団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

お通し

2018年10月17日 | Weblog

  先日友人と焼き鳥屋へ行った。こぎれいな店だった。1階は調理場とカウンター席で2階がテーブル席。2階に通された。4人掛けの席についた。すかさず店員女性が小鉢に入った“お通し”を4つ各人の前に置いた。私は好奇心が強い。出されたものが何なのか知りたかった。「べっこう漬?」 独り言のように発した問いに妻以外が首を縦に振った。おそらく妻は、それがべっこう漬かどうかより、注文もしてないのに、これにもお金払うの、と思っているふうだった。ふだん外食をしない私は“お通し”と妻の様子を見て最近外国人観光客の増加に伴い、このお通しが物議をかもしていることを思い出した。

  カナダへ10代後半で留学する前、軽井沢に住む多くのアメリカ人キリスト教の宣教師と知り合った。まだ英語をよく理解できなかった。不思議なもので日本や私自身のことが話されていると理解度が急上昇した。ある日宣教師たちが日本の食堂やレストランの“お通し”の話をしていた。聞いていると日本の食べ物屋では、頼みもしないのに変なものを持ってきてテーブルに置いてゆく。日本人の商売は、狡猾だとそれぞれの体験を披露して会話が盛り上がっていた。自分たちは、可哀そうで洗練されていない日本人に神の福音を伝えにやってきているという優越感がプンプン臭っていた。

  カナダに渡った。学校の寮にいるうちは、学校の外の様子は知る由もなかった。だんだんカナダでの生活に慣れ、学校の外へも出かけられるようになった。隣国であるアメリカへも長い休みがあると出かけるようになった。貧乏学生だったので、レストランのような高級なところへは誰かに連れて行ってもらう以外行けなかった。それでも現地の人々の暮らしに触れ、日本との文化の違いを体験できた。マクドナルドで注文する時、現地の人たちの注文の仕方に驚いた。ケチャップはつけないで、タマネギは多めに、マヨネーズは少し、と人それぞれ。帰国して日本にもマクドナルドが進出してきても、アメリカやカナダで見た注文の仕方をする人を見たことがない。

  最近、テレビ特にテレビ東京が外国人の日本滞在を多く番組で紹介している。『YOUは何しに日本へ?』『世界!ニッポン行きたい人応援団』などを観て感心する。外国で実によく日本のことを勉強している。私がカナダへ留学する前、私が住んでいた地方都市で見かけたのはキリスト教の宣教師ぐらいである。幼い頃、アメリカの進駐軍がいて、トラックやジープで通りかかると「ギブ ミー チョコレート」と叫びながら追いかけたことは未だに覚えている。それを知っている私は、番組に出てきて日本へこういう理由で行ってみたい、と訴える人々がいることを信じられない。興味を持って日本の事を知りたいと思うそのことが信じられない。そしてこの事実が日本を理解してもらえる大きな希望に思える。

  “お通し”も日本の文化の一つである。積極的に日本の文化を知りたいと思う人々は、前向きに理解してくれるであろう。しかし時代は変わっても、アメリカの進駐軍やキリスト教宣教師のような感覚で日本を訪れる人もいる。鍵は言葉である。日本人はお任せを粋とする。言葉に出さなくてわかるでしょの傾向が強い。それがわからないなら、うちの店には来ないでくれ、となる。これだけ海外から観光客が押し寄せてくれば、もうそんなことを言っていられない。外国からの観光客の中には、読んでない、聞いてない、見てないを主張する人もいる。もっと多くの日本人が英語や外国語を話せるようになれば良いのだが、現状ではまだまだ時間がかかりそうである。日本政府は外国からの観光客を年間2千万人にまで増やそうとしている。ただ観光客の数を増やしても問題が発生してしまう。誤解されやすい勘違いされやすい文化風習を一つづつ説明するしかない。話して直接説明できないなら、冊子を用意する。お互いの納得が気持ちを和らげるに違いない。

 先日、行きつけの丸亀製麺に英語で外国人客に対応しているパートのおばちゃんがいた。その光景が近未来の日本の姿であってほしい。それにしてもおばちゃんの英語凄すぎ。

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