巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

スカートを1枚も売っていなかったスーパーの婦人衣料品売り場

2009-05-17 00:14:01 | 日記・エッセイ・コラム
東京は板橋区の東武東上線の某駅の近くにある、流通2強のうちの1つのスーパーでの、本日(日付がかわってしまったため、正確には「昨日」だが)の話である。

この店舗は郊外型大型店舗から比べると小さな店舗ということになるが、それでも地上4階建である。婦人衣料は紳士衣料や服飾小物と主に2階のフロアに入っているが、その中でも売り場の面積の大半を占めている。ちなみに紳士物・婦人物とも肌着は別の階にある。

夕刻、帰り道に、何気なくこのスーパーに入った。目的はレインコートだが、ついでにスカートも見ておこうと思った。わたしは20年かけて1サイズ増えたスカートのサイズが、ここ1年半で2サイズほどダウンしてしまったために、ワードローブの中には履けるスカートが少ないのである。

しかし、「わたしの目が節穴で見つけられないのかしら」と思いながら、20分ほどぐるぐるとフロアを隅から隅までくまなく数回まわったのち、わたしはついに下記の結論に達した。

このスーパーは、現在スカートを1枚も売っていない。(ただしテナントを除く)
「わたしの年代層向けのスカートが1枚も売っていない」なんて話ではない。いかなる世代向けのどのようなサイズのスカートも1枚も見当たらなかったのである。もちろんフォーマルウェアのテナントのコーナーにはスーパーブラック(喪服などにふさわしい濃い黒色の生地)のスカートがあるだろうし、同じフロアに入っている婦人服のテナントの売り場には多少はあったのかもしれない。だが、少なくとも、このスーパーが販売を直接担当する範囲では、スカートは1枚もなかった。

この店舗の婦人衣料がボトムスに力をいれていないわけではない。「レギパン」だの「女神のきらめきパンツ」だの―これで、どこのスーパーのことを買いているのかわかる人は多いと思うが―をはじめとして、大量のパンツ、スラックス、ジーンズ類が置いてあり、これらの大量のボトムスの一部は赤字覚悟の大安売り状態にある。

そういえば、2月にこの売り場でシャツを買った時も、スカートは極端に少なく、わずか2種類のデザインの色違いとサイズ違いの展開しかなかった。そのときは、「やっぱり冬だし寒いから、スカートは売れないんだろうな」と考えていた。しかしこの季節になってもまだスカートがないのは妙だ。

そこで、3,990円也のレインコートをレジに持って行った時に、思い切って店員さんに尋ねてみた。

「ここにくるお客さんは、スカートを穿かない人が多いんですか?」

なんでこういう変な質問になってしまったのかというと、実はわたしの母は、このスーパーのこの店舗の、まさにこの売り場で、かつて長い間パートタイマーとして婦人服を担当していたためである。このスーパーは昔からパートに「責任をもった仕事をさせている」ので有名で、店舗に並べる商品を選んで発注するのも、母の仕事の一部だった。「これこれこういう理由であれを置いてみたところ、売れた/売れなかった」などという話を、昔は結構聞きいたものだ。そのため、スカートが売り場にないのであれば、この店舗を利用するお客様が「スカートを穿かない」という傾向を示す何らかの根拠があると、まずは考えたのだ。

で、答えはこうだった。

「いえ、仕入れていないんです」

その後2~3のやり取りをしたが、少なくともわたしに答えてくれた店員さんは、スカートを仕入れたほうがよいと感じているようだった。が、仕入れの責任者は、スカートを仕入れる必要性はないと考えているらしい。

たしかにごく最近まで、スカートはパンツに比べて、全般的に売れていなかったような気がする。たとえばユニクロにしても、ごく最近でこそスカートが何種類か出てきたけれど、一時はスカートはほとんどなかった。

それに、ひょっとしたらスカートはパンツ以上に、デザインよりターゲットが細分化されてしまって、そのために売るのが難しいのかもしれない。たとえばわたしは仕事においては、膝頭が隠れるぐらいのタイトなシルエットのスカートが好きだが、20代の女性はたぶんこういうスカートはあまり穿かないだろう。わたしがスカート丈40cm~45cmぐらいのものを履いたとしら、もちろんレギンスといっしょに穿いたとしても、非難轟々だろう。

さて、スカートが「あまり売れない商品」である場合、もしかすると、このスーパーお得意の「単品管理で売れ筋のみを大量仕入れて、死に筋(売れない商品)を徹底的に排除」モードへのスイッチが、取り消し不能で入ってしまったのかもしれない。

母がかつてここで婦人服を担当していた時も、このスイッチが入った。ある日、本社の単品管理の研修を受けてきたマネジャーが、その内容に感銘を受け、「売れ筋の1位から3位で売り上げのほとんどを占めているんだから、それだけを並べておけばいいんだよ」と、ひとつの商品カテゴリー(ブラウスならブラウス、スカートならスカート)の売れ筋の上位3種類の色違いとサイズ違いだけを取り扱う方向に持っていこうとしたらしい。また、高額商品はあまり売れないため、安い商品のみを扱う売り場構成にしようとしたらしい。

これに対しては母は猛烈に抗議した。「婦人服売り場には夢が必要だ。たとえそれほど売れなかったとしても、ある程度の種類は置いておくべきだ。そうすればお客様は『ここへくればこんなにいろんな種類のものがあるんだ』と思って、足を運んでくれる。そして1点でもいいから良いものを置いておけば、実際には買わなかったとしても、お客様は『このお店は良いものも扱っているんだ、と認識してくれる。この認識がお客様の足をこの店に向けさせて、結果的には選んだものが安いものであろうと、少なくとも何かを買って行ってくれる可能性が高くなる。ひょっとすると、高いものも買っていってくれることもあるかもしれない。」

本社の当時の新たなカリスマ社長対1パートの持論では勝ち目はなかったらしいが、母の言ったことには一理あるだろう。あれだけの売り場面積を持ちながら、スカートを1枚も置いていないような店舗には、わたしは足を運ぶ気にはならない。

そこで、イトーヨーカドーには「お客様の声ボックス」があったはずなので、そこに「スカートを置いてほしい」との意見を投函しようと思い店内をウロウロしたが、このボックスの場所が分からない。たしか以前はかなり目につく場所にあったのだが… 店員ををつかまえてお客様ボックスの場所を聞こうかとも思ったが、「クレームをつけたがっている」と思われるかもしれない。それも嫌なので、いろいろ考えた末に結果的には何もせずそのまま帰ってきた。

ちなみにダイエーでは、結構な量と種類のスカートが販売されているのだが、これはダイエーが頑張って努力をしているためなのか。それとも単に管理が甘いのか。


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追記:2009.05.18

なんだかものすごく、タイミングが良い新聞記事かも…

サマースカート販売目標、9倍増を計画 ユニクロ


ユニクロは18日、発売中の女性用「サマースカート」の販売目標を、昨年の9倍に増やす計画を打ち出した。女性向けの衣料販売を強化する取り組みの一環という。

2009/05/18 asahi.com