孤帆の遠影碧空に尽き

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COP28 「化石燃料からの脱却」などを採択 実効性は今後の取組次第 消極姿勢目立つ日本

2023-12-15 23:03:44 | 環境

(「気候変動パフォーマンス指数(CCPI)」2024年版。赤くなるほど評価が低い【12月9日 Newsweek】 日本は・・・真っ赤 順位は63か国プラスEU中で、前回より更に低下して58位 日本より下の国があまりない・・・という評価)

【化石燃料全般の抑制に初めて言及 「化石燃料からの脱却」合意の舞台裏】
国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は会期を1日延長した13日、「化石燃料からの脱却」などにより温室効果ガスの大幅削減を進めるとした成果文書を採択しました。

「石炭火力発電の段階的削減」を打ち出したおととしの会議から前進し、対象を石油や天然ガスを含む化石燃料全体へと拡大した形となっています。

****化石燃料からの「脱却」表明 COP28が文書採択****
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は13日、会期を延長して全体会合を行った。

2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標の達成に向け、「化石燃料からの脱却」を盛り込んだ成果文書を採択した。

文書採択の瞬間、各国代表団などが詰めかけた会場は大きな拍手に包まれた。温暖化の主な原因とされる石油や天然ガス、石炭など化石燃料全般の抑制にCOPの成果文書が言及するのは初めて。対策が講じられていない石炭火力の段階的削減を加速させる方針も確認した。

成果文書は観測史上、今年は「最も暑い年」になるとし、産業革命前からの気温上昇を「1・5度」に抑える世界共通の目標達成に向け、「緊急に行動する必要性」を強調した。

また、30年までに世界の再生可能エネルギーの発電能力を3倍に増やすとした上で、原子力のほか温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を地中に貯留するといった排出削減の技術開発を加速させるとした。

COP28では世界の温暖化防止の進捗が初めて評価され、取り組みが不十分であることを確認。各国が25年までに策定する排出削減目標で進捗評価との関係を明示するよう求め、削減強化を促した。

昨年、創設が決まった気象災害に伴う「損失と損害」の基金には、多くの国が資金拠出を表明し、基金の運用開始に道筋をつける成果を挙げた。【12月13日 産経】
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化石燃料(つまり石油も含む)への言及にはサウジなど産油国からの強い抵抗があって難航したようです。

会期終了を翌日に控えた11日、議長国UAEが公表した文書案から、それまで選択肢にあった化石燃料の「段階的廃止」の文言が消えたことが判明して議論を呼びましたが、これは各国の危機感を煽り、合意への道筋をつけるための事務局サイドの戦略だったとか。

****「歴史的」な化石燃料言及 COP28、曲折の末の妥協****
(中略)
地球温暖化対策では、産業革命前からの気温上昇を「1.5度」に抑えることが世界共通の目標。だが、国連の科学的知見では、すでに1.1度上昇している。各国が現在の温室効果ガス排出削減目標をすべて達成しても、2.1〜2.8度上がる見込みだ。

石油や天然ガス、石炭などの化石燃料は燃やすと二酸化炭素が発生し、温暖化の主な要因となる。会議で大きなテーマになったのは、1.5度目標の達成が困難になりつつあるからだ。

海面上昇の脅威に見舞われる太平洋のマーシャル諸島など島嶼(とうしょ)国や、排出削減の技術開発が進む欧米は、会議前半から化石燃料の「段階的廃止」を訴えた。

シェールオイルの恩恵を受ける米国は世界屈指の原油生産国だが、「バイデン大統領は来年行われる大統領選で、環境問題に冷淡なトランプ前大統領に押されている。環境に熱心な姿勢をアピールする狙いもあるのでは」(会議筋)との見方も聞かれた。

一方、サウジアラビアやイラン、イラクなど中東の産油諸国は当初、化石燃料への言及に強く反対した。ロイター通信によるとサウジが主導する石油輸出国機構(OPEC)加盟諸国は世界の原油埋蔵量の8割を擁し、サウジでは原油売却益が国庫収入の75%を占める。産業多角化と雇用創出は道半ばで、他の中東産油国も大差はない。一足飛びに「脱化石燃料」に踏み出せない事情がある。

隔たりが埋まらないまま迎えた11日。会期終了を翌日に控えて議長国UAEが公表した文書案から、それまで選択肢にあった「段階的廃止」の文言が消えたことが判明した。

「これでは署名できない」「表現を強めるべきだ」。島嶼国や欧米から批判が殺到した。各国は会期を越えて13日未明も協議を重ね、同日昼前に「化石燃料からの脱却」の文言で合意にこぎ着けた。

「夜を徹して協議した。各国は自国の利益を越えて共通の利益を優先した」。議長のジャベルUAE産業・先端技術相がこう述べて小づちをたたくと、会場では各国代表らが立ち上がって拍手し、歓声が飛んだ。

合意に至る経過を振り返ると、議長が土壇場で「段階的廃止」の一文がない文書案を公表したことが転換点になったことが分かる。COP28の事務局幹部は「ボールはあなたたちの方にある」と述べて各国の危機感をあおり、本音をぶつけ合うよう求めた。対立構図を浮き彫りにして事態の打開を促す狙いだった。

UAEはアラブで唯一、原発を稼働させて一足先にエネルギー供給源の分散化に着手。観光など産業多角化が進んでいる国だ。

一方、サウジが譲歩した理由について英BBC放送(電子版)は、「脱却」の道筋が柔軟に解釈できる内容だったことに加え、「会議を崩壊させたとみなされることを望まなかった」と分析した。

妥協の産物にもみえる合意の成立で、化石燃料からの脱却は進むのか。BBCが報じた複数の科学者のコメントでは賛否が割れた。マーシャル諸島の代表は文書採択後、「難問を解決するために来たが、その代わりにもろくて水漏れするカヌーを作ってしまった」と述べ、将来への懸念を隠さなかった。【12月14日 産経】
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“外交的合意”では対立する双方が“都合よく”解釈できる余地を残した玉虫色にすることで、本来なら合意できないところを「合意」する・・・そういうケースが多い、例えば“ひとつの中国”とか。

それでも「合意」することに意味があり、決裂するよりもずっとまし・・・とも言えます。その“曖昧さ”を云々するのは野暮というもの・・・か。

【サウジアラビア 石油輸出には影響を与えないとの認識】
サウジアラビアは“「脱却」の道筋が柔軟に解釈できる”と考えているようです。

****サウジ、COP28合意を支持 石油輸出に影響なし****
サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相は13日、同国は国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)の最終合意を支持すると述べた。

サウジ国営テレビのアルアラビアとのインタビューで「今ある合意では、(化石燃料の)即時的かつ段階的廃止という問題は葬り去られた」とし、サウジの石油輸出には影響を与えないとの認識を示した。

COP28では、約200カ国の代表が最悪の気候変動を回避するために化石燃料からの脱却を進めることで合意。ただ、石油・ガス・石炭の「段階的に廃止」を成果文書に盛り込むよう求める動きに対し、サウジを中心とする石油輸出国機構(OPEC)は特定の燃料に言及しないよう求めていた。

成果文書は「公正かつ秩序だった公平な方法でエネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を図り、2050年までに(温室ガス排出の)実質ゼロを達成する」とした。【12月14日 ロイター】
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サウジアラビアが余裕を持って対応できるということは、「化石燃料からの脱却」は実質的にはあまり進まない・・・ということにもなりますが、どうでしょうか・・・。いずれにしても実効性は今後の取組次第です。

【日本 石炭火力廃止への取り組みの“消極さ”が目立つ 中国・インドよりも低い評価も】
一方、今回COP28では日本の石炭火力廃止への取り組みの“消極さ”も目立ちました。

先進国に対して2030年までに石炭火力の廃止を求めている、イギリスとカナダが主導する脱石炭連盟(PPCA)に日本は参加しませんでした。

電力の2割を石炭に頼るアメリカですら参加を表明するまかで、G7で日本だけ取り残されている形にもなっています。期限を切られることが日本としては許容できなようです。

また、石炭への民間融資をやめ、地域のエネルギー移行を支える取り組みである、フランスとアメリカが主導して立ち上げた石炭火力発電からの脱却を目指す有志国連合への参加も見送りました。

日本は、現在のエネルギー基本計画では30年度でも電源の約2割を石炭火力に頼ることになっています。もちろん日本には日本の事情があっての話ではありますが。

****COP28で発足の「脱石炭」連合、日本は参加見送る 圧力警戒か****
アラブ首長国連邦で開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、「脱石炭」を巡り欧米各国と日本の間の溝が深まっている。

日本政府代表団は3日、フランスと米国が主導して立ち上げた石炭火力発電からの脱却を目指す有志国連合への参加を見送ったことを明らかにした。

この連合はCOP28での首脳級会合(1、2日)に合わせて設立され、米仏の他、カナダ、欧州連合(EU)など9カ国・地域が参加している。

主要7カ国(G7)は2022年に天然ガスを含む全ての化石燃料事業への公的支援停止に合意しているが、この連合ではさらに踏み込み、民間金融機関に対し、石炭火力への新規融資停止を促す仕組み作りを目指す。

日本政府代表団は3日、COP28会場内での記者会見で、フランス側から参加要請を受けたことを明らかにしたうえで「(民間融資停止に向けた)検討手続きが明確でなく、現時点で参加の立場は取っていない」(経済産業省の交渉担当者)などと説明した。

同じく脱石炭を目指す別の組織「脱石炭連盟(PPCA)」は2日、米国やチェコなどが新たに加盟したと発表した。PPCAは17年、英国とカナダの主導で発足し、参加国の多くは既設も含めた石炭火力の全廃時期を公表している。米国などの加盟で参加国は57カ国となり、G7で未参加は日本だけになった。

日本は、エネルギーの安定供給のためとして、30年度時点で総発電量の19%を石炭火力でまかなう計画だ。岸田文雄首相は1日の首脳級会合で「排出削減対策の講じられていない石炭火力の建設を終了していく」と表明したが、既設の発電所の廃止時期は示さなかった。

PPCAは米仏が設立した有志国連合と「連携する用意がある」と表明している。日本は全廃時期を示していないことへの圧力が強まることを警戒して連合への参加を見送った可能性もある。【12月4日 毎日】
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石炭火力について岸田首相はCOP28で「排出削減対策のない新規の国内石炭火力発電所の建設を終了する」と表明しました。

ただ、運転中の石炭火力発電は約170基もあり、これをどうするのか・・・・

日本政府はアンモニアを混焼する実験段階の技術を使うことで、合意文書で削減対象外となる「排出対策がある石炭火力」だと解釈して延命を図る戦略です。

日本のこのような姿勢は、結局石炭火力の延命を図るものとして批判もあります。温暖化対策に後ろ向きな国にNGOが贈る「化石賞」に、日本は期間中2回選ばれています。

COP28閉幕後、伊藤環境相は記者団に「この10年で早く移行していくが、化石燃料をゼロにするということではないと思う」とし、「可能な限り化石燃料の比率を減らす」と述べるにとどめました。

言っている事に間違いはないにしても、このような発言からは、「化石燃料からの脱却」を強力に推し進めようという意気込みは全く感じられません。

****奮起****
各国は今後、35年までの排出削減を見通す次期目標の策定に入る。交渉で影が薄かった日本の対応には不安が残る。

日本は今年、先進7カ国(G7)議長国として「排出削減措置が取られていない化石燃料使用の段階的廃止」の方針をまとめた。だが、COP28では化石燃料を巡る表現を強めるよう目立った動きをしなかった。

背景には、二酸化炭素(CO2)の排出削減策を取り入れながら化石燃料を使い続けたい本音がある。石炭火力発電には燃焼時にCO2の出ないアンモニアを混ぜるなどの手段を想定。だがこの方法は当面、ガス火力より排出が多い見込みだ。

地球環境市民会議の早川光俊専務理事は「途上国に資金支援もしているのに、現状では何をしても尊敬されない」と語る。

政府は現行計画で、再エネを30年度の発電量の36~38%に到達させることを目指している。来年は国連に提出する次期の排出削減目標の土台となる、エネルギー基本計画の改定が見込まれる。早川さんは「今の目標は低すぎる。太陽光も風力ももっと増やす余地はある」と奮起を促した。【12月15日 共同】
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****どこまで落ちる日本…COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状****
<ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している>

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で8日、恒例の「気候変動パフォーマンス指数(CCPI)」2024年版が発表された。

COP28で2度にわたって不名誉な「今日の化石賞」に選ばれた日本は63カ国と欧州連合(EU)の中で前年の50位からさらにランクを8つ下げ、58位に沈んだ。 

環境や気候変動問題のシンクタンク「ジャーマンウォッチ」と「ニュークライメート・インスティチュート」、国際環境団体のネットワーク「CANインターナショナル」が05年から19年連続で発表している。

昨年のロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している。 

63カ国とEUで世界の温室効果ガス排出量の9割以上を占める。多くの国が再生可能エネルギーへの移行を加速させている。しかし世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて摂氏1.5度に抑えるパリ協定の目標に沿った行動をとった国は一つもなく、上位3位まで該当国なしだった。 

今回もデンマークが最高位の4位で、エストニア、フィリピンがそれに続く。 

2大排出国の中国は前回と同じ51位で、米国は前回より5つ順位を下げて57位。日本、台湾(61位)、韓国(64位)は、石炭を消費しながらも急ピッチで気候変動対策を進める中国より評価が低かった。

COP28議長国のアラブ首長国連邦(UAE)、イラン、サウジアラビアが最下位の65位から67位までを占めた。 

■日本は良い目標が設定されていない
共同執筆者の一人、ニュークライメート・インスティチュートのニクラス・ヘーネ教授は「自然エネルギーがブームとなり、各国政府は継続的に自然エネルギー目標を更新している。

一方で気候変動政策の策定は全般的に鈍化した。比較的野心的な気候政策を行っている国のデンマークでさえ昨年10月の総選挙以降、気候変動対策がほぼ停止している」と指摘する。(中略)

日本がランクを落としていることについて、ブルク氏は筆者の質問に「日本の評価が低いのはすべてのセクターで非常に低い目標を設定していることや、1人当たり排出量に大きく関係している。温室効果ガスや再エネ、エネルギー消費に関して良い目標が設定されていない。ただ、新しい再エネ発電の建設を始めているのは良いトレンドだ」と答えた。 

世界の統計サイト「ワールドメーター」によると、日本の1人当たり二酸化炭素排出量は9.76トンで世界26位。ブルク氏は「日本が石炭や他のエネルギー源に対して自然エネルギーを増強する傾向を続けるならランキングが上昇するチャンスはある。しかし過去に比べてはるかに速いスピードでなければならない」と警鐘を鳴らす。 

日本の「取り残され感」はCOP28でもはや決定的となった。(後略)【12月9日 木村正人氏 Newsweek】
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中国やインドより評価が低いというのは釈然としませんが、改善に向けたアグレッシブな取り組みが見られない・・・ということでの低評価でしょう。
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