孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インド・パキスタン  対話再開へ合意するも、ムンバイ同時襲撃事件へのパキスタン側対応待ち

2009-07-21 21:12:54 | 世相

(ムンバイ同時襲撃事件で火を吹くタージマハルホテル "flickr”より By Apoorva Guptay
http://www.flickr.com/photos/guptay/3130874049/)

【ムンバイ同時襲撃事件の実行犯 詳細供述】
昨年11月に起きたムンバイ同時襲撃事件では、10人の実行犯のうち9人は死亡、残る1人の裁判がムンバイの特別法廷で行われています。
その被告が、これまでの無罪主張から一転、罪を認め事件の詳細を語ったそうです。

****ムンバイ襲撃、唯一生存の被告が罪認める 否認から一転****
166人が殺害された2008年11月のインド・ムンバイ同時襲撃事件の実行犯として、唯一生存したまま拘束、起訴されたパキスタン人、モハメド・アジマル・カサブ被告(21)が20日の公判で、無罪主張から一転、罪を認めた。
カサブ被告は以前無罪を主張したムンバイの特別刑事法廷で、「告白したい。わたしは有罪です」と述べ、判事や検察官、自らの弁護団まで全員を驚かせた。
その後、被告は襲撃の過程や、パキスタンからほかの9人の襲撃犯とともにマハラシュトラ州の州都ムンバイに到着するまでの詳細などを説明した。
ウジワル・ニカム検察官は閉廷後、報道陣に対し、4月に裁判が開始して以来、134人が被告に不利な証言をしており、被告自身が「すべてばれている」ことを悟ったのではないかと語った。(後略)【7月20日 AFP】
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【印パ関係改善への動き】
カシミール地方の領有権問題などで元々対立が続くインドとパキスタンの関係は、ムンバイ同時襲撃事件以後悪化し、高官級定期対話(和平プロセス)も中断しています。
しかし、アメリカは、パキスタン軍が国内のイスラム過激派タリバン掃討に集中できるよう、印パ両国の緊張緩和につながる対話再開を強く求めています。
こうしたアメリカの意向を受けて、17日のクリントン米国務長官の訪印を前に、インドのシン首相とパキスタンのギラニ首相は16日、非同盟諸国の首脳会議が開かれたエジプト・シャルムエルシェイクで会談しました。

会談後の共同声明では、中断していた高官級定期対話(和平プロセス)の再開で原則合意したことを明らかにされています。

****インド:パキスタンと対話再開へ 両首脳合意*****
インドのシン首相とパキスタンのギラニ首相は16日、非同盟諸国会議が開かれたエジプトで会談し、07年秋以降中断していた和平協議を再開することで合意した。その前段として近く、外務次官級対話を始める。昨年11月のインド・ムンバイ同時テロ事件で悪化していた両国関係は、改善に向け大きな一歩を踏み出した。

約3時間の会談後、両首相は共同声明を発表。それによると、テロ情報などを積極的に共有する一方、インドがパキスタンの貧困撲滅や国内安定に協力することで合意した。ムンバイ事件では、シン首相が公正な捜査と審理を求め、ギラニ首相も全力で取り組むことを約束した。
シン首相とパキスタンのザルダリ大統領は6月の会談で、和平協議再開に向けた条件を提示しあい、今回はその結果を持ち寄る形となった。
オバマ米政権は、アフガニスタンでの対テロ戦争推進に印パの関係改善が不可欠と見て、和平協議再開を両国に求めていた。 【7月16日 毎日】
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【懸案となっている事件処理】
しかし、シン首相は記者会見で「ムンバイ同時攻撃の犯人が正当に責任を問われるまで、包括対話を始めることはできない」と述べ、パキスタンが求めている包括和平対話を再開する可能性は否定しています。【7月17日 ロイター】
“包括和平対話”と“外務次官級対話”の関係がよく理解できませんが、アメリカの圧力もこれあり、交渉再開には応じるが、本格的な和平対話はパキスタン側のムンバイ同時襲撃事件への対抗を見極めてから・・・ということのようです。

“インド側は(ムンバイ同時襲撃)事件について、パキスタン国内に本拠を置くイスラム過激派「ラシュカレ・タイバ」の仕業だと一貫して主張。首謀者引き渡しを要求するとともにパキスタンのテロ組織対策が不十分だと不満を募らせてきた。
とりわけ、パキスタン高裁が6月初め、同組織の創始者ハフィズ・サイード氏の自宅軟禁を解く決定を出したことにインド側は反発した。しかし、パキスタンは今回の声明で、ムンバイ事件の首謀者訴追に向けた「あらゆる努力」を行うと述べ、同氏訴追に向けて今後、善処する姿勢を示した。”【7月16日 読売】

ムンバイ同時襲撃事件に対するパキスタン側の対応が印パ関係改善に突き刺さった小骨となっており、ひいてはアメリカの描くアフガニスタン・パキスタン包括戦略にとっても同様な訳ですが、冒頭AFP記事に戻って、実行犯が詳細供述を行ったことで、パキスタン側の「ラシュカレ・タイバ」関係者への対応にも影響が出ることが想定されます。
スムーズに進めば、そのことで印パ間の包括和平対話再開の時期も早まることにもなるのでは。
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