カテーテルで退院してから猛暑日が続いている。術後の経過が思わしくなく、暑さと下腹部の傷跡まわりの鈍痛が気を重くしている。傷跡のまわりは、紫色の内出血になっている。今回カテーテルの術後、初めて傷跡まわりだけでなく、陰部とくに陰嚢のまわりがひどい内出血で濃い紫色になっている。今までの執刀医は、術後、退院後の予想される症状や出血が止まらない事態が起こったら取るべき対応について説明があったが、今回は、それがない。ただ3カ月後に術後検診の予約日と時間を書類で渡しただけだった。内出血の不気味な濃い紫色は、私をとても不安にしている。
そんなもやもやな気分がすぐれない日が続いているが、入院中の不便さ不快さを思えば家は天国のようだ。14日日曜日から大相撲名古屋場所が始まった。加えて17日にはアメリカ大リーグのオールスターゲームで大好きな大谷翔平選手がスリーランホームランを打ってくれた。嫌な気分要らぬ心配も不愉快千万な猛暑も吹き飛ばしてくれる。地球が丸いお陰で、日本とアメリカの間には時差がある。時差があるお陰で、大リーグ中継を観て、その後、妻が帰宅すると夕食を食べながら、録画した大相撲の取り組みを妻と観る。相変わらず舞の海のつまらない解説の10倍は聞きごたえのある妻の解説を楽しめる。26日からはパリオリンピックが始まる。
今回のカテーテルで造影剤を使っても、膝から下あたりで詰まっている血管をはっきり映し出すことができなかった。詰まっている3本の動脈にカテーテルを通して何らかの施術をすることができなかった。ただカテーテルを入れただけだった。失敗だったと私がガッカリしていた。医師が「運動療法のお陰で、膝から下の血管に多数のバイパスが新たにできていて、血液は順調に供給されている。これからも運動療法を続けてください」と言われた。何の効果もない爺さんの暇つぶしだと思っていた散歩で、右脚に詰まった血管を補助するために多くの新しい血管が生まれている。人間の体は、すごくよく出来ているのだ。ダメならダメで違うことを自然にやりのけてしまう。
退院後、次の日から早朝まだ暑くなる前に、散歩を開始した。まだぎこちない歩き方、そうバイデンアメリカ大統領とよく似た歩き方である。ジョギングをする元気な年寄りや若者に次々に追い抜かれる。気にしない。歩くことで私の右脚の小さな血管が増えて、詰まった動脈を補助してくれている。
21日の日曜日妻と一緒に大谷選手がスタメン出場していたドジャース対レッドソックスの試合を観ていた。突然ベランダに猿が来た。居間のガラス戸側に妻のイスがある。ガラス戸と妻の間は、50センチもない。エアコンを使っているのでガラス戸は、ロックされている。ガラス戸は外側に網戸がある。これほど近くに人間がいても、猿はまったくお構いなしにまず網戸を開けた。私が普段網戸を開けようとしても、渋くてなかなかスムーズに開けられない。猿は、慣れた手つきでいとも簡単に網戸をスライドさせた。大きな声を出しても反応しない。妻が「野生の猿を興奮させると危険だから、そっとしておきなさい」と言った。猿は、妻の言った通りにやがて去って行った。
炎天下、猿たちはエアコンも知らず、私のようにカテーテルとい先端医療も受けることなく生きている。私がいかに恵まれているかと感謝する。できるだけ「暑い」と言わずにこの夏を過ごそうと思う。