団塊的“It's me”

コキロク(古稀+6歳)からコキシチ(古稀+7歳)への道草随筆 2週間ごとの月・水・金・火・木に更新。土日祭日休み

似たもの夫婦

2019年08月15日 | Weblog

 先日スーパーへ買い物に行った。レジに並んでいる時だった。妻が小声で「ねえ、私たちって似ている?」と尋ねた。私はイチを聞いて、ジュウを知るものではない。鈍いのである。いつものように言葉が出ない私に妻が「向こうの二人似てるよね」と加えた。目を向けて二人を見た。似てると言えば似てるが、特段そうとも私には思えない。また言葉に詰まる。妻「私たちも似てる?夫婦は似るっていうじゃない」。

 10日茨城県の高速道路で、またあおり運転の果て、暴力事件が起こった。事件事故に備えて、ドライブレコーダーを付けている車が増えた。そういう私もその一人である。このあおり事件の一部始終がテレビのニュースで何度も繰り返し放送された。酷い。野蛮。執拗に繰り返されるあおり運転。危険。いつ後続の車両と接触衝突して大惨事になるやもと。とても高速道路で取る行動ではない。やがて白いBMWから、まず女性が降りてきた。早とちりの私は「運転して他の女性なの」と驚く。BMW=左ハンドルの判断。その女性携帯電話で、止めた相手の車に向かって、動画なのか写真を撮りだす。そしてその後、男が車から降りてきて止めた車の運転手に暴力をふるった。男により、私は女性から目を離せなかった。この女性と男との関係はわからない。いずれにせよ、女性がただの一度も男の行動を制止する身振りがみられなかった。夫婦なら間違いなく“似たもの夫婦”である。

 後にテレビでもネットでも多くの情報が流された。なんとあの白いBMWは試乗車だったという。またあのBMWを運転していた男は、先月23日に愛知県内で、30日には静岡県内でやはりあおり運転で警察に通報されていたのである。これだけドライブレコーダーが発達普及しても、警察は実際に事故事件にならないと動かない。事前に予防して市民を保護することなどしてくれない。私の経験では、警察は、持ち込まれるドライブレコーダーの映像を証拠としてまだ認めていないように思われる。しかし警察は、犯人逮捕など自分たちの毀誉褒貶に関わる件には、積極的に市民から監視カメラやドライブレコーダーの映像を集める。今回のBMWのあおり運転と暴力事件でもBMWが試乗車であれだけ鮮明に殴打する映像があっても警察の動きは遅い。

 今回の茨城県でのあおり運転と暴力事件のあの男女が夫婦かどうかわからい。しかしあの映像を観ていて、故中川昭一さん夫婦を思い出した。中川さんが海外で泥酔して問題を起こした時、記者たちが中川さんの自宅近辺に帰国した彼を取材するために集まった。家を出た中川さんに家から声がかかった。「いよ日本一」「がんばれよ」「大丈夫」 私は正直夫婦っていいな、と思った。その後、中川さんは亡くなって、郁子さんが国会議員になった。彼女も問題を起こして、選挙では落選した。結末には失望落胆したが、一つの夫婦の形を学んだ。

 私は仲の良い夫婦が好きだ。家に客を招く時、夫妻を一緒に招くように心がけている。私が友人と認証する人たちは、みな夫婦仲が良い。仲が良い夫婦を選んでいる。なぜなら勉強になるからだ。バツイチの私は、結婚で一度大きな失敗をした。再婚するまでの15年間のヤモメ生活は、一人の人間としての、再びいつの日かある女性の夫になるための、男性としての再教育機関であった。正直、もう二度と結婚はできないだろう、するべきではないとも思っていた。44歳で再婚した。人生が変わった。私自身も変わった。二人の子供も大学を卒業させた。妻は私の過去を彼女の心の奥深くに封印してくれた。再婚して26年になる。

 気になる文を本で見つけた。「いずれにしても夫婦は、その知能が低い方の水準で暮らすものです」ミッシェル・モーロア 私は医者である妻にはある面で劣等感を持つ。モーロアが言う“知能”は学力でも学歴でも職業でもなく、人間としての知能と私は勝手に解釈する。低い方の水準が人間として常人であれば良い夫婦になれる気がする。

 毎日一緒に寝て、起き、同じ場所に暮らしていれば、嗜好、姿、表情、反応、言葉使いなど似てくるに違いない。私はモーロアの言う“知能”がどういうものであれ、まず妻の“知能”に近づきたい。そういう似たもの夫婦になりたい。

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