孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ネパール  毛派が求める反毛派首相辞任を受け入れ、制憲議会任期延長 変わらぬ構図

2010-06-01 21:57:37 | 国際情勢

(5月7日 カトマンズ 警官隊と衝突する毛派支持者 “flickr”より By nagariknews1
http://www.flickr.com/photos/49766831@N03/4588695308/)

【再び首相辞任へ】
ネパールでは、政府と野党・ネパール共産党毛沢東主義派の対立が続いたまま制憲議会の任期切れを迎えましたが、現首相の首を差し出すことで任期延長に関する毛派の協力をなんとか取り付けたようです。

****ネパール制憲議会1年延長 反毛派首相、辞任へ*****
ネパールが連邦共和制に移行してから初めてとなる憲法制定のための制憲議会(601議席)は28日深夜、この日迎えた2年間の任期内に憲法を制定できず、土壇場で任期を1年延長する法案を可決した。議会第一党の野党・ネパール共産党毛沢東主義派から任期延長の賛成を取り付けるため、「反毛派」政党からなる現連立政権は、毛派が求めるネパール首相の辞任を受け入れた。
ネパール首相の辞任後、毛派が復帰しての新たな連立政権を樹立し、再び憲法制定を目指すことになる。だが、毛派兵士の政府軍への統合など、課題が解決される見通しはなく、不安定な情勢が続きそうだ。

ネパール首相の報道官は29日、フランス通信(AFP)に「首相が辞任することに間違いはないが、首相は諸懸案解消の見通しがつくのを見届けたいと思っている」と述べ、辞任には時間がかかる可能性があることを示唆した。
政権側が提出した任期延長法案が可決されるためには、議会の3分の2以上の賛成が必要で、4割の議席を持つ毛派の賛同が不可欠なことから、政権側は毛派に協力を呼びかけていた。しかし、毛派は同派トップのダハル前首相の返り咲きを念頭に、ネパール首相の辞任を要求。当初、政権側は反発していたが、最終的に毛派の要求をのんだ。

ネパールでは、立憲君主制から連邦共和制となった2008年の8月に毛派政権が発足。昨年5月にダハル前首相が、毛派兵士の政府軍統合に反対する陸軍参謀長を解任したことから、主要政党が連立政権からの離脱を表明し、毛派政権は崩壊した。下野した毛派は、現政権の退陣を求め、全国でゼネストを実施するなど、反政府抗議行動を展開してきた。【5月30日 産経】
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【変わらぬ対立の構図と問題点】
これまで、このブログでも何回か、ネパールにおける毛派と反毛派の対立という政治情勢を取り上げてきましたが、基本構造はほとんど変わっていません。

その解決の障害になっている最大の問題が、内戦が終了したいま、毛派民兵組織「人民解放軍」をどう処遇するのか、毛派が要求している国軍への統合を認めるのかということで、この点も全く変わっていません。
今朝のNHKでも、毛派民兵が生活している(あるいは、押し込められている)キャンプの様子を取り上げていたようです。(詳しく観る時間はありませんでしたが)

1年前の5月4日ブログのときと変わったのは、当時は反毛派勢力の圧力で毛派のプラチャンダ(本名:ダハル)首相が辞任したのに対し、今回は毛派の圧力で反毛派のマダブ首相が辞任する・・・という具合に“攻守”が逆になっただけです。

09年5月4日ブログ「ネパール  毛派と国軍が対立 高まる緊張」
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20090504)からの再録
****「兵士以外の生きる道を知らぬ」若者達****
かつては国軍と戦った毛派兵士は、毛派と政府が和平合意した後は、その処遇が問題となっていました。
多くが貧困家庭出身で、10代で毛派に参加、うち2割が女性・・・という毛派兵士は、「兵士以外の生きる道を知らぬ」若者達です。

毛派は、「06年の政府との和平合意の際、国軍統合が約束されていた」と主張していますが、国軍は「ゲリラと正規軍では戦い方も思想も違う」と拒否。他の政党勢力も「別の治安組織を新設する方が現実的」と、国軍への併合に否定的です。毛派が国軍も掌握すれば、恐怖政治に乗り出す可能性があると警戒しているためです。
もちろん、毛派が軍事組織を残存させていることにも強い警戒感を持っています。
(07年1月から始まった国連監視下での武装解除で、毛派兵士の宿営地内に国連の監視員が常駐。武器は鍵のかかった倉庫に保管されています。ただ、護身用に小型の拳銃などを持ち歩くことは認められています。)
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登録された毛派人民解放軍は相当に水増しされており、また、プラチャンダ氏自身が「解放軍3,000人が国軍に編入されることにより、国軍全体を毛沢東主義で動かせる。」と過去に発言している【ウィキペディア】ことが問題解決を更に困難にしています。

今回、毛派の要求をのんだということは、再度プラチャンダ首相・毛派政府が復活するということでしょうか?
よくわかりませんが、誰が首相になっても、毛派民兵の国軍への統合問題を何とか処理しない限り、内戦再燃の危険をはらんだネパールの不安定な政治情勢は続きます。

もっとも、240年続いた王制を廃止し、11年続いた内戦に終止符を打つという大きな変革を実現しつつあるネパールですので、1、2年の政治空白は“ひと休み”ということでいたしかたないのかも。
しかし、いつまでもあてもなくキャンプ内に閉じ込めておくこともできないでしょう。

なお、過去2年の制憲議会では、反毛派与党陣営が議院内閣制を志向したのに対し、毛派は大統領制を主張し、将来の政治体制についても意見の相違があります。

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