手帳やダイアリーの話を書こうとしたが、まずその前に時間の観念の話を書くべきたと思った。というのは、ある種の手帳は、その手帳がつくられた文化の時間の観念をもとに作られているからだ。
異文化コミュニケーションの世界では、「時間の観念は、それぞれの文化に固有なもの」とされている。(もちろん同じ文化でも個人差はあるが、全体的な傾向はある。)時間の観念の分類にはいろいろな尺度がある。例えば、「長期志向・短期志向」とか、「過去志向・現在志向・未来志向」などである。
この記事でとりあげるMタイム(M-time)、Pタイム(P-time)というのも、こういった時間の観念の分類のひとつだ。これは文化人類学者、エドワード・ホール (Edward T. Hall) が"Beyond Culture" (『文化を超えて』)で取り上げたものだったと記憶している。("Beyond Culture"の表紙の絵が、日本人にとって中身の信頼性に影響を与えかねないものであることは、残念だ。怪しい表紙だ。)
MタイムはMonochronic Time(単一的時間)の略である。Mタイムの時間観念を持つ文化の人間は、物事というものは1つずつ順番に起こると考える傾向がある。行動パターンとしては、一度にひとつのことのみに集中する。
PタイムはPolychronic Time(多元的時間)の略である。Pタイムの時間観念を持つ文化の人間は、複数のことが同時に起こるものだと考える。行動パターンとしては一度に多くのことをする。(おお、マルチタスク。)「タイミングがよい」、「チャンスが巡ってくる」と考える人間は、このPタイムの時間観念を持つ人間に多い。
MタイムとPタイムでは、スケジュールと人間関係において、反対の考え方をもつ。Mタイムの人間はスケジュールを人間関係に優先し、Pタイムの人間は人間関係をスケジュールに優先する。
まとめてみるとMタイムの人間の行動と考え方は:
それに対してPタイムの人間の考え方と行動は:
さて、M時間・P時間に基づく日本人の時間の概念はどうだろう。
「日本人は時間に正確」といわれる。でもこれは、一見正確なだけのことだ。9:30am~11:00amまでの予定だったミーティングは、進行状況によっては11時を30分過ぎても終わらないかもしれない。無理やり、1時間半で終了させようとすると、検討課題として次回に再討議という議題が出てきたり、別途ノミニケーション等のインフォーマルな接触で情報交換をしなければならなくなる状況も生まれうる。
これがアメリカ人のビジネスマンとの会議だったら、議題が3つある11:00amまでのミーティングは絶対に11:00amまでに3つを議論して、決定事項を出さなければならないプレッシャーにさらされる。会議の始めに「終了時間は11時、議題は3つ」と明言して、時計をにらみながら議事を進行していく。米国のビジネスは、厳密なM時間で進む。
一般的に英語圏はM時間、アジア、ラテンアメリカ、アラブ世界などはP時間といわれている。日本人は、表面上はM時間だが実は根は人間関係重視で、相手に時間を与えてナンボのP時間なのだと思う。そりゃあ相手の話の途中で「失礼、次のアポイントメントがありますので…」と引き上げてしまったら、先様との関係を悪くするだけだ。取引先になりそうな会社の社長の自慢話は、自分がいかに忙しくても予定していた時間を時間を超過しても、耳を傾けてあげないと、「こいつはなかなかの好青年だから、ひとつ注文をまわしてみようか」とは、思ってくれなさそうだ。
ところで、なぜ手帳とダイアリーの前にこの話を書いたのかというと、わたしの使っている手帳のひとつがフランクリン・プランナーだからである。使っている方はおわかりの通り、このプランナーはM時間の観念をもとにつくられている。しかし、日本人の根っこにP時間があるとすると…
では、手帳の話は次の記事で…
異文化コミュニケーションの世界では、「時間の観念は、それぞれの文化に固有なもの」とされている。(もちろん同じ文化でも個人差はあるが、全体的な傾向はある。)時間の観念の分類にはいろいろな尺度がある。例えば、「長期志向・短期志向」とか、「過去志向・現在志向・未来志向」などである。
この記事でとりあげるMタイム(M-time)、Pタイム(P-time)というのも、こういった時間の観念の分類のひとつだ。これは文化人類学者、エドワード・ホール (Edward T. Hall) が"Beyond Culture" (『文化を超えて』)で取り上げたものだったと記憶している。("Beyond Culture"の表紙の絵が、日本人にとって中身の信頼性に影響を与えかねないものであることは、残念だ。怪しい表紙だ。)
MタイムはMonochronic Time(単一的時間)の略である。Mタイムの時間観念を持つ文化の人間は、物事というものは1つずつ順番に起こると考える傾向がある。行動パターンとしては、一度にひとつのことのみに集中する。
PタイムはPolychronic Time(多元的時間)の略である。Pタイムの時間観念を持つ文化の人間は、複数のことが同時に起こるものだと考える。行動パターンとしては一度に多くのことをする。(おお、マルチタスク。)「タイミングがよい」、「チャンスが巡ってくる」と考える人間は、このPタイムの時間観念を持つ人間に多い。
MタイムとPタイムでは、スケジュールと人間関係において、反対の考え方をもつ。Mタイムの人間はスケジュールを人間関係に優先し、Pタイムの人間は人間関係をスケジュールに優先する。
まとめてみるとMタイムの人間の行動と考え方は:
- 一度にひとつのことだけに集中する
- 相手との関係よりもスケジュールを優先する
- 予約は厳密に守る。あらかじめスケジュールをいれ、遅れずに行なう
- 物事が最初の計画どおりに進むことを好む
それに対してPタイムの人間の考え方と行動は:
- 二つ以上のことを平行して行なう
- スケジュールよりも相手との関係を優先する
- 予約はアバウトなものであり、重要な相手に「時間を与える」ことのほうを優先する
- 相手との関係がもたらす結果に従うのを好む
さて、M時間・P時間に基づく日本人の時間の概念はどうだろう。
「日本人は時間に正確」といわれる。でもこれは、一見正確なだけのことだ。9:30am~11:00amまでの予定だったミーティングは、進行状況によっては11時を30分過ぎても終わらないかもしれない。無理やり、1時間半で終了させようとすると、検討課題として次回に再討議という議題が出てきたり、別途ノミニケーション等のインフォーマルな接触で情報交換をしなければならなくなる状況も生まれうる。
これがアメリカ人のビジネスマンとの会議だったら、議題が3つある11:00amまでのミーティングは絶対に11:00amまでに3つを議論して、決定事項を出さなければならないプレッシャーにさらされる。会議の始めに「終了時間は11時、議題は3つ」と明言して、時計をにらみながら議事を進行していく。米国のビジネスは、厳密なM時間で進む。
一般的に英語圏はM時間、アジア、ラテンアメリカ、アラブ世界などはP時間といわれている。日本人は、表面上はM時間だが実は根は人間関係重視で、相手に時間を与えてナンボのP時間なのだと思う。そりゃあ相手の話の途中で「失礼、次のアポイントメントがありますので…」と引き上げてしまったら、先様との関係を悪くするだけだ。取引先になりそうな会社の社長の自慢話は、自分がいかに忙しくても予定していた時間を時間を超過しても、耳を傾けてあげないと、「こいつはなかなかの好青年だから、ひとつ注文をまわしてみようか」とは、思ってくれなさそうだ。
ところで、なぜ手帳とダイアリーの前にこの話を書いたのかというと、わたしの使っている手帳のひとつがフランクリン・プランナーだからである。使っている方はおわかりの通り、このプランナーはM時間の観念をもとにつくられている。しかし、日本人の根っこにP時間があるとすると…
では、手帳の話は次の記事で…