団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

マスク・トイレットペーパー買い占め買いだめ

2020年03月12日 | Weblog

  WHOの事務局長が今回の新型コロナウイルスによる感染は、『パンデミック』であると初めて言及した。テドロス事務局長の評価は、パンデミックが終息すれば、黙っていても出てくるであろう。だから今は語らない。

 私は、外務省の医務官としてネパール、セネガル、旧ユーゴスラビア、チュニジア、ロシア・サハリンに勤務した妻に同行してこれらの国々で延べ13年間暮らした。

 ネパールで1000年に一度と言われる大雨が降った。当時私たち夫婦はネパールの首都カトマンズに住んでいた。カトマンズは四方山に囲まれた盆地にある。大雨でカトマンズに通じる全ての道路は寸断された。空港も閉鎖され、カトマンズは陸の孤島と化した。まずガソリンの供給が止まった。続いてプロパンガス。電気と水道は、ほぼ毎日停電断水だったので不自由には慣れていた。やがて砂糖と食用油の商人商店の売り惜しみが始まった。価格が高騰するのを見越してあえて棚から倉庫へ移してしまった。

 大災害、飢饉、大事故などが起こるとその国の人々がどのような物を買いだめ買い占めに走るかによって、その国の文化が浮き出る。今回日本はオイルショックの時のトイレットペーパー買いだめの大騒ぎの再現が起こった。そしてマスク。日本に住むイタリア人の友人がイタリアではトマトソース缶だと言う。アメリカ映画『コンテイジョン』では、食料そしてある製薬会社が開発したワクチンの争奪で暴動となった。

 私は高齢者で糖尿病。新型コロナウイルスが一番狙いやすい獲物である。もともと隠居と自負するほど家の中にいることが多い。安倍首相が「不要不急な用がない限り、自宅待機するように」との要請を出した。これを機に家の中の普段中々できないことをすることにしている。炊飯器を分解して細かい所まで掃除した。流しのシンクを磨いた。書斎を整理整頓した。CDやDVDを専用布と液で拭いた。音が綺麗になった。トイレのウォシュレットの使い方をもう一度取扱説明書を読んだ。

 ウォシュレットの起源は、インドやネパールなどの南アジアの生活習慣ではないだろうかと私は考える。トイレには水ガメを持っていき、終わったら水でお尻を洗う。ウシュレットと同じ事をする。ネパールの千年に一度の大雨大洪水の時、ネパールでトイレットペーパーの売り惜しみも買い占めもなかった。もちろんトイレットペーパーを買って使える家庭は少ない。村などへ行くと子供たちは、日本の昔のように小石や葉を使っていた。

 以前からトイレを使うたびに気になることがあった。“乾燥”という機能が付いているが使ったことがない。どうしてもトイレットペーパーを使ってしまう。待てよ。この機能、今回の新型コロナウイルス感染の広まりによるトイレットペーパー買い占めの救世主になるのでは!さっそく使ってみた。習慣とは恐ろしいものだ。最後にトイレットペーパーを使わないと、ひと仕事終わった感が出ない。ここは時間持ちのコキジの出番。じっくり時間をかけて検証してみた。 “乾燥”機能は時間がかかる。でもトイレットペーパーが無くなったら、約5分から10分待つことができれば、トイレットペーパーを使わなくても済む。それに衛生的だ。ウシュレット製造会社が本気になって、トイレットペーパーを使わないで、数十秒で完璧に乾燥が済む製品を開発販売することを待つ。

 歳を取ることは悪いことばかりでない。過去の経験が日に日に役立ってくる。ネパールの千年に一度の大雨大洪水、セネガルの旱魃、旧ユーゴスラビアの国連による経済封鎖、チュニジアの人種差別、サハリンの疲弊した経済と治安悪化などすべての経験がサバイバル訓練だった。あの時ああした、ああだったこうした、こうだったが、思い出される。まだまだこれしきで降参できるか。新型コロナウイルス騒動があって自宅待機していても、電気水道が使え、ネットで家族友人とも連絡を取れる。恵まれている。感謝する。海外で経験した負の財産と思っていた経験が、今は応用可能なものとなっている。


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