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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  大統領の意に沿わないものを排除し、批判を許さないトランプ政権の強権的体質

2025-04-20 22:29:46 | アメリカ
(【4月19日 AFP】)

【大統領の意に沿わない官僚を排除 「連邦政府をようやく民間企業のように運営することが可能になる」】
日本とアメリカでは公務員・官僚の位置づけは大きく異なります。

日本では公務員の労働基本権は制約されている一方で、政治的圧力からの保護、中立性の維持のために公務員の身分は強く保障されており、民間企業のような解雇はほとんどありません。

****公務員の身分保障****
スト権などは認められていないが解雇されるケースはほとんどない

民間企業の労働者には、団結権、団体交渉権、争議権(スト権)の労働基本権(いわゆる労働三権)がすべて保障されていますが、公務員の労働三権は何らかの制限を受けています。

たとえば、警察、消防、監獄、海上保安庁、防衛庁、自衛隊などの各職員は、労働三権が全面的に否定されています。その他の公務員の場合は現業・非現業とも団結権は認められていますが、争議権が認められていません。

その代わりに、公務員の身分は法律で厳格に保障されています。政権交代などによる政治闘争から身を守り、政治介入を排して、職務の公共性、行政の継続性や中立性を維持するためです。

このため、民間の企業の従業員のように業績によって給与が大きく変動することはなく、解雇されることもほとんどありません。

また、その意に反する不利益な処分を受けた場合は、国家公務員は人事院に対し、地方公務員は人事委員会または公平委員会に対して、行政不服審査法に基づく不服申し立てをすることができます。

人事院や各委員会は審査の結果に基づいて、修正や取り消しが必要な場合には、その職員が処分によって受けた不当な取り扱いを是正するための指示をしなければならないとされています。【「日本の人事部」】
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アメリカでは政策形成にかかわるキャリア官僚に関して政治任用が行われ、通常、政権交代があれば政治任用された4千人ほどの職員が入れ替わります。

日本からすると随分と「政治的」にも見えますが、トランプ大統領はこれでも官僚組織が政権の思い通りに動かないことに不満のようで、大統領の指示に反する行為などを理由に迅速に解雇できるよう雇用規則を改定が発表されました。

トランプ大統領は「政府がついに企業のように運営される」とSNSにつづっており、業績の悪い職員を解雇して「実力主義」に変えるというのが政権の主張ですが、大統領の意に沿わない官僚の排除が狙いとみられています。

****トランプ氏「ようやく政府を民間のように」 官僚の雇用規則改定*****
トランプ米政権は18日、連邦政府の重要な政策決定に携わる政治任用以外の幹部職員らについて、雇用規則を改定すると発表した。

容易に解雇できる「任意雇用」の区分に切り替える。全職員の2%にあたる約5万人が対象。ホワイトハウスは、業績不振や不正行為、大統領の指示に反する行為などを理由に迅速に解雇できるとしている。

トランプ大統領は、自身の交流サイト(SNS)に「連邦政府をようやく民間企業のように運営することが可能になる」と投稿した。政権の方針に従わない官僚を排除するのが狙いとみられる。

米メディアによると、トランプ氏は1期目の2020年にも同様の大統領令を発令したが、翌年に就任したバイデン前大統領が無効にしていた。

トランプ氏は今年1月以降、連邦政府職員に退職を勧奨したり、各機関に試用期間中の職員を解雇するよう指示したりしている。【4月19日 毎日】
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トランプ大統領は1期目の経験からキャリア官僚の一部が大統領の意に従わないことへ、そうした官僚を簡単に解雇できないことへの不満が強く、官僚組織を「ディープステート(影の政府)」と主張して、それを解体して「腐敗した官僚から政府を取り戻す」ことを選挙公約の柱としてきました。

“トランプ政権は1月の発足後、試用期間中の職員解雇や、自発的な離職を呼び掛けるなどして公務員削減を推進。今回、官僚の政治的圧力からの保護を縮小し、さらに踏み込んだ。”【4月19日 時事】

大統領の意に沿わない官僚の排除が狙いで、アメリカ連邦政府職員連盟は「有能な公務員を、政治的な取り巻きに置き換えようとするものだ」と反対する声明を出しています。

これに対し、トランプ政権は、「キャリア官僚が大統領を個人的または政治的に支持する義務はない」とする一方で、「政権の政策を忠実に実行する義務がある」と説明しています。

「政権の政策を忠実に実行する義務がある」と言えばもっともらしく聞こえますが、「大統領、それはおかしいです。間違っています。」と言えば「クビだ!」という話で、独善的な政権運営を更に徹底したい意向のようです。

新たなは雇用規則改定は、今後正式に大統領令が出されて実施されます。

【大統領に逆らうハーバード大学への連日の圧力強化】
大統領に逆らうとどうなるのか・・・その事例が、「反ユダヤ主義」の取り締まりや多様性へ配慮したDEIの理念の放棄の要請を拒否した名門ハーバード大学(ノーベル賞受賞者162人を輩出)で、政権による執拗な圧力が続いています。

****米ハーバード大、トランプ政権のDEI見直し介入に対決姿勢 連邦予算テコに圧力****
米東部の名門ハーバード大は14日、「いかなる政府も私立大学に教育内容や入学選考、職員の採用方法を押し付けることはできない」との声明を出し、同大を含む米国内の高等教育機関から「多様性・公平性・包括性(DEI)」の理念を排除することを目指すトランプ政権を批判した。

政権側はDEI排除を迫るテコとして、同大に連邦予算から支出される研究支援など90億ドル(約1兆3千億円)の見直しを進めており、同大への圧力が強まるのは必至だ。

声明は、トランプ政権が11日にハーバード大へ送った書簡への反論として発表された。
書簡で政権は、同大への連邦予算支出を継続する条件として、理事会の改革や、DEIの理念が反映されたすべての教育プログラム、入学選考基準、職員採用方式などを「能力本位」に見直すよう要求。イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃に反対する学生デモが昨年春に頻発したことを念頭に、学内での「反ユダヤ主義」の取り締まり強化なども求めた。

これに対し同大のガーバー学長は声明で、「要求の大部分はハーバードの『知的状況』への政府による直接規制だ」と述べ、大学運営への介入を排する姿勢を示した。

米メディアによると、ハーバードへ支出されている連邦予算の多くは医療や科学研究の助成に充てられており、大学関係者は「予算が停止すれば米国の知的競争力に影響を及ぼす」と警告している。

トランプ政権は、同大のほかにも、コロンビア大やコーネル大などの名門校に対しても、DEI見直しを迫るために研究予算の凍結や廃止を進めている。

一方、米メディアによると、ハーバードの教授らのグループは14日までに、連邦予算と引き換えに大学側にDEI排除などを求めるトランプ政権の動きは「大学の独立と、大学とその学生の言論の自由を根本的に傷つけるものだ」として、支出見直しの差し止めを求める訴えを東部マサチューセッツ州の連邦地裁に起こした。【4月15日 産経】
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****トランプ大統領、ハーバード大学の免税資格取り消す可能性を示唆****
アメリカのハーバード大学がトランプ政権の要求を拒否したことを受け、トランプ大統領は、免税資格を取り消す可能性を示唆するなど圧力を強めています。

ハーバード大学は14日、トランプ大統領が要求する多様性重視プログラムの廃止などを拒否し、トランプ政権は大学への助成金22億ドルなどの凍結を発表していました。

その上でトランプ大統領は15日、自身のSNSで「大学は免税資格を失い、政治団体として課税されるべきかもしれない。免税資格は公共の利益のために行動することを条件としていることを忘れないでください」などと投稿し、改めて大学への圧力を強めました。

また、ホワイトハウスのレビット報道官も、ハーバード大学に対し、「大統領は謝罪を望んでおり、大学は謝罪すべきだ」と述べています。【4月16日 日テレNEWS】
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****トランプ氏「ハーバード大は物笑いの種」 政府の研究委託撤回を****
ドナルド・トランプ米大統領は16日、ハーバード大学を「冗談」と呼び、同大学が政府監督の受け入れを拒否したのを受け、政府の研究委託契約を撤回すべきだとの考えを示した。また報道によると、トランプ政権は内国歳入庁に対し、同大の非課税資格をはく奪するよう正式に要請した。

トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に、「ハーバードはもはやまともな学びの場とは言えず、世界の偉大な大学やカレッジのリストに載せるべきではない」と投稿。「ハーバードは物笑いの種だ。憎悪と愚かさを教えており、もはや連邦資金を受け取るべきではない」と主張した。(後略)【4月17日 AFP】
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****トランプ政権、ハーバード大学に外国人学生の受け入れ停止を警告****
ドナルド・トランプ米政権は16日、ハーバード大学が政府による監督指示に従わない場合、外国人学生の受け入れを禁止する可能性があると警告した。(中略)

国土安全保障省は声明で、「ハーバード大学が報告義務を履行していることを確認できない場合、外国人学生を受け入れる特権を失うことになる」と警告した。 【4月17日 AFP】AFPBB News
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****米共和党、名門ハーバード大の調査開始 「公民権法無視」の疑いで****
ドナルド・トランプ米大統領が名門大学への攻撃を強める中、共和党議員らは17日、ハーバード大学が公民権法を無視している疑いがあるとして、同大に対する調査を開始すると発表した。

共和党議員らは世界的に著名な教育研究機関であるハーバード大に対し、採用慣行や多様性プログラム、キャンパスで昨年行われた親パレスチナデモに関する資料を提出するよう求める書簡を送付した。(中略)

コマー、ステファニク両氏は、ホワイトハウスによる監査要求を拒否した同大のアラン・ガーバー学長を激しく批判している。ホワイトハウスは同大への22億ドル(約3100億円)の助成金を凍結し、さらなる報復措置をちらつかせている。

両氏はカーバー学長に対し、「ハーバード大学には、違法な差別を防ぐ能力がないのか、あるいはその意思が極めて乏しいのか、貴殿の指示の下、法令順守を回復させるために連邦当局が提案した合理的な和解案に同意することさえ拒否しているようだ」と記し、「どれほど特権を与えられていようと、いかなる機関も法を犯す権利はない」と述べた。 【4月18日 AFP】
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【大統領の意に沿わないメディアにも】
文字どおり「連日」の圧力です。
大統領の意に沿わないメディアに対しても圧力が強まっています。

****米政権、意に沿わぬ言論に圧力強める****
アメリカのトランプ政権は発足後、大統領の意に沿わない言葉や情報、報道を排除する措置をとるなど言論への圧力を強めており、その政策の影響は内外のメディアに及び始めている。

アメリカ大統領府は2月11日、「メキシコ湾」を「アメリカ湾」に変更するとした大統領令にAP通信が反しているとして、同社記者を大統領のイベント取材から締め出した。

アメリカのメディアが用語表現の手引きとしている『APStylebook』が、長い歴史があり国際的に認知されている「メキシコ湾」の名称を使い続けるとしたことが理由で、締め出しは同行取材や海外首脳との会談後の記者会見を含め続いた。

非営利組織「報道の自由のための記者委員会」やホワイトハウス記者会が抗議したが措置は継続されており、APは同月21日、憲法に違反し言論を統制するものだとして措置の撤回を求め、大統領府首席補佐官らを提訴した。

大統領府はさらに2月25日、大統領を取材できる報道機関の数が限られる際の代表取材参加メディアを大統領府側が決めると宣言した。代表取材は従来、正確な情報共有のためホワイトハウス記者会が決めたメディアが交代で行ってきた。同記者会は「アメリカの自由な報道の独立性を損なう」と抗議したが、大統領府側は多様なメディアを入れるためとしている。(中略)

トランプ政権による公務員の大量解雇で、省庁によってはメディアの取材や情報公開請求に対応する職員がいない事態も起きている。

また、政府機関のウェブサイトからはジェンダーに関わる記載、保健医療や気候変動に関するデータなど、政権の意に沿わない情報が削除され、さまざまな問題の検証や取材に影響を及ぼすおそれが出ており、ジャーナリストや研究者が連携して公的な情報を保存する取り組みも始まっている。

一方、海外では、大統領令によって開発援助を凍結し、USAID(アメリカ国際開発庁)の業務を停止させた影響が出ている。援助対象には、取材妨害が目的の訴訟から調査報道を守るプログラムや、ミャンマーやロシアの反体制民主派メディア、ウクライナやアフガニスタンの独立メディアもあり、運営資金不足に陥るところも出てくるおそれがあるとWashington Postなどが伝えている。【NHK「放送研究と調査」4月号】
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【司法判断の軽視】
司法の是正命令を実質的に無視するような運用も続いています。

****AP通信、米トランプ政権が取材制限解除の連邦地裁命令に違反と非難****
トランプ米大統領によってホワイトハウスの代表取材から締め出されたAP通信の弁護団は16日、APへの取材制限を係争中に解除するように命じた米首都ワシントンの連邦地裁命令をトランプ氏の側近が無視していることを非難する声明を出した。

弁護団は裁判所に提出した書類で、APがトランプ氏とともに移動し、大統領執務室での行事に出席する代表取材からAPの記者を排除し続けていると申し立てた。(中略)

ホワイトハウスは15日、代表取材での通信社の参加枠を廃止すると発表した。ロイターとブルームバーグを含めて参加枠に入ることが認められていたあらゆる通信社が締め出されることになる。

AP側は、通信社の参加枠廃止について命令に明らかに違反しており、APに対する一段の報復の口実に利用していると反発した。ロイターもトランプ政権の措置を非難する声明を発表した。

一方、ホワイトハウスはAPが大統領への特別なアクセスの権利を持っているわけではないと主張。ホワイトハウスの当局者は、参加枠の変更は「大統領のメッセージが対象となる読者らに確実に届くようにするとともに、イベントに応じて適切な専門知識を持つ報道機関が出席するようにするため」に必要とコメントしている。

ワシントンに取材拠点を持たない地方メディアを含めた報道機関は、米大統領の発言などで通信社のリアルタイムの報道に依存している。

APのウェブサイトによると、同社は1846年に設立され、100カ国弱の計250弱の拠点で取材活動を展開している。【4月17日 ロイター】
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司法判断を無視するかのような運用は、犯罪組織のメンバーと見なされて中米エルサルバドルに誤って送還された男性をアメリカに帰国させるようトランプ政権に求めた判断についても。

****米連邦高裁、トランプ政権に司法との対立回避を呼びかけ****
米連邦高裁は17日、犯罪組織のメンバーと見なされて中米エルサルバドルに誤って送還された男性を米国に帰国させるようトランプ政権に求めた下級審の命令を支持、トランプ政権に対し司法との対立を避けるよう求めた。

高裁は「行政府は法に従わないとの印象が広がれば、多くのものを失うことになる」とし、行政府が米国の精神にとって法の支配が不可欠と認識していることを引き続き期待していると述べた。

また、トランプ氏が自分に不利な判決を下す判事を頻繁に攻撃することで、司法に対する世間の信頼を損なおうとしているように見えると主張。トランプ氏が成功を収める可能性もあるが、同氏が法に従っていないとの見方が広がれば逆効果になり得ると指摘した。【4月18日 ロイター】
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【本来政権から独立したパウエルFRB議長も解任検討】
更に、経済政策で大統領の意に沿わない連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長を(大統領に解任の権限はないものの)解任することも検討されています。

****トランプ政権、パウエルFRB議長の解任検討****
米国家経済会議のケビン・ハセット委員長は18日、ドナルド・トランプ大統領とその政権が、連邦準備制度理事会のジェローム・パウエル議長を解任する選択肢について検討を続けていると明らかにした。

ハセット氏は、パウエル氏解任の可能性について記者団に問われると、「この問題については大統領とチームが引き続き検討していく」と答えた。

米大統領にFRB理事を解任する直接的な権限はないが、トランプ氏は解任の「理由」を証明することで、パウエル氏を退任させる長期的な手続きに着手することは可能だ。

トランプ氏は、自身が1期目に指名したパウエル氏が政治的な駆け引きをしていると頻繁に批判している。

パウエル氏は16日、トランプ氏がほぼすべての貿易相手国に課す包括的な関税は物価を押し上げ、経済成長を抑制すると指摘。FRBが「インフレ対策」と「失業対策」のどちらかを選ばなくてはならないという望ましくない立場に追い込まれる恐れがあると警告した。

これに対しトランプ氏は17日、パウエル氏を辞めさせることができると主張。「彼には満足していない。そのことは本人にも伝えてある。私が辞めてほしいと頼めばすぐさま辞めるだろう。私を信じろ」と述べた。 【4月19日 AFP】
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自身の意に沿わない官僚をクビにして、大学に圧力をかけ、メディアにも。司法判断も無視し、本来政権から独立した中央銀行トップも解任に追い込む・・・世間一般ではこういう政治は「民主主義」とは呼ばず、「強権支配」「独裁」と呼びます。

最終的には、「大統領の意に沿わない国民はエルサルバドルの刑務所に」でしょうか。
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