オリオン村(跡地)

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彷徨える帝

2019-07-09 03:11:55 | 読書録

彷徨える帝(上)

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彷徨える帝(下)

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南北朝が統一をされた後、それを後南北朝時代と呼ぶ向きもあるようですが、統一の条件であった大覚寺統と持明院統が入れ替わりで帝位に就くという両統迭立が足利幕府に反古にされたことで反発をする元南朝勢力、そこにくじ引き将軍と揶揄をされた足利義教の強権政治が相まっての混乱が舞台となっています。
その義教が赤松氏に暗殺をされた嘉吉の乱、そしておそらくは元南朝に神器を奪われた禁闕の変あたりをモチーフに、その前後数ヶ月間が描かれています。

あまりこの時代は得手としていないので興味があり、そして導入から引き込まれてかなりな期待をしたのですが、しかし残念なことにそれは長くは続きませんでした。
史実と創作、を上手くミックスをさせるのが腕の見せどころであり、例えば駿河の守護大名である今川範国とその地を訪れていた世阿弥が同日に死没している「史実」をプロローグとして、そこに今川範忠の双子の弟の朝比奈範冬を幕府側の、伊勢国司である北畠氏の一族である北畠宗十郎を元南朝側の主人公に据える「創作」を絡めて、この両者の視点を切り替えて話が進んでいくのはいいのですが、そこに後醍醐天皇の「呪い」と言いますか不可思議な力が徐々に力を増してきたことでおかしくなってしまいました。
黒色尉、白色尉、父尉、この三つの能面に込められた呪術が幕府に対する反乱を引き起こす、大内義弘らの応永の乱もそれが原因だったことから防ぎたい幕府、奪いたい元南朝のせめぎ合いがほぼメインなのですが、範冬も宗十郎も自分が何を求めているのか、迷い、そして苦しみ、そこから導き出される新しい道、そんな流れを予想していたのがあっさりと裏切られて、呪術に留まらずにやれ予知だの三ツ目だの、SFXかよ、な展開にはもう唖然としか言いようがありません。
両者のその後も何ら明るい未来を感じさせない終わり方ですし、彷徨える帝、ではなく彷徨ったのはプロットではないかと、この作者にしては大ハズレな駄作でした。


2019年7月8日 読破 ★★☆☆☆(2点)


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