団塊的“It's me”

コキロク(古稀+6歳)からコキシチ(古稀+7歳)への道草随筆 2週間ごとの月・水・金・火・木に更新。土日祭日休み

無駄死にが悲しい

2024年07月16日 | Weblog

  アメリカ時間7月13日ペンシルバニア州で前アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏が演説中に銃撃された。あと数センチ内側だったら…。想像するのさえ恐ろしい。日本時間でちょうど日曜日の朝だった。私は、11日にカテーテル施術を受けた病院を退院した。まだ傷口が痛かった。なるべく動かないようにして静養していた。そこへトランプ氏が銃撃されたニュースが飛びこんできた。ドナルド氏は、耳に怪我を負ったが、命に別状はなかった。テロップに1人死亡2人重傷と出た。しばらくして犯人は射殺されたと報道された。当然カメラは、耳から血を流すドナルド氏がシークレットサービスの隊員に囲まれて守られながら移動する様子を追った。私は、1人死亡2人重傷についての詳しいことを知りたかった。結局それを知ったのは、事件後ずいぶん経ってからだった。

 私はトランプ氏の容態も気になったが、それ以上に1人死亡2人重傷がどういう人たちなのか知りたかった。犠牲になったのは、Corey Comperatore(コリー・コンペラトーレ)さん50歳だった。トランプ氏の演壇に向って左奥の観客席に家族(妻と娘)と座っていた。犯人は、半自動ライフル「AK-15」で8発撃った。コンペラトーレさんは、妻と娘を守るために二人の上に覆い被さって弾が彼の頭に当たった。犯人が狙ったのは、間違いなくトランプ氏であった。コンペラトーレさんは、トランプ氏の支持者で、トランプ氏の応援のために家族で会場にいた。席がどう決められていたのかはわからない。偶然そこに座ったのかもしれない。私は、人間の運命が、あまりにも偶然が重なり合う現象を理解できない。理解できないと言うより認めたくない。

 私は、カナダ留学時代にライフルで牧場のゴルファーという動物駆除の仕事をした。私を雇った牧場主は、朝照準スコープ付きのライフルと弾薬を受け取った。農場主の運転する小型トラックに乗って配置場所に就いた。ゴルファーはプレーリードッグのことで、ゴルファーが開ける穴で、牧場の牛や馬が脚を折る被害がでる。広い牧場で脚を折って動けなくなった家畜は、コヨーテやオオカミの餌食になってしまう。

 配置についてスコープでゴルファーに照準を合わせる。距離は、50~60メートル。照準スコープにゴルファーの顏がアップされる。なんと可愛い動物なのか。まるでリスのよう。警戒心の強い動物で、集団で地中に巣を作り、暮らしている。後退で巣の外に見張りに立つ。その立ち姿がまた可愛いのである。ライフル銃でゴルファーを殺すのは、さほど難しくない。でも小心者の私はどうしても引き金をゴルファーに向けて引くことができなかった。この仕事を紹介してくれた同じ学校で学んでいたベトナム帰りの元兵士だった学生が、私の所に来た。「あとは俺が撃っておくから、お前は、弾を全部撃ち尽くせ」と言った。報酬は、全て彼に渡した。もう2度ライフルを撃たないと誓った。

 トランプ氏銃撃事件で日本の安倍元首相の暗殺事件を思い出した。犯人は、世間で決して目立つ存在ではなかった。私と同じワンオブゼムである。しかし誰が持ってもライフルは、殺傷能力がある武器である。その武器が名も知れない犯人に使われ歴史が変えられる。たまたま近くに居た銃撃の的でない普通の人が犠牲になる。無駄死にである。無念でならない。

 忘れていたカナダの牧場でのことを夢でみた。スコープの照準が示す+の真ん中にゴルファーの替わりに、耳から血を流すトランプ氏がいた。

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