巣窟日誌

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企業がウェブサイトに載せるもの ― その文化差 (3)

2010-06-05 22:48:59 | インターネット (CMC)
(本記事は、「企業がウェブサイトに載せるもの ― その文化差 (1) および (2) 」の続きです。)

■ 写真集・画像集

大手の欧米系(といってもわたしが良く見るのは英語圏なのだが)の企業のサイトには、"Photo Library" とか"Image Gallery" といったカテゴリーで、多くの写真を掲載してあるページがある。多くの場合、このタイトルのページにアップされている写真は、一般の人も一定のルールの下でダウンロードし、外部使用が可能である。

ここにアップされている写真の種類は、まずはその企業の製品や工場であるが、それだけにとどまらない。その企業で働く一般の人々、その企業が力を入れている環境保護や社会活動の様子、その企業と地域社会との関連を表す写真など、その企業に何らかのプラスのイメージを与えるようなものが注意深く選ばれている。これらの写真はわたしのような写真の素人にも、プロの写真家が撮ったでしかあり得ないとわかる、すばらしいものだ。

そしてここには、必ずと言ってよいほど役員たちの公式の写真がアップされている。その写真は、1名につき1枚のこともあり、または1名の人間につきアングルを変えた複数の写真が掲載されていたりすることもある。いずれにしろ、各人をできる限り良く見せるような写真が選ばれている。

たとえば、英豪系資源大手のBHP BillitonImage Libraryから、People Imagesを見てみよう。会長(ああ、ジャック・ナッサー)をはじめとする数名は、ジャケットの丈ぐらいまでのミディアム・ショットである。

こういうときの男性のポーズは片腕は自然におろし、もう片方はズボンのポケットに軽く手をつっこんでおくのが、自信にあふれ かつ リラックスしているように見える写真のポーズの標準らしい。

間違っても「イチジクの葉」(両手を前に組んだポーズ)とか、直立不動の「気をつけ」(腕をズボンの縫い目にそって指先までまっすぐにのばす)などの姿勢はNG。企業のディレクターにはふさわしからぬ人物との印象を与えるらしい。そう、前にも言った通り、彼らは企業の顔なのである。

このような写真を見るにつけ、彼らには「当社に関する写真が使われるのあれば、人にしろモノにしろ抽象的なイメージにしろ、とことんまでカッコよく美しいものを提示して配布して、それを使わせたい」という、意識がかなり強く働くのだろうと、ひしひしと感じる今日この頃である。ウェブサイトというのは、こういう目的のためにも非常に便利だよね。

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立ち姿で両手を前に組んだポーズは、「イチジクの葉(fig leaf)」のポジションといわれる。ヘビの誘いにのって禁断の木の実を食べて自分たちが裸であることに気がついたアダムとイブが、急に恥ずかしくなっていちじくの葉で自分たちの腰のまわりを隠したという旧約聖書の話から、局部を隠しているような立ち姿であり「自信がなさげ」な印象を与えるらしい。)さっき季節外れの柏餅を食べながら考えていたんだけれど、さすがに柏の葉じゃ前を隠すには小さすぎるかしら。かたちはちょっと似ているけど。