映画的・絵画的・音楽的

映画を見た後にネタバレOKで映画を、展覧会を見たら絵画を、など様々のことについて気楽に話しましょう。

アンストッパブル

2011年02月11日 | 洋画(11年)
 『アンストッパブル』をTOHOシネマズ日劇で見てきました。

(1)こうした作品なら、何はともあれ大画面で音響の素晴らしいところと思って有楽町まで出かけましたが、期待どおりでした。何しろ、運転手なしに暴走し続ける貨物列車をストップさせなければ、市街地に突っ込んで積載物が爆発し大惨事になるという設定ですから、映画が終わるまでハラハラドキドキのし通しといった具合になります。

 この映画ではペアの組合せが随分と出てきて、それぞれその内部に鋭い対立を抱えています。
 まず何と言っても、市街地スタントンの方に向かって驀進する無人の機関車777号と、それを後ろから追いかけてドッキングしようとする旧式機関車1206号という組合せ〔2つの機関車はいずれも電気式ディーゼル機関車(ディーゼルエンジンで発電し、電気モーターを回す方式を採用)〕。
 これを十分に描き出すことがこの映画のメインなのでしょうから、他に映画に登場するものがどれもペアの組合せになろうというものです!
 例えば、暴走する機関車777号には、見学の児童が多数乗っている列車というもう一つのペアがあります。列車は777号と正面衝突しそうになりますが、間一髪のところで待避線に滑り込んだため惨事は免れます。
 また、機関車1206号は、ペアを組んでいた長大な貨物車両を切り離して、身軽になって777号を追いかけます。

 列車がメインとはいえ、映画にはやはりヒーローが必要になります。すなわち、旧式の1206号の機関室に乗り合わせたベテラン機関士のフランクデンゼル・ワシントン)と新米車掌ウィルクリス・パイン)との組合せ(注)。
 この組合せは、単なるペアではなく、その中に、黒人と白人、機関士と車掌、ベテラン(勤続28年のフランク)と新米(4ヶ月のウィル)、解雇通知を受けた者と新規採用の者、といった一層深い対立関係を含んでいます。



 さらに、フランクには娘二人がいますし、ウィルも妻と幼児がいますが、それぞれフランクやウィルとの関係がかなりぎくしゃくしています。
 また、会社側をみると、列車指令室には操車場長コニーロザリオ・ドーソン)が、会社の会議室には運行部長がいます。コニーはフランクの言い分を受け入れますが、運行部長は、会社上層部の意向を慮ってフランクの言い分を受け入れようとはせず、二人は激しく言い合います。
 加えて、元々777号の暴走を引き起こした操作ミス(ブレーキをかけ損なった)に絡むのが男性2人組みなのです。

 こうした様々な二項的な組合せ、対立関係を描き出すことで、単なる機関車の暴走という次元を越えて、物語に厚みが出てきていると思われます(暴走する機関車をストップさせることに皆が必死になる中で、いくつかの対立は解消に向かっていきます)。

 ですが問題点もあると思われます(以下は完全にネタバレになります)。
イ)1206号が暴走する777号に追い付いても、ブレーキの役割が果たせなかったわけですから、連邦の職員が理論的には大丈夫だと請け合った方法は役に立たなかったことになるのではないでしょうか?にしては、その職員の態度が格好良過ぎる印象を受けました。

ロ)最後の手段として、フランクは、個々の車両についている手動ブレーキを使うことにしますが、その際貨車の天井やタンク車の上部を駆け抜けます。ただ、そんな危険なことが可能であれば、777号のスピードはそれなりに落ちてきているはずですから、ヘリコプターを使って、もっと何人もの関係者を貨車に送り込めるのではないでしょうか?



ハ)最後の方で、ウィルが、機関車に伴走している車に一度飛び降り、それから777号に飛び乗りますが、彼は足を酷く負傷しているはずですから、何も彼でなくともよかったのではないでしょうか?
 むしろ元気な機関士を車に乗せて、777号に飛び移らせた方が現実的ではないかと考えられます(それに、飛び移れるくらいなら、ヘリコプターで空中から飛び乗れるのでは、などと思ってしまいますが)。

 とはいえ、あくまでも、生き物のように暴走する機関車と、フランクとウィルの英雄的行為をクローズアップするのがこの娯楽映画の大きな狙いでしょうから、そんなつまらないことに拘らないで、ハラハラドキドキすれば十分ではないでしょうか。

(2)暴走する列車という点に関しては、さすがに、ブログ「映画のブログ」においてナドレックさんが、実際には企画だけで流れてしまった黒澤明監督の『暴走機関車』に触れておられますが(注)、暴走するものを何とかしてストップさせるということに関してなら、『スピード』(1994年)があるかもしれませんし、また執念深く追いかけてくるトレーラーを描いた『激突!』(1973年)も、最後の最後まで手に汗握る暴走物と言えるのではないでしょうか?


(注)参考文献としては、「映画のブログ」の注で挙げられているものの他に、田草川弘著『黒澤明vs.ハリウッド』(文藝春秋.2006年)P.48~P.62があります。

(3)渡まち子氏は、「物語はさまざまな方法で列車を止めようと試みるフランクとウィルの八面六臂の活躍を活写。そこまでするか?!の無謀な作戦も含めて、手に汗握る展開だ。残念なのは、フランクとウィルの家庭のトラブルがチラリと描かれるが、これがあまり効果的ではなく、かえってスピード感を削いでしまったこと。しかし、2人をサポートする操車場長コニーを演じるロザリオ・ドーソンと、デンゼルたち2人の場面の切り替えが、アクション映画に人間性をプラスする効果を与えていた。それにしても、こんな恐ろしいことが実際にあったとは。乗客がいたらどれほどの惨事だったかと思うとゾッとする」として60点を与えています。



★★★☆☆





象のロケット:アンストッパブル

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31 コメント

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コメント&TBありがとうございます (ナドレック)
2011-02-12 09:11:41
 こんにちは。
 拙ブログをご紹介いただき恐縮です。
 本作に限らず、突っ走る乗り物は映画向きの題材ですね。『スピード』しかり『激突!』しかり。
 ただ、『スピード』のバスや『激突!』のトレーラーは人間によって走らされますが、本作の列車は人間の手を離れてしまっているのが、相違でしょうか。
 『暴走機関車』に関して白井佳夫氏が『機械文明のシンボルである蒸気機関車が人間のコントロールを失って暴走する。これは原水爆のテーマにもつながってくる』と語っていたのが印象的です。

P.S.
 フランクの勤続年数28年のところが8年になってますよー。
トラバありがとうございます! (愛知女子)
2011-02-12 09:26:14
クマネズミさん、こんにちは。こちらの映画に対するクマネズミさんの突っ込みが笑えました。観ている時は、はらはらドキドキ夢中です。見終わってホッとした後に、あのハプニングは有り得ないのでは…。と可笑しくなりますね。それがまた、話の種になり、大いに盛り上がります。なかなか迫力がありました。こちらからもトラバ送らせていただきます。ブログ同士の機能の問題なのか、こちらからはいつも返信しか使えず申し訳ないです。
ではでは

Unknown (リバー)
2011-02-12 10:08:00
TB ありがとうございます

シンプルな面白さで
約2時間 ハラハラして楽しめました

「サブウェイ」が私的に残念な出来だっただけに
今作は 良かったですね
お礼 (クマネズミ)
2011-02-12 11:18:01
ナドレックさん、こちらのつまらないコメントにわざわざ返信していただいたばかりか、ブログ本文を子細にお読みいただき、重要なミスを見つけて下さり、誠にありがとうございます。
Unknown (hychk126)
2011-02-12 14:05:58
TBいただき、はじめておじゃまします。hychk126です。

『アンストッパブル』はクマネズミさんもご指摘のような突っ込みどころが少なくありませんが、年明け早々爽快に「アメリカ映画はやっぱり信用できる」と思わせてくれた貴重な一本です。

こちらの記事で触れておられる『暴走機関車』と無理矢理比較すると、A.コンチャロフスキーよりもトニー・スコットの方が遥かに優れた映像作家だと思いますが、巨大な列車をパノラミックに見せてくれた点ではコンチャロフスキーのほうがよりサービス精神があったかもしれません。
Unknown (ほし★ママ)
2011-02-12 18:31:03
こんにちは~。
スピードと止め方には一緒に観た夫も大いに突っ込んでいました。
でも、鑑賞後スッキリ爽快!!楽しめました。
組み合わせを対比させていくクマネズミさんのレビュー、さすがです。
コニーの「困った事」発言にも、つながって行きますね。
私からもトラバを送らせて下さい。
映画擁護 (ふじき78)
2011-02-12 21:25:53
※※※このコメントもネタバレです。※※※

二つばかし。想像力で擁護します。

最後、ヘリでもう一回TRYに関しては、脱線器で止まってる筈だったので、煩雑な手続きが必要なヘリの用意が急ぎではできなかったのでは。後、一度失敗をマスコミに撮影されてるから逃げ腰だったからかも。

ウィルじゃなくても、は単に現場にいた機関士が彼しかいなかったからでは。
チョット拍子抜け (クマネズミ)
2011-02-12 22:11:22
「ふじき78」さん、TB&コメントをありがとうございます。
クマネズミの拙い突っ込みに対する擁護論をいただきましたが、ヘリの件については、こういう緊急時には、アメリカのことですから手続きは簡略化されるのではと思いますし(それにしても、マスコミのヘリがうるさく飛び回っていましたから、それを交通整理する事が先決でしょうが)、また会社の溜まり場で暴走列車の模様をテレビで見ている機関士ばかりでなく、ウィル以外にもモウ一人くらいは正義感の持ち主がいて、車で列車を追いかけているのではないでしょうか(また、そういうようにコニーが手配するのでは)?〔単なる想像に過ぎませんが!〕
ヘリと機関士 (ふじき78)
2011-02-14 23:47:14
ヘリは重役がGOサインを出さないと発進できないから。みんな嫌でしょ。あんな注目されてる中、GOサイン出すの(一回失敗してるから成功の保証はない)。

ラスト近くになって「えっ、あの人まだ」ってざわつきました。他の路線区の人とバトンタッチもせず、人材不足だなあ。リストラがかかってるから正義感の持ち主は難しいかも。
現地対策本部 (クマネズミ)
2011-02-15 05:41:04
常識的にはこんな非常時には、公的な機関(警察、軍隊など)が、周辺住民の避難のみならず、列車運行まで指揮すべく「対策本部」が現地に設置され(機関車の暴走に関する情報は、当然に運輸当局等に通報されているはずですから)、様々な非常手段が採られることとなり、ヘリなどもドンドン許可され、さらにはウィルに代わって飛び乗ろうとする英雄志願者(当該会社の職員以外にも)が何人も名乗りをあげるのではないでしょうか?
なお、ヘリの失敗は、機関車のスピードがもっとある時でしたから、かなり減速されている状況下では、ヘリからの飛び乗りはそれほど困難ではないとも考えられますが?

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