ちょいスピでセラピー的なKizukiの日々

色んな世の中の出来事、セラピーなどから気付きを得て、ありのままの自分に還ることを目指して生きてます。

父の思惑

2014-12-25 09:08:58 | 身辺雑事
少し前にチラとこのブログで、両親が店兼住宅として住んでいる場所が再開発地区にかかったために私たちは多少その件でこれからコミュニケーションをとりあう必要ができた、と書きました。
そのこと自体はありがたいことだったかもしれません。
こういうことでもないと、折り入って両親と話をするなんて機会もありませんでしたから。



先日、食事を兼ねて改めて親に再開発組合の意向を伝え(なにせ父は耳が遠くなっているので、組合の方が説明しに来てくださったようですが、あまり理解していなかった様子でしたので。)、そして逆に親の方からはこれからこの件についてどう考えているのか?ということを聞きました。
話して良かった、と思いました。
たぶん、こうだろうな~と思っていたことと彼らの意向とは大幅に違ったからです。



ご存じのように全国どこでも再開発指定地区になれば、そこに住んでいる人たちは早い話が「立ち退かなくては」なりません。
もちろん、手厚い受け皿は用意されています。
だから「立ち退き」なんて言葉も実際には使われていないのですが・・・
手厚い受け皿とは、
1. 新しくできるタワーのなかのマンションと現住居を引き換えることができる。
2. 新しくできるタワーのなかの物販棟のなかで、現住居を店舗と引き換えることができる。
3. まったく再開発にかかっていない別の地区で住居を探してもらい、現住居に見合う価値のところを充当してもらうことができる。
4. 現住居を売り払って現金を手にすることができる。
このなかのどれかを選ぶことができます。
場合によっては現在広い土地と家屋にお住まいの方なら、1.と2.の合わせ技ってこともありえますね。
どの受け皿を採択したとしても、ただ自分たちの勝手で現在の住居を処分するときに比べたら非常にオトクな条件となっています。
うちの両親の実家なんて約築40年のモルタル造ですし、両親は年老いてもういつまで商売もできるかわからないレベルですから、この再開発の話は「渡りに船」と思っているんじゃないかな、と私は思っていたわけです。
だって、仮に現住居を手放す代わりにマンションに移りたい、と申し出たとします。
受け皿1.の場合ですね。
そうしたらウチなんてたかが10坪程度の土地なのに、その土地と築40年の家屋の査定が2000万円ほどにもなるということらしいんですよ。
こりゃおいしい話じゃありませんか。(・・・と私なら思う。)



しかし、父の考えは違いました。
3.に一番魅力を感じているようでした。
つまり、「まったく再開発にかかっていない別の地区で、今と同じような店舗兼住居を補償してもらいたい」ということだったのです。
私はびっくりしました。
この期に及んで、まだ商売続けるつもりなのかよ・・・!と。
だって父は満86歳ですよ。
来年の3月で87歳になります。
それで「これを潮時に・・」と言うのではなく、どこか新天地で商売をやるつもりでいる!
なんというツワモノなんだ・・・
我が父ながらアッパレとしか言いようがない。(ま、ちなみに昨日書きましたが、私自身は90歳まで働いているらしいですが)



「だってそりゃそうだろー。今まで勝手気儘に商売やってこられたんだ。
再開発の話なんか持ちあがらずにほうっといてくれりゃ、これからだってこちとらは勝手気儘にやれたんだ。
年をとったから、週に1回の休みではなく、2回にしようか~とか、今日はどうしてもしんどいから臨時休業なんてことも自分の土地と家だから勝手にできたんだ。
それが再開発のビルのなかに店舗をださせてもらうなんてことになったら、足並みそろえて年間数日しか休めなくなるんじゃないのか?
そんなことにはもう体は堪えられないし、営業時間を何時から何時までって決められて合わせなきゃならないのも苦痛だ。
とにかくこんな話はなかったらなかったに越したことはないんだよ、俺は。
だから、それくらいなら他の土地に行ったほうがましだ。」
・・・とまぁ、こんな具合なんです。



「放っておいてくれたら、俺は何の問題もなかった。」
という言い方には、戦争を経験し、お上の言うことなんか信じられないから、ただひたすら自分だけを頼りにやってきた、という気概も感じないではありません。
でも、今の人たちの「ワンネス」「みんなの合意を得ることが大切」「みなさんと足並みそろえてできるだけ穏便に」ということに慣れた人たちにはこの感覚というのは理解しづらいでしょうね。
そしてむしろ逆に「どうして町全体のためになる再開発に協力しようという気になれないんだろうねぇ。」という批判も生まれることでしょう。
私は父の血を受け継いでいるので、どうしてもできるだけ1人で出来ることなら誰の助けも借りずに1人でやろうとするところがあります。
上手に「みんなで」と手を輪っかのようにつなぎたい、という気持ちもあるのですが、それを上手にやっている人を見ると「他人をうまく利用している」というように見えてしまうこともあります。
だから父の気持ちがよくわかるのです。



別れ際、父が笑いながらこう言いました。
「まぁ、人生長く生きてるといろんなことを経験させてもらえるわ。それを面白がらなくてはいけないな。」
それは素直にそう思います。
父がそうゆとりをもって言ってくれたことが何より救いだったな、と思います。






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