団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

かんぺい?甘平!

2022年03月04日 | Weblog

  今も、まだあるかわからないが、上田市に『いも平』という高級フルーツ店があった。角地の奥行きが数メートルしかない小さな店だった。商店街の交差点の一角の目立つ場所だった。“いも”が芋を意味していたのかはわからない。私は勝手に『いも平』の“いも”は芋だと思っている。加えて『…平』は、気取らず親しみやすい。家が貧乏だったにもかかわらず、芋を馬鹿にする帰来があった。しかし『いも平』は、店名に似合わない、他所の店と違った高級フルーツをいつも並べていた。私には縁のない店だった。町に出て、『いも平』に並べられた高級フルーツは、観るだけでも心弾んだ。マスクメロンなるモノを始めて見た。メロンといっても私が食べることができたメロンは、マクワウリやスイカぐらいだった。『いも平』で宝石店の宝石のように鎮座するマスクメロンに見惚れた。私は、大人になったら、マスクメロンを自分で買えるようになるぞ、と誓った。

 私は、大人になった。高級なマスクメロンに対して、『いも平』の店の前で誓った時の気持ちはすっかり萎んでしまった。たぶんメロン以外に美味しい果物を知ったからだろう。『甘平』を始めて口にした時、みかんの理想形に出くわしたと思った。最初『甘平』を私は、『あまへい』と読んでいた。正確には『かんぺい』だそうだ。子供の頃『いも平』に憧れた。まず名前に惹かれた。『いも平』が『甘平』と直結した。『甘平』は、私にとって、子供の頃『いも平』に並んでいたマスクメロンと同等、いやそれ以上かもしれない。

 チュニジアに『トムソン』というオレンジがあった。美味いオレンジだった。『甘平』は、その『トムソン』に匹敵している。

 『甘平』は、デパ地下などでは、1個600円くらいで売られている。私は、ネットで探して「訳あり」の手頃な値段の甘平を一箱買った。そこに説明書が入っていた。

甘平:

 「甘平は愛媛県で誕生し、2007年に品種登録されたばかりの新品種であるとともに愛媛でしか栽培許可のない柑橘のためご存じない方もいらっしゃると思います。甘平は、「西之香」✕「ぽんかん」いいとこどりの優良品種です。甘平は、栽培がとても難しい柑橘です。大玉果なのに外皮が極端に薄いことから、夏の成長期には外皮の成長が追い付かず、果実がわれてしまう「裂果」が非常に多いのです。みかんのように普通に栽培してしまうと全体の30%も裂果し、裂果対策をしても15%は裂果してしまうというデータが出ています。最後の収穫を迎えられる甘平はとても貴重で、生産部スタッフの努力の賜物なのです。栽培過程で割れてしまうほど、はちきれんばかりの果肉がギッシリ詰まっている甘平は糖度が高く、濃厚な味わいと独特のシャキシャキとした食感です。」

 確かに「訳あり甘平」の箱の中には、裂果しているものもあった。味に問題は、まったくなかった。薄皮〈瓤嚢膜(じょうのうまく)〉がはちきれて中からツブツブ〈砂瓤(さじょう)〉が飛び出しているプリプリ感がたまらない。

 日本には美味しい果物がたくさんある。近隣国では、虎視眈々と苗木や種子や栽培法をねらっている。20数年前、オーストリア・ウィーンの最大マーケット街「ナッシュマルクト」で売られていたリンゴ「ふじ」は、すべて韓国産だった。今イチゴ、シャインマスカットなど、日本の農家が長年苦労して、品種改良して作り上げた果物や農産物や家畜が、不法に持ち出されている。お人好しで優しい農家を政府は守れない。やられっぱなしなのがかわいそう。愛媛でしか栽培ができないという甘平も被害にあわなければいいのだが。


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