団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

貼り紙

2013年03月14日 | Weblog

 散歩の途中貼り紙を見つけた。張り紙は、店の入り口にあった。その店が何の店だったのかも知らない。私はじっと貼り紙の前に立って動けなかった。貼り紙の写真を掲載したので内容を読んで戴きたい。

 私の住む町の商店街もほとんどの店のシャッターが閉まっている。常時閉ざされたままのシャッターは、煙霧の中に取り残されたように私の気持ちから前向きな思考をぼかす。また一軒,個人が経営する店が営業を停止しただけなのかもしれない。地方のどこの市町村にでもある社会現象と素直に私は受け止められない。

 去年、町の商工会が主催した手作り作品のフリーマーケットに妻と参加した。私が趣味で作り溜めたマグネットを並べた。冷蔵庫の扉にメモやレシピ、領収書などを貼り付けておく磁石つきの小物である。あちこちで買い集めた箸置き、アメリカの1ドル銀貨や貝殻に磁石を接着剤でくっ付けてある。4,5時間の営業で売れたのは、2個だけだった。それも同じマンションに住む友人が買ってくれただけである。人はたくさん足を止めた。遠慮会釈なく商品をいじり回して平然と通過していった。右隣りの手作りアクセサリーを売る女性は、10分に一個は小さな紙袋に作品を入れ客に渡していた。左隣りの漬物を売る父と息子は「もうじき売れ切れだ」と汗を浮かべて客と冗談を言いながら売りまくった。私たちは2千円の出店料を払い、売り上げは千円だった。

 妻と私は「いい勉強をしたね」と負け惜しみで慰め健闘を称えた。二人がいかに商売に不向きであるか思い知らされた。商売も才能であろう。何を売るか。いくらで売って利益はどれくらい出るか。客にかける声、言葉使い、雰囲気、見た目の印象、服装、顔も重要だ。人にはそれぞれ向き不向きがある。

 貼り紙に思いの一端を書き付けた店の主を思った。商売するには客がいなくてはならない。地方は人口減少が続く。駐車場を完備した大規模商業施設に客を奪われる。デフレによる過度な価格競争に個人経営の店は太刀打ちできない。商品が売れなくては仕入れもままならない。悪循環が追い討ちをかける。それでも人は生活するために収入が必要である。この町だけではないのだろうが、増えているのは老人介護関係の事業所ばかりである。悪いとは言わないが、これで町が活性化するとは思えない.

 引け際を見計らうのは難しい。続けて損失を増大するより、どこかで線を引いて撤退すれば、再起の機会もある。何年か先にこの店が再開するころ、日本の経済が再び力強い成長を始めていることを願わずにはいられない。

 

 

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