団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

黒たまごで7年

2018年10月15日 | Weblog

  友人夫妻と念願だった箱根の大涌谷へ車で行ってきた。火山活動の影響で2015年5月からずっと立ち入り禁止なっていた。2016年7月から規制が一部解除になった。以前はいつでも行けるからと先延ばしていた。規制がかかると「あぁ~行っておけばよかった」と後悔した。規制解除になるとニュースで外国人観光客が多く押し寄せる様子が繰り返し放送された。好きなテレビ番組NHKの『ブラタモリ』でも箱根の特集で大涌谷が詳しく紹介された。それでもなかなかいく決心がつかなかった。泊まりで訪ねてくれた友人夫妻が車で来ていて、日曜日の朝、「車でどこか行きましょうか」と言ってくれた。私は「ずっと大涌谷へ行ってみたかったので連れて行ってもらえますか」とお願いしてみた。快く受け入れてくれた。妻もまだ大涌谷へ行ったことがなかった。

 箱根は気温9度と肌寒かった。日曜日なのに渋滞もなくナビで大涌谷の駐車場まであと400mのところまで行けた。駐車場が満車で待つことになったが、博識の友人との会話がはずみ楽しかった。会話というより大学の講義そのものだった。友人は大学で教えていただけあって、私たち夫婦が投げかける質問に丁寧にわかりやすく克つ面白く話してくれた。20分くらいで駐車場に入ることができた。料金所で運転していた奥さんが窓を開けると強い刺激臭が鼻をつき、同時に目が痛くなった。車の窓さえ閉めていれば、車内には臭いはまったく入ってこなかった。今の車の気密性が優れていることを実感した。これほどの気密性なら練炭自殺も可能などとふと頭に浮かんだが首を振って邪念を追い出した。後で知ったことだが、駐車場の入り口に「心臓疾患、もしくは呼吸器気管支に支障があるかたは、外に出ず車内にいてください」の注意書きがあったと妻が言った。私は狭心症で心臓バイパス手術を受けている。先に知ってしまうと私のような“病は気から”の歩く実験塔は、そく心臓が痛み出す。マスクを持ってくればと思いつつ、鼻と口を手で押さえながら外に出た。

 友人の先導で友人お勧めの“黒たまご”の売り場へ行った。友人が代表で列に並んで“黒たまご”を買ってくれることになった。私たちは土産物屋の店内で待った。しかし友人があと3人で順番がくるところでたまごを売っていたおじさんが「残りあと三つ」と不機嫌そうに言った。友人の二人前の客がその三つを買い占めた。結局買うことができず他の店へ行った。そこで5個500円の袋入りを買ってきてくれた。車に戻って車内で“黒たまご”を食べた。美味かった。

 なんでもこの“黒たまご”を1個食べると寿命が7年延びるとか。日本のどこにでもよくある話である。でもこんな話は、会話を盛り上げる。妻が言った。「71歳だから1個で78か。ねえ、もう1個食べて」と2個目を差し出した。私は計算した。2個だと14年、85歳か。無理無理。たとえ生きていても、息をしているだけで「ここはどこ?私はだあれ?」の状態であろう。でもあと7年が加算される黒たまごを袋ごと密かにカバンにしまった。そして帰宅して書斎で願いながら食べた。冷めていたけれど美味かった。

 友人が大涌谷で黒たまごを食べた後私に、「10年は大きいな」とポツリと言った。友人は奥さんと10歳の歳の差がある。私たち夫婦は11年ある。友人の言葉が私のジジイの壁を突き抜けた。

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