団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

隠居仕事

2019年11月13日 | Weblog

  生活しているとあちこちに汚れが付く。毎日の日課を同じ順番でだいたい同じ時間にこなす。一日中日課で埋め尽くされているわけではない。毎日空き時間というものがある。「さて今日は何をしようか」となる。やらなければならない終活は、おかげさまで山ほどある。飽きやすい性格である。一つ決めて、それを終わるまでやり通すのが苦手。結果、あちこちに手を出して、やりっぱなしとなる。

 昨日は、台所の包丁立に目がいった。ステンレス製で包丁が11本収納できる。包丁を研ぐのが好きなので、包丁は常にキレキレッ。まさか包丁立がこんなに汚れているとは。決めた、今日は包丁立を磨いてピカピカにしよう。

 大事な包丁を1本づつ抜いて、拡げた布の上に丁寧に置く。狭心症や脚の血管が詰まり易いので血液をサラサラにする薬を飲んでいる。その効果を以前指の先を切った時思い知らされた。ちょうど10連休の後半で病院へ行けず、大変な目に遭った。血が止まらず、3日目にやっと病院へ駆け込んだ。包丁は慎重に扱わなければならない。包丁を出し終えると、いよいよ本体の掃除である。やはり台所は、油汚れがどうしても多い。調理台でオリーブ油、バター、サラダ油、ごま油を使って調理する。換気扇を回すが、目に見えない細かな粒子になって台所のあちこちにへばりつく。包丁立も例外でない。全体がジワーっと油が付いている。洗剤をスポンジにつけてまず擦る。それを乾いた雑巾で拭き取る。さらに汚れが落ちていない所を2度洗いする。今度は乾拭き。光るまで磨く。最後は金属磨き用の布で仕上げる。

 包丁立には、包丁を刺す穴が11ある。よく見ると穴もけっこう汚れている。ここで綿棒の出番。綿棒を2種類用意した。太目のものと細めの物。穴の幅が違うので太いものと細いものを使い分ける。綿棒を穴に入れ、グイグイと擦る。取れる、取れる。汚れが綿棒に絡まる。気持ち良い。穴はプラスチックの筒になっていて、一番上が少し盛り上がっている。この段差も汚れている。綿棒で丁寧に汚れを落とす。力は必要ないが、結構時間はかかる。

 先日ダスキンのお掃除サービスで風呂場の掃除を依頼した。女性二人が来て、狭い風呂場に入って二人で3時間掃除してくれた。私は1時間ぐらいで終わると思っていたが、あまりに時間がかかるので、様子を見に行った。狭い空間で特殊な薬品を使ってカビを落とすと聞いていたので、もしやその薬品を吸い込んで二人が倒れ込んでいるのではと心配したからである。二人は黙々と仕事をしていた。あれだけ一生懸命に掃除してくれたにも関わらず、カビは完全に消えていなかった。日頃のこまめな掃除が必要だと痛感した。

 掃除と言えば、旧ユーゴスラビアのマーラさんを思い出す。孫がオーストリアに留学しているので、少しでも孫に仕送りできるようにと、何軒かの家の掃除をしていた。知人の紹介で週2回来てもらっていた。70歳を過ぎていたこの人は掃除の達人だった。どこもかしこも彼女が掃除するとピカピカ。動きも素早く、跳ねるように家の中を移動。水道の蛇口、ドアの取っ手、流し、便器。住んだ国で多くのお手伝いをお願いしたが、マーラさんほどの凄い人はいなかった。

 私は隠居の身である。終活もしなければならないが、日常生活の大事な担い手でもある。妻が出勤した後、一人きりになる。サボろうと思えばいくらでも怠惰に妻の帰りを待てる。毎日、山ほどたまっている終活を先延ばしにして、洗面台の排水口のヌルヌルを洗い、掃除機の中にたまったゴミを捨て、中を除菌シートで拭いたりする。やらなければならないことから逃げるのは、子供の頃の手づくなやお使いの途中の道草や寄り道のようなチョットしたスリルが味わえる。これぞ隠居仕事の醍醐味である。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする