後白河院 |
朝廷から武士に政権が渡る一つのきっかけとなった保元・平治の乱、その中心人物の一人である後白河法皇は源平、もしくは頼朝と義経、あるいは奥州藤原氏をも手玉に取った存在とも言われていますので、その手練手管がメインに描かれているものだと思っていました。
しかし四部構成となっているこの作品は周りにいる人物の視点から描かれており、一人称としての後白河法皇は登場をしません。
それぞれの立場からの主観的ではありながらも全体を俯瞰するような記述は正確に史実を描写しているのかもしれませんが、しかし物語としての権謀詐術な、鵺のような生き様を期待していただけに肩すかしではあり、気がつけば中盤からは流し読みとなってしまいました。
平信範、建春門院に使えた女房、吉田経房、九条兼実が語り部となり、崇徳上皇と後白河天皇との争いと藤原信西、後白河法皇と平氏とのバランサーだった建春門院、源平の争いの中での後白河法皇、そして鎌倉幕府となってからの朝廷の有りよう、を語っていきます。
信範は「兵範記」を、兼実は「玉葉」を遺すなど時代を語るに相応しい人物を配したのが史実感を後押ししており、そこに抵抗感はありません。
ただやはり人間としての後白河法皇の体温が感じられないのが致命的でもあり、平清盛や源義朝らですらナレ死で表舞台から消えていく、第四部に至っては後白河法皇が死去してからのものだったりもしますので何をか況んや、原書を読めない人に対する噛み砕いた歴史書といった感じで面白くありませんでした。
2017年9月7日 読破 ★★☆☆☆(2点)