孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  ムガベ大統領「私を解任できるのは私を指名した神のみだ」

2008-06-21 13:38:29 | 国際情勢

(上機嫌で談笑するムガベ大統領(左)、ヨーロッパ最後の独裁者とも呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領(中央)、ご存知ベネズエラのチャベス大統領(右) 役者がそろっています。 06年の国際会議での写真 “flickr”より By ethanz http://www.flickr.com/photos/ethanz/249250325/)

【神の指名】
これまで何回か経済崩壊、ムガベ大統領の強権政治、不正が懸念される大統領選挙について取り上げた南部アフリカ・ジンバブエ。
(最新ブログでは6月6日 http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080606

そのムガベ大統領が演説で「(対立野党である)MDCがこの国の政権を握ることは永遠にない。わたしを解任できるのは、MDCでも(旧宗主国の)英国政府でもなく、わたしを指名した神のみだ」と述べたそうです。
誰でもおかしいと思うように、明らかなすり替えがあります。
ムガベ大統領をかつて指名したのは“神”ではなく“国民”です。(前回選挙も疑念がもたれていますが・・・)
その“国民”が選挙でMDCを指名すれば当然に交代しないといけない・・・自明のことです。
その“自明のこと”が履行されないというのがジンバブエの現実です。

【対立野党への弾圧】
大統領選挙の決戦投票は今月27日に迫っていますが、19日には対立野党MDCのナンバー2でもあるテンダイ・ビティ事務局長が国家政権転覆罪などで訴追されました。
有罪の場合は死刑となる可能性もあります。
ビティ事務局長は3月29日に行われた下院選・大統領選において、投票結果を不正に操作する計画の詳細を含む書類を作成したという国家政権転覆罪をはじめ、選挙での不正や「大統領が邪悪な人間であるかのように見せたこと」など4つの罪に問われているそうです。【6月20日 AFP】
選挙結果の不正操作は大統領サイドが行っているのでは・・・というのが大方の疑念ですが。

また上記記事によると、人権団体アムネスティ・インターナショナルは“ジンバブエ各地で12人の遺体が見つかり、その大部分は「拉致犯による拷問で死亡した」とみられる”との声明を発表しています。
アムネスティは、被害者を拉致したのは与党支持者とみられ、政府当局者とみられる武装集団が付き添っているケースもあったとしています。

【南ア 連立を提案】
こうした混迷状態のなかで、地域大国でもある隣国の南アフリカ・ムベキ大統領は、ムガベ大統領と対立候補であるMDCのツァンギライ議長の両候補と相次いで会談し、大統領選の決選投票を中止し、与野党の統一政権を組むよう提案したそうです。【6月19日 朝日】
南ア・ムベキ大統領は南部アフリカ14か国で作る南部アフリカ開発共同体で、ジンバブエの危機的状況の打開に向け仲介役に選ばれていますが、仲介に消極的だとして非難を集めています。
4月の開票結果が先延ばしされていた時点で、南アフリカのもっと強い働きかけがあれば・・・という思いもします。

【選挙辞退の動き】
野党MDC(民主変革運動)にも動揺が広がっているようで、決選投票への出馬取りやめを検討する動きが報じられています。
****ジンバブエ野党、大統領選の決選投票参加を再検討か****
ジンバブエ最大の野党、民主変革運動(MDC)は22日に、今月27日に予定されている大統領選挙の決選投票への参加の是非を検討することを計画している。同党のスポークスマンが20日、AFPに明らかにした。
「暴力と脅迫がまん延しているなか、決選投票で国民の意思が実現される状況なのか、決選投票がよい結果につながるのか見極めたい」【6月21日 AFP】
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上記記事によると、MDCの法務責任者は“あくまで選挙運動を続ける”としているそうです。
また、“大統領側が暴力をエスカレートさせ、MDC支持者の被害が増大。死者は少なくとも70人に達しており、暴力の拡大を防ぐため、ツァンギライ議長に撤退を促す声が各方面から上がっている。”【6月21日 時事】という報道もあります。

確かに、この恐怖が支配する事態では、正常な投票行動は期待できません。
仮にムガベ大統領を上回る票を得ても、それが公表されることはまずないようにも思えます。
そうなると、大勢の犠牲者を出しながら、一体何のための選挙か・・・ということになります。

84歳のムガベ大統領個人の問題と言うより、現在の政治・社会システムから利益を得ている集団がどうしてもその既得権益を手放さない、万一権力を失うと自分達の過去の罪が問われかねないので権力を手放すことができない・・・そういう既得権益集団の問題のように思えます。
“無理が通れば道理が・・・”という事態ですが、なんともやりきれない現実です。




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