孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フランスなど主要国 リビア復興支援国際会議で利権獲得競争も加速

2011-09-02 21:13:01 | 北アフリカ

(1日からの復興支援国際会議参加メンバー 当然、最前列中央には呼びかけ人でもあるフランス・サルコジ大統領が。“flickr”より By N.A.T.O. http://www.flickr.com/photos/n-a-t-o/6105140153/

フランス「リビア介入は将来への投資でもあった」】
昨日に引き続き、リビアの話題。
1日からパリで始まった復興支援国際会議では、主要国は世界各国のリビア資産のうち計約150億ドル(約1兆1550億円)の凍結を解除し、当面の復興資金とする方針を示しています。また、北大西洋条約機構(NATO)の空爆継続を確認。最高指導者だったカダフィ氏の裁判の在り方について、英仏は「リビア市民が決めるべきだ」と主張しています。【9月2日 毎日より】

そうした表の協議の裏では、早速各国の利権獲得競争が激しくなっているようです。

****新生リビア」利権目指す動き 支援会議の裏、各国加速****
会議では、リビアの反体制派を代表する「国民評議会」のアブドルジャリル議長が政権移行への段取りを説明。カダフィ政権が海外に持つ資産の凍結解除のほか、インフラなどの復旧に向けた緊急支援を求める。

ただし、「代理人」として国際社会に支援を募る場を設けるフランスは大義とともに利も追う。ジュペ外相は仏紙のインタビューに「リビア介入は将来への投資でもあった」とした。
1日付のリベラシオン紙は、フランスが会議のさなかの交渉で、評議会側とリビアの新規の石油権益の35%を取得する合意を交わす可能性を伝えた。軍事介入の見返りというわけだ。

リビア情勢に詳しいルイス・マルティネズ・パリ政治学院教授は「フランスはリビア新政権から最恵国待遇を受けることになるだろう」と指摘。鉄道網や大規模な造船施設の建設、戦闘機・航空機など多分野で売り込みを強めるとみられる。

他国もだまってはいない。進出企業を束ねるリビア英国ビジネス評議会会長のトレフガーヌ英上院議員は「2週間以内にも代表団を派遣し、まずは医薬品や病院再建の分野で貢献したい」。

軍事介入の主力でいながら、国民評議会の力量に懐疑的だった米国も、野心を隠さない。「会議の第一目的は評議会の面々と席をともにすること」(ヌーランド国務省報道官)。300億ドル(2兆3千億円)を超す凍結資産の解除を皮切りに復興ビジネスを虎視眈々(こしたんたん)と狙う。

一方、旧宗主国として最大の権益を保持し、軍事介入に及び腰だったイタリアは今、巻き返しに躍起になっている。外資で最大の石油ガス権益を持つエネルギー大手ENIのスカローニ最高経営責任者は8月29日、リビア東部ベンガジを訪ねて評議会側と新たな覚書を結んだ。
生産施設の早期再稼働やガソリンなど石油精製品の無償提供なども申し出た。イタリア・リビア商工会議所の会長は地元紙に「英仏より先にリビアに戻り、巨大市場に入り込まなければならない」と語った。

一方、リビア軍事介入を認める国連安保理決議を棄権したドイツでは、「リビアにおけるドイツの名声は傷ついており、いったんは行列の後ろに並ばなければならないだろう」(公共放送ARD)との見方が強い。

ただし、評議会側もしたたかに計算する。これまでの各国の「貢献度」もはかりにかけ、石油など各種の権益を担保に援助や資金を最大限に引き出したい構え。社会インフラや物流・通信網が破壊され、水や電気、食料やガソリンが足りない。首都トリポリと東部ベンガジの電話もほとんど通じない。暮らしに直結する部分から復旧をはかり、カダフィ後の国民の支持を保つ考えだ。カダフィ政権下で課せられた飛行禁止区域や金融制裁の早急な解除も求めている。【9月2日 朝日】
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サルコジ大統領、潘基文事務総長を押し切る
リビアの復興支援ということであれば、国連が前面に出てきてもいい話です。
実際、国連・潘基文事務総長としては復興支援の主導権を取りたかったようですが、人気回復と利権確保を狙うフランス・サルコジ大統領に押し切られる形で、今回の“パリ会議”となった経緯があります。

****リビア 支援会議で主導権争い 仏大統領、国連に競り勝つ****
“カダフィ後”のリビア支援をめぐり、国連の潘基文事務総長とフランスのサルコジ大統領が主導権争いを演じている。これまでのところ、サルコジ大統領側に軍配が上がっている。

潘事務総長は22日、リビア支援の国際会議を近くニューヨークで開催すると呼び掛けた。指導力不足が指摘される潘氏にとって、同会議を自身の指導力発揮の場にしたい考えだった。一方、サルコジ大統領も24日、国際会議を9月1日にパリで開くと発表。こちらも大統領選まで8カ月と迫る中、人気低迷に焦るサルコジ氏が政権浮揚効果を狙ったとの見方が強い。

リビア支援という同じ趣旨の国際会議開催をめぐり、双方が“綱引き”を演じる中、潘氏が26日にニューヨークで開催した国際会議は、欧州連合(EU)など各地域機構の代表らとの「ビデオ会議」にとどまった。国連関係筋は「いわば会議の“格下げ”であり、潘氏はメンツをつぶされた格好」と分析する。
この会議では新生リビアの警察支援などで一致した。が、選挙や経済支援、行政機構設置で指針を示せず、具体策はサルコジ氏が主催するパリの国際会議で討議されることになった。【8月30日 産経】
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3月に国民評議会を他国に先駆けて承認し、軍事介入でも前面に立ったフランスの力の入れようは並々ならぬものがあり、仏リベラシオン紙(電子版)は1日、リビアの国民評議会とフランスとの間に、リビアの石油生産の35%をフランスに供給する密約があると報じています。【9月2日 産経より】
この密約は、早い段階の4月3日付書簡に書かれているとのことで、上記【9月2日 朝日】の「リビア介入は将来への投資でもあった」というジュペ仏外相の言葉とも繋がります。
まあ、それにしても正直と言うか、明快な発言です。

軍事介入不参加ドイツでは外相辞任圧力
リビア軍事介入を認める国連安保理決議を棄権し、空爆にも参加しなかったドイツでは、外相の失策として辞任要求が出ています。
****ドイツ:外相の辞任圧力強まる リビア空爆不参加で****
リビアへの空爆に参加しなかったドイツで、ウェスターウェレ外相の辞任を求める声が高まっている。党首を務めた自由民主党(FDP)は連立政権の一角を担うが、目立った実績を挙げられず支持率が急落。カダフィ体制崩壊を受け、党内から外交判断を誤ったとの批判が噴出しているためだ。【9月1日 毎日】
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中国「リビアを支配する立場の者は市場の要求と経済的利益を考慮する必要がある」】
一方、カダフィ政権下で50の開発プロジェクト(総額約188億ドル)を進めるなど、政権側と友好関係を持ち、反政府勢力に距離を置いてきた中国に対しては、原油関連事業などからの排除する旨を反体制幹部が表明するなど、厳しい目が向けられています。当然ながら、中国も巻き返しに懸命です。

****リビア利権争い 出遅れ中国、挽回模索 仏と首脳会談 信用回復へ経済協力****
リビアのカダフィ政権崩壊に伴い、豊富な埋蔵量を誇る同国の石油利権をめぐる駆け引きが活発化してきた。反カダフィ派を支援してきた欧米諸国は政権移行後も良好な関係が見込まれるのに比べ、空爆に冷淡な態度を示してきた中国とロシアなどからは、リビア国内での利権確保を危ぶむ声も上がっている。各国とも、反カダフィ派の中心組織「国民評議会」との関係構築に懸命のもようだ。

中国の胡錦濤国家主席は25日、南太平洋の仏領ニューカレドニアに向かう途中、北京に立ち寄ったフランスのサルコジ大統領と会談し、国際経済やリビア情勢などについて協議。胡主席は財政不安が高まる欧州の国債を買い支える考えを表明した。
カダフィ政権崩壊後のリビアにおける利権争いで出遅れた中国は、反カダフィ派を支援してきた「連絡調整グループ」のフランスなど欧米諸国との距離を縮めようと策を巡らしている。

サルコジ大統領は24日、9月1日にパリで開かれるリビア支援国会議に中国を招待すると発表、“手土産”を携えての訪中となった。サルコジ氏は11月の20カ国・地域(G20)首脳会合の議長を務めており、世界経済回復に向け中国から協力を取り付ける必要がある。
サルコジ氏は今年3月にも訪中。リビア空爆に道を開いた国連安全保障理事会決議で棄権した中国に反カダフィ派への支持を求めたが、情勢が不透明な中、石油利権を通じてカダフィ政権と友好関係にあった中国側は態度を留保し続けた。
 政権側の旗色が悪くなった6月に入ってから反カダフィ派との接触を始めたが、政権側とのパイプは保持。今月22日に反カダフィ派が首都トリポリをほぼ制圧すると、即座に新政権を容認する談話を発表したものの、自国の利権を優先する姿勢は反カダフィ派の信用を失っている。
中国はリビアに対し、2009年までに累計4300億元(約5兆円)を投資。昨年輸入した原油の3%がリビア産だった。

中国商務省の通商関連当局の高官は23日、中国の石油関連投資が両国民の相互利益になっていると主張。「安定を回復した後も、中国投資家の権益や権利を引き続き保護することを望む」などと述べた。さらに同省報道官は翌24日、「リビアを支配する立場の者は市場の要求と経済的利益を考慮する必要がある」と“中国外し”の動きを牽制(けんせい)することも忘れなかった。【8月26日 産経】
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ロシア 「国民評議会」承認も、NATO批判は継続
中国同様に、NATOの軍事介入を批判してきたロシアも、遅まきながら1日、「国民評議会」を正統政府として承認するとの声明を発表しています。
ただ、ラブロフ外相は同日、モスクワ国際関係大学での講演で、NATOによるリビア空爆は国際正義の原則に反していると改めて批判しており【9月1日 朝日より】、カダフィ政権は見限ったものの、NATOとの関係でロシア側にこだわりがあることを示しています。

英仏など欧州諸国が主導する形を取った今回のリビア軍事介入も、「米国の独自かつ極めて重要な情報収集能力がなければ作戦は不可能だった」(NATOのラスムセン事務局長)と言うように、オバマ米大統領が掲げる「後方からの指揮」にとどまらず、実際の軍事作戦の要所はアメリカが押さえていたとも見られています。【8月25日 読売より】
アメリカは、利権面での目立った動きはまだ見せていませんが、これからその報酬を要求することになるのでしょう。

日本「独自に動くことはない」】
さて、日本は・・・と言えば、いつものように“出遅れ”とも評されていますが、リビア原油輸出の約85%は欧州向けですし、震災・フクシマ、政局の混乱などで、遠いリビアどころではなかったので仕方ないところでしょう。

****空白の外交、日本は出遅れ ****
日本外交の出遅れ感は否めない。大統領や首相ら首脳級がそろう支援国会合。野党から「政務三役を派遣すべきだ」との意見も出たが、日本が送ったのは外務省の松富重夫中東アフリカ局長と西ケ広渉リビア大使だった。

もともと欧米に歩調を合わせ、「独自に動くことはない」(外務省幹部)との立場のうえ、菅直人首相の辞任表明と民主党代表選で政治的空白が生まれた。野田新内閣が発足するまでの「職務執行内閣」は重要な外交政策の決定もできない。政府承認やカダフィ政権の資産凍結解除の判断も遅れている。

日本は今後、リビアの復興や民主化プロセスの支援を検討する姿勢だ。ただ、新内閣が発足しても、政務三役を含めた新体制が整うにはなお時間がかかる見通しで、リビア情勢への関与のあり方にも影響が出る可能性がある。

企業はじりじりしながら情勢を見守る。リビアの油田開発では、日本企業も2005~06年にいくつかの鉱区の権益を取得している。国際石油開発帝石はトリポリの南西約600キロのリビア西部で探鉱していたが、情勢の悪化で2月に現地事務所を閉鎖、駐在員6人を帰国させた。業界は「先が見えない」と気をもむ。 【9月2日 朝日】
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