団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

若隆景わかたかかげワカタケカゲ

2022年03月22日 | Weblog

  連日の大相撲大阪場所の熱戦のお陰で、滅入りがちな気分が上向いている。今場所の若隆景の強さは、あっぱれとしか言いようがない。高安が以前の強さを取り戻してきているのも嬉しい。ただ好きな宇良は、良い相撲を取っているのだが勝ち星につながっていないのが残念。明生も元気がなく心配。最近若い力士が台頭してきている。琴ノ若、阿炎、豊昇龍そして十両の王鵬と熱海富士。

 

 ただ力士がこれほど熱戦を繰りひろげているのに、NHKテレビの実況放送担当のアナウンサーと解説者が、実況の質を下げてしまっている。現在テレビとラジオでお笑い芸人が食い込んできていないのは、スポーツ実況の分野だけだそうだ。しかし早晩、スポーツ中継もこんなでは、先行きがない気がする。

 カナダの学校にいた時、学生たちと将来どんな職業に就くか話した。その中で記憶に残っているのが、アナウンサーは、1分間に何語正確にわかりやすく早く話せるかが鍵、それは大工の給料が1分間に釘を何本打てるかで決まるのと似ているという話だった。もちろん日本でも、NHKならそれくらいの基準はあるであろう。

 

 しかし相撲の実況放送で私を感心させるようなアナウンサーはいない。テレビが普及していなかった私が子供の頃、大相撲はラジオで中継されていた。あの頃のアナウンサーは、聴いている者がまるで目で見ているような状態にさせた。テレビ放送が始まって、大相撲の実況放送に杉山邦博という名アナウンサーが登場した。視聴者は、長く彼の実況に親しんだ。彼が退職すると、彼に続くような名アナウンサーはいなくなった。残念である。

 

 若隆景は強い。しかしこのしこ名は、言いにくい。まるで早口言葉だ。NHKのアナウンサーでもなかなか苦労している様子にみえる。先日、解説の北の富士が、「言いにくい」とこぼしていた。

 

 子供の頃、早口言葉を誰がちゃんと言えるか競う遊びをした。「親亀の上に子亀、子亀の上に孫亀、孫亀の上にひ孫亀」「スモモもモモもモモのうち モモもスモモもモモのうち」などを覚えている。「若隆景、若隆景、若隆景」と3回言うのも大変だ。

 

 先日ラジオで春風亭一之助が「あんたあたしのことあんたあんた言うけれど、あたしもあんたのことあんたあんた言わへんから、もうあんたもあたしのことあんたあんた言わんといてよあんた!」を巧みな話術で披露していた。

 

 長男が家を離れて全寮制の高校へ行き、その後東京の大学に入った。田舎に帰って来て、「オヤジ、“あんた”って言わない方が良い」と言った。それが原因か、“あんた”は使えない言葉だと思うようになった。一之助の早口言葉を聞いていて、そんな昔のことを思い出した。

 

 自分は、アナウンサーになれるほど、喋りが上手くない。だからこそプロに期待する。早口言葉だけでいいアナウンサーになれるかと言えば、そんなことはないであろう。声の質、話す内容、知識も重要だ。相撲の力士は、スポーツの中でも最も過酷な稽古で鍛える。土俵は、力士の稽古の集大成を出す場所なのだ。NHKもアナウンサーも、それを理解して、力士以上に研鑽を積み、それなりの対応を具現して欲しい。

 


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