|
|
学生アリスの第四弾、現在のところでは最新作です。
前作の後書きに長編五部作とありましたのでもう一作あるのでしょうが、この作品が2007年ですのでいつになることやら、といった感じです。
そうは言いながらも前作が1992年で15年間のブランクがありましたので、このままさりげなくフェードアウトな裏切りにはならないでしょう。
まだ文庫化がされていないために手が出ませんが一昨年に短編集が発表をされていますし、パラレルワールドな作家アリスはむしろペースが上がって年に数冊の増産体制に入っていますので、忘れかけたころにさらっと再登場になるのではないかと思います。
そして15年の歳月を感じさせないような、四国山中に消えた有馬麻里亜が戻ってきたかと思えば、今度は江神部長が木曾の山奥に姿を消します。
そこは宇宙人の再来を待つ新興宗教の本拠で、まさか江神部長が、と有栖川有栖らEMCの面々が乗り込んだところから事件が動き出します。
謎の連続殺人事件、密室とアリバイ崩しに読者への挑戦はお約束で、見事なぐらいに期待を裏切りません。
やや宇宙人やUFOのうんちくが長かったかな、という気がしないでもありませんが、あちらこちらの伏線をきれいに拾い上げてくれたことで読後感は爽快です。
油断をしたわけではありませんが前回、前々回に比べればしてやられたのもむしろ清々しく、悩める乙女、麻里亜の心の動きも例によっていいアクセントとなっています。
あまりに線が一本に繋がりすぎたことで唐突な動機にしらける向きがあるかもしれませんが、それも一つの不思議の国のアリスでしょう。
何となく古くさい感じのする王道なミステリーだけに逆に古さを感じさせない、そんな学生アリスはお奨めです。
2014年12月16日 読破 ★★★★☆(4点)