タイトルのような質問を、同じ病気にかかった何人ものに聞かれたことがある。
諸説があるが、乳がんのリスク因子は大体以下のようなものである。
「日本では20人に1人が乳がんにかかっていると聞きました。なかでも乳がんにかかりやすい人はどんなタイプですか? 」 (All about 乳がん.infoより)
また厚生労働省調査班の過去の疫学調査によれば「リスク高いのは…高身長、未出産、早い初潮 厚労省調査」だそうである。
わたしの場合は、乳がん年齢であることに加えて「背が高い(167 cm)」と「出産経験なし」があてはまるのだが、これらにひとつもあてはまらなくても乳がんに罹ってしまう人がいる一方、ほとんどすべてを満たしていながら乳がんにはかからない人もいる。で、同じ病気にかかった人たちで話をしていると、共通項は「食生活による肥満」か「ストレス」でまとまる。だから、頭書のような質問が出てくる。
乳がんの細胞のダブリングタイム (doubling time) は通常は約100日。これでいけば、1mmのしこりができるまでに約5年、1cmになるまでに約8年かかる。そのため、しこりの大きさから逆算して、最初にがんになったのはいつなのかの大体の推定が可能だ。
そうやって時期を推定した場合、乳がんにかかった人の多くには、「最初にがんができた」と思われる時期に、心当たりのある出来事がある。その頃に夫や肉親が死んだとか、会社が倒産したとか、リストラにあったとか、セクハラで苦しんでいたとか、離婚したとか、あるいはお金がなくて仕事を掛け持ちしていてほとんど休息が取れなかったとか、家庭内暴力がすごかったとか… で、やっと落ち着いてきたと思った矢先に、あるいはその状態に耐えに耐えているうちに、乳がん発見となる場合が結構多い。
ならば、ストレスが乳がんのリスク因子に加えられてもよさそうなものだが、問題はそのストレスを正確に測る手立てがないことだ。同じ経験をしても、人により受けるストレスが異なる。たとえば家計を一手に支えている人がリストラになるのと、職を失っても配偶者の収入で何とかなる人の場合では、受けるストレスが異なるだろう。全く同じ状況で同じような目にあったとしても、どのぐらい大きなストレスとして感じるかは、その人の性格による。
なので、お医者様の中で「ストレスと乳がんの何らかの関係がありそう」と思っている先生も、確固たるデータがないために、「あまりストレスをためないように」というほかはないらしい。
さて、わたしのがんにはしこりがなかった。がん細胞がその場所でしこりを作らず、乳管内側に沿ってどんどん広がっていき、乳房温存が選択肢にはないほどの広がりになっていた。このがんにかかったのはいつごろか? あまりよくわかっていない非浸潤がんのことだからあくまでも推定の域を出ないのだろうが、ある医者は8年~10年ぐらい前とし、もう一人の医者は10年~12年と推定した。
10~12年説をとったとする。仕事では会社の行き当たりばったりの経営方針とあまりよくない人間関係と、残業(残業代なし)の多さに四苦八苦し、家では経済問題と両親の離婚のカウントダウンで、大荒れ。体調を崩し、でも会社を休んだりすると「大学院に行っているのがすべての元凶」なんて言われるものなので、そのへんの市販薬でお茶を濁しながら、自腹の深夜タクシーで帰る毎日。(大学院が唯一のストレス解消になっていたが、あれがなければ精神科行きになっていたと思うよ。)うーん、ここでがんに罹ったのなら、原因はストレスに違いない。
8年~10年説を取れば、例の選挙手伝いをし、経済的にも人間関係でも修復不可能なダメージを負った。自分のやったことには後悔しないわたしが、生まれて初めて深く後悔したこの時期には家庭でも両親の離婚後の残務処理で、これまた結構大変な目にあった。うーん、ここでがんに罹ったのならば、やっぱり原因はストレスに違いない。
「ほーら、やっぱりあなただってストレスが原因でしょ。」同じ病気ゆえに知り合った知人が嬉しそうに言った。「30代前半」「背が低い(150 cm台前半)」「出産経験2回で母乳育児」と、わたしとは全く異なるプロフィールをもつ彼女は、やはりがんに罹ったと思われる時期に、かなり大変な体験をしていた。
諸説があるが、乳がんのリスク因子は大体以下のようなものである。
「日本では20人に1人が乳がんにかかっていると聞きました。なかでも乳がんにかかりやすい人はどんなタイプですか? 」 (All about 乳がん.infoより)
また厚生労働省調査班の過去の疫学調査によれば「リスク高いのは…高身長、未出産、早い初潮 厚労省調査」だそうである。
わたしの場合は、乳がん年齢であることに加えて「背が高い(167 cm)」と「出産経験なし」があてはまるのだが、これらにひとつもあてはまらなくても乳がんに罹ってしまう人がいる一方、ほとんどすべてを満たしていながら乳がんにはかからない人もいる。で、同じ病気にかかった人たちで話をしていると、共通項は「食生活による肥満」か「ストレス」でまとまる。だから、頭書のような質問が出てくる。
乳がんの細胞のダブリングタイム (doubling time) は通常は約100日。これでいけば、1mmのしこりができるまでに約5年、1cmになるまでに約8年かかる。そのため、しこりの大きさから逆算して、最初にがんになったのはいつなのかの大体の推定が可能だ。
そうやって時期を推定した場合、乳がんにかかった人の多くには、「最初にがんができた」と思われる時期に、心当たりのある出来事がある。その頃に夫や肉親が死んだとか、会社が倒産したとか、リストラにあったとか、セクハラで苦しんでいたとか、離婚したとか、あるいはお金がなくて仕事を掛け持ちしていてほとんど休息が取れなかったとか、家庭内暴力がすごかったとか… で、やっと落ち着いてきたと思った矢先に、あるいはその状態に耐えに耐えているうちに、乳がん発見となる場合が結構多い。
ならば、ストレスが乳がんのリスク因子に加えられてもよさそうなものだが、問題はそのストレスを正確に測る手立てがないことだ。同じ経験をしても、人により受けるストレスが異なる。たとえば家計を一手に支えている人がリストラになるのと、職を失っても配偶者の収入で何とかなる人の場合では、受けるストレスが異なるだろう。全く同じ状況で同じような目にあったとしても、どのぐらい大きなストレスとして感じるかは、その人の性格による。
なので、お医者様の中で「ストレスと乳がんの何らかの関係がありそう」と思っている先生も、確固たるデータがないために、「あまりストレスをためないように」というほかはないらしい。
さて、わたしのがんにはしこりがなかった。がん細胞がその場所でしこりを作らず、乳管内側に沿ってどんどん広がっていき、乳房温存が選択肢にはないほどの広がりになっていた。このがんにかかったのはいつごろか? あまりよくわかっていない非浸潤がんのことだからあくまでも推定の域を出ないのだろうが、ある医者は8年~10年ぐらい前とし、もう一人の医者は10年~12年と推定した。
10~12年説をとったとする。仕事では会社の行き当たりばったりの経営方針とあまりよくない人間関係と、残業(残業代なし)の多さに四苦八苦し、家では経済問題と両親の離婚のカウントダウンで、大荒れ。体調を崩し、でも会社を休んだりすると「大学院に行っているのがすべての元凶」なんて言われるものなので、そのへんの市販薬でお茶を濁しながら、自腹の深夜タクシーで帰る毎日。(大学院が唯一のストレス解消になっていたが、あれがなければ精神科行きになっていたと思うよ。)うーん、ここでがんに罹ったのなら、原因はストレスに違いない。
8年~10年説を取れば、例の選挙手伝いをし、経済的にも人間関係でも修復不可能なダメージを負った。自分のやったことには後悔しないわたしが、生まれて初めて深く後悔したこの時期には家庭でも両親の離婚後の残務処理で、これまた結構大変な目にあった。うーん、ここでがんに罹ったのならば、やっぱり原因はストレスに違いない。
「ほーら、やっぱりあなただってストレスが原因でしょ。」同じ病気ゆえに知り合った知人が嬉しそうに言った。「30代前半」「背が低い(150 cm台前半)」「出産経験2回で母乳育児」と、わたしとは全く異なるプロフィールをもつ彼女は、やはりがんに罹ったと思われる時期に、かなり大変な体験をしていた。