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映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

マギーズ・プラン

2017年02月11日 | 洋画(17年)
 『マギーズ・プラン―幸せのあとしまつ―』を渋谷シネパレスで見てきました。

(1)『ブルーに生まれついて』で好演したイーサン・ホークが出演しているというので、映画館に行ってきました。

 本作(注1)の冒頭の季節は冬。場所はニューヨーク。
 主人公のマギー(注2:グレタ・ガーウィグ)が通りを歩いています。
 盲人が道路を横断しようとしているのを見て、マギーは彼の腕を取って渡ります。

 次いで、ベビーカーに子供を乗せて立ち止まっている男(マギーの元彼のトニーで、職業は弁護士:ビル・ヘイダー)を見つけて、マギーは「ごめん、ごめん、遅れちゃった」と言い、ベビーカーに乗っている子供に向かって、「ハーイ、マックス。赤ちゃんの臭いがまだこんなにも」と言います。

 続けてマギーが「私も産みたいな」と言うと、トニーが「父親は?」と応じますが、それに対しマギーは、「でも6ヵ月以上関係が続いたことはないの」と答えます。
 トニーが「僕とは2年間一緒だった」とつぶやくと、マギーは「それは大学時代のこと。それに最後の方は、お互いに悲惨だった」と応じます。

 さらにトニーが「僕は、精子を精子バンクに預けている。万一の際の保険にいいかもと思って」と言うと、マギーは「フェリシア(トニーの妻:マーヤ・ルドルフ)は子供を増やしたくないのでは?」と言い、さらに「大学の時のガイトラヴィス・フィメル)を覚えている?昔は数学の大学院に行っていたけど、今はピクルス屋を営む企業家。彼の精子をもらって、自分で注入してみようと考えている」と付け加えます。
 それに対しトニーは、「彼の性格まで遺伝しないように。それに、そんなことは49歳位の女が考えつくことじゃあないのか?」と疑問を呈します。
 マギーは、「私は母親になりたいだけ。私については、お互いに愛し合う関係が半年以上続くとは思えない。こうするのは、そういう自分を直視した結果なの」と答えます。

 次いで、マギーは、ひょんなこと(注3)から大学事務局でジョン(文化人類学を教える非常勤講師:イーサン・ホーク)と知り合い、そこからジョンの妻だったジョーゼット(コロンビア大学の教授:ジュリアン・ムーア)をも巻き込む話が展開するのですが、さあどうなるのでしょう、………?

 本作は、妻子ある男と深い関係になってしまった若い女が、その男の元妻のことを偶然に知るに至り、さらに自分もその男から心が離れてしまったこともあり、彼を元妻のところに戻す計画を実行するというお話。結婚・離婚が簡単に行われているとされるアメリカだったら、こんなこともありうるのかもしれませんが、まあ勝手にやってくれとしか思えない浅薄な内容の映画だなと思ってしまいました。

(2)クマネズミが今のアメリカ人の生活をよく知らないためでしょうが(注4)、本作の主人公のマギーの行動がわかりません(注5)。



 上記の(1)でも触れているように、学生時代に2年間も付き合っていたトニーと別れた後も、随分親しげにマギーは彼と話をしています。喧嘩別れをしたわけではないためでしょうが、それにしてもごくプライベートな事をあけすけに話すものです。
 そして、「6ヵ月以上関係が続いたことはない」と言って、精子提供者のガイとは結婚しないものの、イケメンのジョンが現れると、その言は何処へやら、すぐさま結婚してしまうとは!



 これでは、単にガイが嫌いだと言っているだけのことになるでしょう。

 そんなガイにもかかわらず、マギーが彼から精子の提供を受けるというのは、ガイの数学的な才能を見込んでのことなのでしょうか?でも、それでは、人間関係をあまりにも物質的にしか見ていないことになるのでは、と思えてしまいます(生まれた子供から父親のことを聞かれた際には、一体なんて説明するつもりなのでしょう?)。
 そして、マギーは、ガイの精子を使って自分で人工授精をします(注6)。でも、その日にジョンとベッド・インするなんて、いくらなんでも非常識すぎるように思われます(注7)。
 現に、ジョンとの子供と思い込んでいたリリーについて、ラストでは「アレッ?」という感じになるのですから(注8)。

 さらには、ジョンの方もよくわかりません。



 彼は、大学教授の妻・ジョーゼットの仕事の方を優先し、自分はしがない非常勤講師となって、2人の子供ジャスティンポールの面倒の世話をしているのですが、やっぱり自分の時間を確保して書きたい小説を仕上げるとして、ジョーゼットと別れマギーと再婚するのです。
 でも、そんなことで離婚するなんて、結婚を随分簡単に考えているとしか思えません。
 後の話からしたら、ジョンとジョーゼットは喧嘩別れしたわけではなさそうです。
 だったら、夫婦の間できちんと状況を見つめ、これからどうすればいいのか話し合えば、離婚するまでに至らなかったのではないでしょうか(注9)?

 そして、結婚して子供を持てば事態は同じことになるとよくわかっているはずにもかかわらず、ジョンとマギーの間にはすぐにリリーが生まれます。
 こんな状況では、子供たちの方こそ可哀想ですし(注10)、ジョンとマギーの関係が長続きしそうにないのは、誰の目にも明らかでしょう。

 総じて言えば、アメリカならばこんなこともありうるのかなとは思えるものの、まあ皆さん勝手にやってくださいという感じになりました(注11)。

(3)渡まち子氏は、「人間というのは、持ちつ持たれつで成り立っているんだなぁ…と苦笑してしまうお話だが、何とも憎めない小品だ」として60点を付けています。



(注1)監督・脚本は『50歳の恋愛白書』のレベッカ・ミラー

 なお、出演者の内、最近では、イーサン・ホークは『ブルーに生まれついて』、ジュリアン・ムーアは『アリスのままで』で、それぞれ見ました。
 主演のグレタ・ガーウィグは、DVDの『フランシス・ハ』で見ました。

(注2)マギーの職業はアーティスト・コーディネーターで、大学で働いています(この記事によれば、「a career advisor to art and design students」)。

(注3)マギーの方に給与支払い小切手(paycheck)が2通届き、ジョンの方には何も届きませんでした。これは、マギーの正式の名前(Johanna Margaret Hardin)とジョンの正式の名前(John Harding)とが類似していたために、事務局が誤って一人の人間とみなしてしまったことによるものではないか、とマギーはジョンに言います。

(注4)劇場用パンフレット掲載のエッセイ「マギーの“計画”が教えてくれる、幸せと愛についての真実」でライターの佐久間裕美子氏は、「オープニングのわずか数分間で「あ、私達の話だ」とハッとした。頭に浮かんだ「us」(私たち)というのは、ニューヨークのシングル女性のことだ」云々と述べていて、そういう人たちにとって本作は身近な出来事を描いていると思えるのでしょう。でも、遠い日本から、それも男性の目で見ると、とても理解が及ばない感じがしてしまいます。

(注5)尤も、劇場用パンフレット掲載のインタビュー記事において、監督は「マギーはちょっとドジでありつつ、とても聡明なところが愛される理由」などと語っているところからすると、半ば意図的にマギーにおかしな行動をとらせているのかもしれません。
 なお、イギリス映画『ブリジット・ジョーンズの日記』の3部作と較べてみても面白いかもしれません(第3作目に関する拙エントリはこちら)。

(注6)ネットで調べると、セルフシリンジ法(自己人工授精)というものがあるそうです(例えば、この記事)。

(注7)マギーがバスでセルフシリンジ法をやっている最中にジョンが部屋のドアをノックしたために、マギーは慌てまくります。それで、不十分な注入しかできず、これでは妊娠しないと思い込んだのかもしれませんが。

(注8)ラストでは、スケートを楽しんでいたジョンやマギー、リリーのところにガイが現れるのです(リリーは、3歳児にもかかわらず、大きな数字を数えあげ、大人を驚かせます)。

(注9)2人の合意の上で子供を2人も作ったのですから、ジョンが自分の時間がほしいというのなら、現在の家事の負担割合を変更するように話し合えば済むように思われます(ジョーゼットの仕事を優先させたいジョンが考えているとしても、離婚したら、ジョーゼットは2人の子供の面倒を現在以上に見なくてはいけないことになるのですから)。

(注10)別れたとは言え、ジョンは、ジョーゼットとの間の2人の子供ジャスティンとポールの世話も半分は引き受けなくてはなりませんし、その上リリーも加わるのですから、早晩ジョンとマギーの関係がおかしくなるのは目に見えています。

(注11)全くどうでもいい事柄ながら、ジョンは、自分がよばれた人類学の学会に著名な哲学者のスラヴォイ・ジジェクがくるというので興奮しますが、この記事によれば、同氏は、マルクス主義者でもありながらも、トランプ支持のようです!



★★☆☆☆☆



象のロケット;マギーズ・プラン―幸せのあとしまつ―


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4 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (atts1964)
2017-02-13 10:23:51
なかなかウエットな日本人には理解できない作品だと感じましたね。
だから人口減少になってしまう(^^)
子供だけ持ちたい女性が自由に子供を作れる環境にでもしないと、日本は滅びてしまうのかな?
今作を見ながらそんな感じを受けていました。
グレタ・ガーウィグはこういうちょっとあてはまり辛い役が適役、彼女の可能性がさらに開ける作品にも感じました。
こちらからもTBお願いします。
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Unknown (クマネズミ)
2017-02-13 18:41:39
「atts1964」さん、TB&コメントをありがとうございます。
おっしゃるように、本作は、「日本人には理解できない作品」かもしれないなと思いました。特に、中年すぎの男性からすると、本作の登場人物たちは随分とノーテンキなのだなと思えるのではないでしょうか?
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Unknown (ふじき78)
2017-06-25 23:31:52
まあ、こんな事もあるだろうな程度に見てました。

同じマギーなら、マギー・ミネンコさんがどうしてるかの方が気になります(本当はそうでもないけど)。
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Unknown (クマネズミ)
2017-06-26 06:04:33
「ふじき78」さん、TB&コメントを有難うございます。
クマネズミは「マギー・ミネンコ」を知りませんでしたが(マギー司郎くらいしか思いつきません)、下記の記事によれば、彼女はアメリカに戻り、「日系実業家と結婚していて子供が3人」いるとのことです。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11405251
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