団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

『差別せず、COVID-19』

2020年03月26日 | Weblog

  カナダ留学時代アメリカへたびたび旅行した。第二次世界大戦が終わってまだ十数年しかたっていなかった。日本人であるがために多くの心ない言葉を投げられた。カナダの在学した学校は、キリスト教系の規則が厳しい学校だった。校内で差別的な言葉を投げつけられたことはほとんどなかった。しかし選手として参加した野球大会で、私がバッターズボックスに立つと「Jap go home!」と観客席から声があがった。これに奮起して私はヒットを打てた。アメリカ旅行中に投げかけらた忘れられない言葉がある。-neseである。最初にこう言われた時、意味がわからなかった。これがもし「What do you need?(あなたが必要な物は何か)」のneedなら「ニー(ド)」と聞こえるはず。Needsの可能性もあるが、文法的に主語がyouで二人称なので動詞が三人称単数現在のneedsは使わない。アメリカ人の友達にこの話をした。彼は「ゴメン!悲しいけれどこれはお前を侮辱するために使われた表現だ。-neseはJapanese, Chinese の終わりにある-neseなんだ。私たちには中国人も日本人も区別がつかない。たぶんだけれど昔アメリカの北部と南部が戦争した頃、What -key(kee) are you, monkey, donkey, Yankee?と言って、南部の人が北部の人を馬鹿にする表現があった。それを-neseに転用したのでしょう。いずれにせよそんな連中がまだいることを恥ずかしく思うよ。許してください」

  今回の新型コロナウイルス感染症の世界的伝染でアジア人への差別事件が止まらない。私の周りの日本人が「韓国人、中国人と日本人の区別は簡単にできる」と言った人がいる。私は区別できない。しかし多くの外国人にとってアジア人の区別はつかない。新型コロナウイルス感染は中国の武漢が発生源と言われている。坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。ウイルスへの恐怖が手っ取り早い近間のアジア人への差別行動言動にとって換わられる。私の知人の子供がアメリカの学校ですれ違いざまに「ウイルス」と言われたそうだ。何か自分では解決できない悪いことが起こると人間の本性が現れる。これからのしばらくアジア人には受難の時が続くであろう。

 そんな折、アメリカの歌手マドンナさんが自身のSNSで「あらゆる人々が分け隔てなく感染することで『平等』がもたらされている」と言った。これが炎上していて、現実にそぐわない認識だと批判されているという。私もある意味同じようなことを考える。マドンナさんは、子供の頃、酷い苛めにあっていた。彼女の幼児体験が、彼女の生き方や歌に色濃く表現されている。私は彼女のファンではないが、彼女の訴えようとしていることに賛同する。彼女はSNSにこう続けている。「新型コロナウイルス感染症で重要なのは、金持ちだろうと有名人だろうと関係がないこと。面白い人でも、頭が良くても、どこに住んでいても、何歳であってもかかる。どんなにすばらしい話を語られたところで意味はない。すべてを平等にするのが素晴らしい。恐ろしさが素晴らしさになる。私たちは皆同じ船に乗っている。船が沈むときは、全員が沈む」 事実トム・ハンクス夫妻、英国のチャールズ皇太子、志村けんさんも感染している。

 今必要なのは、治療薬とワクチンである。差別はいらない。新型コロナウイルスに“平等”に扱われる人類が挑む時である。


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