない。
手持ちカメラを用いる。
回想シーンを用いない。

などがあって、全部で10項目でできている。
厳密にその10項目すべてを満たさなくてもいいみたいなんだけど。

こういう撮り方をしたものなので、ちょっととっつきにくい映像にしあがっている作品が多い。ハリウッド映画ばかりを見ている人にはほとんど苦痛かも。特にデンマークってやっぱ暗いイメージだしね。

そんなちょっと暗めのデンマーク人たちが陽気なイタリア語のクラスを取ることで少しずつ幸せを掴んでいく物語。設定を聞いただけだと、ちょっとワクワクするようなハートフルコメディ?って感じがするんだけど、やっぱりかなり地味めです。

女性と長い間関係を持っていなくて悩んでいるホテルマンのヨーゲンピーターガンツェラー
ヨーゲンの友人ハルフィンラースコーンルドはサッカーをやっていた過去の栄光に縛られて雇われているレストランのお客に偉そうにしてばかりにクビ寸前。
そのレストランで働くジュリアサラインドリオイェンセンはイタリア人で実はヨーゲンに恋している。
パン屋で働くオリンピアアネッテストゥーヴェルベックは、いつも失敗ばかりでうちに帰ると父親に暴言を吐かれてばかり。
美容師のカーレンアンエレオノーアヨーゲンセンは、母親が病気で酒浸りで苦労ばかり。
代理牧師としてこの地域にやってきたアンドレアスアンダースW.ベアテルセンは、妻を亡くしたばかり。

この6人+αの人たちが繰り広げるお話なんだけど、よくあるハリウッド的な群像劇っぽい軽妙さはまったくない。なんか全員色んな方向に不器用でね。つまづきながらもなんとか生きてる感じかな。

上の6人がちょうど男女3:3ということで、だいたい予想がつくかと思いますが、それぞれうまいことカップルになってくれちゃったりするわけです。そのカップルも3者3様でなかなか興味深いです。ジュリアみたいないいオンナがヨーゲンみたいなどんくさそうな男に惚れていたのはかなり意外だったけどねー。でも、ヨーゲンは良い人そうだったし、浮気なイタリア男と結婚するよりジュリアはずっと幸せになれるかも。

あとはオリンピアとカーレンの奇妙なつながりが暴露されたりとか。それでひと悶着あるのかと思ったけど、変な揉め事につながらなくてなんだかほっとしたり。恋愛だけじゃない、人間関係も興味深いところでしたね。

こう言うと語弊があるのかもしれないけど、なんかみんないい大人なのに、すごく可愛らしかったな。等身大的な良さがあったからかも。

ドグマの手法はそんなに嫌いじゃないけど、手持ちカメラがあんまり好きじゃないので、人の顔を映してさらにアップにするっていう2段構えのアップの仕方はあんまり好きじゃなかったけど、あとから効果音とか音楽を乗せないっていうのは結構好きです。