双頭の悪魔 |
江神二郎の第三弾、と言いたくなるぐらいに、今回も主人公は江神部長です。
豪雨によって孤立をした二つの村、その両村を結ぶ橋も濁流に飲まれてしまい、EMCのメンバーも江神部長と有馬麻里亜、有栖川有栖と織田に望月の二手に分かれます。
そしてお約束のように起きる殺人事件、王道とも言える密室、アリバイ崩しはここまでのシリーズ最高傑作で、ミステリーの醍醐味を味わわせていただきました。
これがシリーズの特徴なのか種明かしの前に作者から読者への挑戦状が送られますが、今回はそれが三通もあります。
あまりに挑戦的なので前回に続いて本腰を入れて、タブレットを片手に登場人物の行動などをメモるという、ちょっと読書の域を越えるようなスタイルに読み切るまでに相応の時間を要したのですが、その甲斐もあってか殺人のトリック、アリバイの穴はほぼほぼ見破ることができました。
ただ作者も触れていたように想像力を働かせての動機、までは解明に至らず、ちょっと悔しさが残ります。
それでもいつものように手前勝手なご都合主義はほとんどありませんし、ある意味でシンプルさが間延びに繋がってしまうところもありましたが、これはなかなかの傑作です。
あのまま表舞台から去ってしまうのではないか、と心配をしていた麻里亜がむしろ名脇役だったのも嬉しく、そして微妙な乙女心も物語のアクセント、スパイスとなってくれました。
おそらくは長編としては最後になるであろう、次回作も楽しみです。
2014年12月2日 読破 ★★★★★(5点)