巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

「吉永さん」

2004-11-22 23:39:02 | 日記・エッセイ・コラム
「そこの吉永さん!」

酔うと女性にそう呼びかける年配の男性たちがいる。
「吉永さん」とは女優の吉永小百合のことだ。彼らにとっては「吉永さん」とは美しい女性の代名詞に他ならない。だから酔いまかせての女性へ呼びかけは「吉永さん」になる。

サユリストと呼ばれる彼らは、吉永小百合の憧れと敬愛の念から、自分たちの永遠のアイドルを「吉永小百合」と敬称無しで呼ぶことはできない。「小百合さん」というファースト・ネームにさん付けの呼びかたも、畏れおおくてできない。だから「吉永さん」になる。

おじさんは自分の妻に牛乳を買ってきてほしいとき、こうつけくわえる。
「吉永さんの(宣伝していた)牛乳を買ってきてくれ。」

テレビの買い替えを考えるとき、おじさんはこう言う。
「吉永さんのテレビがいい。」

吉永小百合は1945年生まれ。そろそろ孫がいてもおかしくない年齢だ。そして聞いた限りでは、彼女はその長いキャリアにおいて必ずしもスキャンダルと無煙だったわけではない。さらには、サユリストたちが描く彼女のイメージを裏切るような映画にも出演しているし、出演作には映画としての出来が悪いものもある。

しかし、依然として吉永小百合は透明感のある女優であり続ける。そしておじさんたちは熱狂的で忠実なファンであり続ける。

おそるべし吉永小百合。いや、吉永さん。