巣窟日誌

お仕事と研究と私的出来事

最近の英語モデルの電子辞書について

2009-05-04 02:03:00 | 英語
以前、電子辞書を買い替えようとしていたのに、衝動的にナノケアイオンスチーマーを買ってしまったことについて、このブログに書いたことがあります。(「電子辞書を買い替えるつもりだったが、買ってしまったものは…」) あの選択にはこれっぽっちも後悔はしていません。わたしの肌は「待ったなし」のひどい状態だったからです。

んが、「もう少し我慢できるだろう」と思っていた電子辞書については、先々週末ついに「限界だぁ!」と思う事態に直面してしまいました。何があったのかは省略しますが(要するに言いたくない)、仕事がらみでちょっと困った事態になってしまったわけです。

こうなったからには、さっさと辞書を注文です。といっても、店舗だと目映りして何が何だかわからなくなるので、基本的なハード面のつくりを店頭でざっとチェックし、その後にネットで機能だの価格だの、使用者のレビューだのをチェックです。もちろん、わたしの周りにいて、似たような仕事をしている人たちに電子辞書のお勧めも聞いてみます。というのは、彼らは常により良い電子辞書を探しているからです。

わたしが仕事で英語を使用しなければならないのは、「仕事でコミュニケーションのために英語を使う」という状況と「英語そのものが仕事になっている」という状況の2種類です。電子辞書を作っているメーカーはわたしの知る限りでは4社ですが、英語コンテンツが充実した電子辞書といえば、いまのところ選択の幅は事実上2社のお値段が高めの電子辞書に限られているということは、御同輩の方々には周知の事実だと思います。この2社とはセイコーインスツル(SII)とカシオのエクスワードです。

結論として、今回はカシオのエクスワード XD-GF10000を購入したのですが、購入のために、全部で6種類ほど検討しましたので、それらを主にコンテンツ面からみていきたいと思います。
今回、候補として検討したのは、以下の6機種です。

  • カシオ エクスワード XD-GF10000 (総合モデル)

  • カシオ エクスワード XD-GF9800 (外国語モデル 英語プロフェッショナル向け)

  • SII SR-G10001 (英語モデル、英語プロフェッショナル向け、PC接続)

  • SII SR-G10000 (英語モデル、英語プロフェッショナル向け)

  • SII SR-G9001 (英語モデル、英語を使うビジネスマン向け、PC接続)

  • SII SR-G9000 (英語モデル、英語を使うビジネスマン向け)


SIIの電子辞書のうち、英語そのものが仕事になっている英語屋、もとい、「英語のプロフェッショナル」向けなのは、SR-G10000またはSR-G10001です。また、仕事で英語を結構使うビジネスパーソン向けにはSR-G9000またはSR-G9001、英語を使う法務や財務の担当者向けにはSR-G8100、英語を使うエンジニア向けにはSR-G8000といった具合になっています。エクスワードはそれほど細分化されてはいません。


□□□コンテンツ□□□

コンテンツについての全体的な印象は、SIIは必要なものだけを入れて必要ないものを入れない引き算の世界、それに比べてエクスワードはいろいろと役に立ちそうなものを入れていく足し算の世界になっているようです。

■ 日本語の辞書

外国語モデルの辞書では、日本語の辞書も充実していてくれなくては困ります。特に翻訳が発生する場合はそうです。翻訳が仕事の一部になることがありますが、翻訳は後々までモノが残ってしまいますので、ひとつひとつの言葉に細心の注意を払わなければなりません。(通訳では、ひとつひとつのことばに、注意を払わなくてもいいという意味ではありません。)

その意味で、わたしとしては、基本の日本語の中に岩波書店の『広辞苑』か、三省堂の『大辞林』(電子辞書版は『スーパー大辞林』)が入ってほしいと思います。『デジタル大辞泉』(小学館)ファンの方、ごめんなさいね。ここでわたしの選択肢からは、エクスワードXD-GF9700とSIIのSR-G10000は外れます。

加えて漢和辞典は必須で、次に日本語のシソーラス(類語辞典)もできればあったほうがよいです。今回購入を検討したモデルでは、漢和辞典はどれにも入っていますが、シソーラスはどちらかといえば上位モデルのほうにのみ入っています。また、XD-GF10000にしか入っていなかったのですが、『数え方の辞典』のような辞典も、和訳のときには役に立ちます。たまに「工場の数え方って?」「この場合、ズボンは『本』で数えるべきか『枚』で数えるべきか?」のような状況が発生するからです。


■ 日本の出版社の英和・和英辞典

日本の出版社が使う英和・和英の辞書については、今回検討したクラスのものはすべて大辞典を入れていますが、電子辞書に使用されている大辞典は大体決まっています。必ずしも優秀な辞書なので選ばれたというわけではなく、出版社側のデジタル化に対する方針もあるのでしょう。

英和でいえば、まずは研究社の『リーダーズ』と『リーダーズ・プラス』。この2つは比較的早くから英語モデルの電子辞書に採用されています。大修館の『ジーニアス英和大辞典』を入れたものが、現在のところ「かなり英語を使う人」の向けようです。SIIのSR-G10001とSR-G10000とには、これに研究社の『新英和大辞典』にが加わります。

通訳・翻訳にかかわっている人の何割かの人が「入れておいてほしい」と思っている大辞典は、小学館の『ランダムハウス英和大辞典』です。わたしが狭い範囲で聞いた中でも『ランダムハウス』の存在ゆえに、購入検討に値する機種はこの2種類しかないと言い切った人が3名いましたし、わたしもできれば入っていてほしいと思いました。この『ランダムハウス』が入っているのは、エクスワードのXD-GF10000とSIIのSR-G10001です。

では、和英はどうでしょうか。

電子辞書のコンテンツの日本の出版社による和英辞典は、英和辞典とくらべるとそれほど充実していません。概して英語モデルでは、研究社の『新和英大辞典』と小学館の『プログレッシブ和英中辞典』の、2種類のうちの両方、または片方が採用されています。英和大辞典が4~5種類というのと比べると、かなりさびしいものです。しかしこれでも、英語モデルの和英が『ジーニアス和英中辞典』だけだったころから比べると、各段の進歩です。(5年前の記事「英語用電子辞書への一考察」を参照。)『ジーニアス』の中辞典は英和のほうはすばらしいのですが、和英については、編集した方には申し訳ないのですが「この辞書で事足りる人がいたら、その人こそが『ジーニアス』だ!」と言いたくなってしまいます。

この和英辞典のコンテンツですが、「上位機種だから2種類とも入っている」というものではないので、注意が必要です。たとえばメーカーのサイトで見る限りでは、SIIでは英語屋さん向けSR-G10001、SR-G10000には『新和英』のみ、英語を使うビジネスマン向けのSR-G9001は『プログレッシブ』のみが入っています。が、SR-G9000は、なぜか両方を搭載しています。CASIOは、XD-GF10000とXD-GF9800とも両方を入れています。

あくまでも主観ですが、最近のよくできた和英中辞典は、日常的な英語でかなり力を発揮します。それは自分自身の言葉として使うときも、他人の言葉を伝えるような通訳・翻訳のような時も、です。その意味で、上級モデルであっても、中辞典は外してほしくないと考えます。『プログレッシブ』、研究社の『ルミナス』、学研の『スーパーアンカー』、そして三省堂の『ウィズダム』あたりが使える和英中辞典でしょうか。『プログレッシブ』はよくできた和英中辞典としての定評があり、わたし愛用しています。つまり『プログレッシブ和英中辞典』が入っていない辞書は、選択からはずしました。




■ 海外の出版社の英語辞書

次に、海外出版社系の英語の辞書を見てみましょう。

メインの英英辞典は大辞典1種類に加えて、1種類から数種類の学習英英(英語がネイティブではない人向けの英英辞典)です。目下のところ、電子辞書の大型の辞典の標準仕様は、『オックスフォード英英辞典(Oxford Dictionary of English)』のようですが、学習英英については『オックスフォード現代英英辞典(Oxford Advanced Learner’s English=OALD)、『コリンズ コウビルド英英辞典(Collins COBUILD Advanced Learner's English Dictionary)』、『ロングマン現代英英辞典(Longman Dictionary of Contemporary English=LDOCE)』のどれかを採用しているものが多いです。『マクミラン英英辞典(English Dictionary for Advanced Learners)は、電子辞書にはないのかな? 余談ですが、これらの学習英英の日本語タイトルは日本での販売名にならいましたが、どれも "Learner" って単語をわざと訳していませんね。マーケティング上の理由なんでしょうが。(何いってんのよ。人間はみな一生Learnerなんだから、わざわざ消すことないじゃないの!)

大型辞典の『オックスフォード英英辞典』は、昔は『オックスフォード新英英辞典(New Oxford Dictionary of English=NODE)』と呼ばれていたものの新版です。英文学・英語学研究者が必要とする、紙で20巻+3巻もののOED(『オックスフォード英語辞典』(Oxford English Dictionary))とは別物です。OEDはCD-ROMだと1枚に収まるらしいのですが、このCD-ROMが1枚で数万円ですから、これを電子辞書に入れたら、電子辞書の価格が跳ね上がり、しかし使用者は限られている…ということになるので、OEDは「英文学研究者モデル」でもない限り、電子辞書のコンテンツには入ってこないと思います。

学習英英でコウビルドがほしければSIIから購入するしかなく、一方、ロングマンがほしければエクスワードになります。わたしは、大学時代にLDOCE(エルドスと読む)の活用本を書いた先生のもとで授業を受けたため、学習英英はコレで刷り込まれています。(あなたのことですよ、名和先生。)で、ロングマンを採用していないSIIはすべて外れてしまいました。でも、実はコウビルドは非常に優秀です。

英語モデルの電子辞書には、海外出版社系の辞書は英英のほかに、シソーラス、イディオム(慣用句)、連語(collocation)、を中心に、句動詞(phrasal verbs)を中心にSentence Dictionaryだの活用辞典だの、といったいろいろな辞書が付いてきます。これらはあれば便利だとは思っても、実際にはなかなか単体で買うことがないものなので、勝手についてきてくれると、私としてはそれはそれでありがたいです。ここで、コウビルド+オックスフォード系がお好みならSIIを、ロングマン+オックスフォード系がお好みならエクスワードという選択になりますが、同じメーカーでも機種により、採用しているものが微妙に異なります。

また、英語辞典(ここではイギリス英語)と米語辞典(アメリカ英語)を別々につけるか否かという問題に関しても、今回検討した6種類では、それぞれ少しずつコンセプトが異なるようです。


□□□機能面・操作性□□□

わたしの場合、操作性は「反応が遅すぎる」「キーがあまりにも打ちにくい」といった場合を除き、それほど重視していません。ここでいろいろと書いているわりには、実際はそれほど電子辞書を使わないためです。自分で英語を書いたり翻訳をしたりする場合には、まずはオンライン辞書に頼ることが多いです。ある単語やイディオムを深く掘り下げて探したいときや、文法面のダブルチェックのために電子辞書を使うことが多く、電子辞書にもとめるのは「詳しい説明」が第一です。そこで自然とコンテンツ重視になります。

というわけで機能面は、簡単にまとめます。

「使い勝手」という面では、SIIのほうが良いと思います。個人的にはキーの形はSIIのほうが好みですし、画面もSIIのほうが見やすいです。エクスワードは一般的に画面が暗めで、そのため暗い所でなくてもバックライトを使っている方も結構いるでしょう。わたしはこれまで使ってきたのがエクスワードだったためそれほどは気になりませんが、SIIの最新機種を使っている方がエクスワーをいじったら、まずは視覚的にイライラすることが多いかもしれません。

画面表示がきれいになればなるほどそれだけパワーが必要なのかどうか、SIIは基本は付属のリチウムイオン充電池に充電する方式です。SR-G10000、SR-G9000については、辞書を長時間使用する人のためにAC電源が付属していますが、乾電池は使えません。電子辞書を持ち歩く人で、充電を忘れがちな人には、市販の乾電池が使えなというのはちょっと厳しいと思います。SR-G9001は補助電源として乾電池が、SR-G10001は乾電池とニッケル水素電池が使えるようになっています。エクスワードは乾電池が基本で、ニッケル水素電池では特にエネループ指定です。わたしはいままでエクスワードの旧機種を何も考えずにトラブルもなくエネループで使っていたのですが、ニッケル水素電池では電子辞書では不具合がでることもあるらしいです。(ちなみに、SR XD-GF10000は電池を入れたときに、乾電池を使っているのか、エネループを使っているのかを設定する画面が出てきます。)

SIIにあってエクスワードにないものはパソコン接続とそれによる拡張機能、逆にエクスワードにあってSIIにないものはタッチパネルということになります。パソコン接続については、実際に使っていないので何とも言えませんが、タッチパネルについては好みの問題だと思います。ただ、SIIのようにコンテンツを絞り込んだ辞書は、タッチパネルはそれほど必要なさそうです。エクスワードの上位機種のようにコンテンツを闇鍋のごとく詰め込んだ辞書の場合には、他のコンテンツに素早く移動するためにはタッチパネルが便利です。

レスポンスは7年前のエクスワードのXD-R9000との比較になってしまいますが、さすがに、最近の電子辞書は1つの辞書(つまりたとえばランダムハウスだけで検索する)場合のレスポンスは、かなり早くなっています。今回購入したXD-GF10000については、複数辞書にまたがる検索については、結果が返されるまでに微妙な間が生じます。これは通訳や、大至急の翻訳で使用するには、少々ストレスがかかる間だと思います。

しかし、90年代前半ぐらいまでは、通訳でも翻訳でも、紙の辞書をめくっていたのです。出先で通訳や翻訳をする人たちは、常に分厚い英和と和英と専門辞書、と大量の関連資料を鞄の中にいれて移動しなければならなかったはずです。それを考えると隔世の感がありますね。



ちなみに、アマゾンでポチりました。

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