明智光秀 |
明智光秀と言えば本能寺の変で織田信長を弑逆したことで有名ですが、実はその前半生はよく分かっていません。
一般的には土岐氏の流れと言われてますがそれにも一部に疑義があるようですし、謀反人とされたことで資料が失われてしまったことも理由なのでしょう。
ただその謀反についても原因は諸説紛紛で怨恨説、野望説など百花繚乱状態で、また同じく前半生が不明である天海が光秀のその後の姿であるとの異説もあります。
この作品は民の平和を求めた光秀が多くの犠牲を払いながらも、しかし理想を追い求めてその人生を全うする姿を描いています。
世間に流布されている異説を上手く取り込んで、それなりに無理のない筋立てとなっています。
羽柴秀吉の中国大返しにもいろいろな問題点が指摘をされていますが、千利休を絡めての発想には素晴らしいものがあります。
光秀の理想を利用して自らの野望を果たした秀吉に対して、天海となった光秀が徳川家康の参謀として秀吉を追い詰めていく過程には痛快感すらありました。
ただなまじ常識的な歴史を知りすぎているせいか、あまりに家康が常識人だったり、本多正信や林羅山の逸話を横取りしているところなどが残念と言えば残念です。
それでも歴史の空白を作者の想像力で埋めた技量には拍手を送りたいですし、世の中にはただ史実と言われているものをなぞっているだけのものが少なくはありませんので、史実を大きく踏み外すことなく、しかし全く新しい解釈で戦国史を彩ったこの作品にはかなり楽しませてもらいました。
この作者の他の著書を探してみようかと、そう思えるだけの魅力のある明智光秀です。
2012年4月23日 読破 ★★★★☆(4点)
やはり人間は増長すると隙が出てくるのは、古今東西変わらないようで。
光秀の謀反の原因もそうですが、秀吉の大返しもあまりに手際が良すぎて疑われるところがあるようです。
確か以前の大河ドラマでも、段田安則の滝川一益が竹中直人の羽柴秀吉に迫ったといったシーンがあったような。
歴史ファンの興味をひきつけるネタは永遠です。