孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イラン核合意  離脱か修正か・・・トランプ大統領「決断した」

2017-09-23 21:47:43 | イラン

(19日の国連総会での演説で、イラン核合意は「米国にとって恥」「(イランの)主要輸出品は暴力と流血、混乱だ」と、イランに対する敵意をむき出しにするトランプ大統領【9月22日 産経】)

注目される来月中旬までのトランプ氏の判断 「決断した」「そのうち教える」】
北朝鮮核・ミサイル問題については周知のように、「ちびのロケットマン」「老いぼれ」、「完全破壊」「史上最高の超強硬対応措置」・・・・といった、激しい言葉の応酬と言うか、「幼稚園の子供同士のけんか」(ロシア・ラブロフ外相)のような状況です。

通常、こうした冷静さを欠くようにも見えるやり取りは、相手を挑発するため、相手の注意をそらすため、相手との交渉に関心がなく、国内支持基盤しか眼中にないとき・・・・等々に見られますが、トランプ大統領と金正恩委員長の“奇妙”な頭の中に何があるのかは誰もわかりません。

そのトランプ大統領、北朝鮮・金正恩委員長だけでは相手不足なのか、勢いが止められなくなっているのか、もうひとつの核問題、それも“一応は”沈静化した問題を敢えて蒸し返すつもりのようで、イランとも核合意をめぐる激しい非難の応酬になっています。

****イラン核合意、牽制 トランプ氏、離脱示唆し修正迫る戦略****
米欧などとイランが2015年に結んだ核合意を巡り、トランプ米大統領が国連総会などで合意離脱も示唆して牽制(けんせい)している。

ただ、米国が一方的に合意を破棄すればイランの核問題再燃は確実なだけに、国際社会は強く反発している。トランプ氏は「脅し」を通じ、核合意の期間延長や査察強化などの修正を迫る戦略とみられる。
 
「決断した」。トランプ氏は20日、ニューヨークで記者団に核合意から離脱するか問われ、3度繰り返した。そして「そのうち教える」と笑顔を見せた。
 
トランプ氏は核合意を「米国史上最悪の取引」として合意離脱を選挙公約にし、包括的な見直しを政府内で進めてきた。19日の国連演説でも合意批判を繰り返し、イランへの敵意をむき出しにして「(イランの)主要輸出品は暴力と流血、混乱だ」とこき下ろした。
 
イラン核合意は、イランが10年以上は核兵器をすぐに作れないレベルまで核能力を大幅に縮小し、その見返りに欧米が経済制裁を解除するもの。外交的な話し合いでイランの核開発を押しとどめたオバマ前大統領の最大の『レガシー(政治的遺産)』の一つだ。トランプ氏には、オバマ氏の成果を否定する政治的な意図もある。
 
注目されるのは、来月中旬までのトランプ氏の判断だ。米政府はイランが合意を順守しているかを90日ごとに判断し、議会に報告。トランプ政権は過去2回、イランの合意順守を認めたが、次回が10月15日に迫っている。合意違反を報告すれば、議会が60日以内に制裁を再びイランに科すかどうかを決定する。

米メディアには、当局者の話として、トランプ氏が合意を無効にする方向に傾いているとの報道もある。また、米国が査察強化やイランによるミサイル開発停止などを含む合意の修正を求める可能性など、様々な臆測を呼んでいる。
 
最悪のシナリオは、米国が合意を破棄し、イランが対抗措置として核兵器の材料になる高濃縮ウランの生産を再び開始することだ。

イランのサレヒ原子力庁長官は8月下旬、「米国が合意を破棄すれば、イランは5日以内に(兵器転用の元になる)濃度20%のウラン濃縮再開が可能だ」と強調。

イランが核開発を再開すれば、敵対するサウジアラビアなどで核武装論が強まる恐れがあり、中東で「核ドミノ」が起きる可能性が高まる。

 ■国際社会は反発
マクロン仏大統領は19日の国連総会の演説で「合意を拒否するのは重大な間違い。無責任だ」と牽制。メイ英首相も「核合意の継続が必要だ」としている。核合意に強硬に反対する米国とイスラエルの態度が際だっている。
 
20日のイランと関係国による外相級会合では、イランが核合意を順守していることが確認された。

だが、米国のティラーソン国務長官は協議後の会見で「技術的な観点」では合意違反がないと認めつつ、イランが続けるミサイル実験やシリアのアサド政権を支援していることなどを問題視。「合意以降、平和で安定した地域が達成されていない」と指摘し、「明らかに合意の『期待』が満たされていない」とイランを批判した。
 
最大15年というイランの核開発の制限期間も、米国は問題視する。ティラーソン氏は「(期限が過ぎれば)イランが核兵器計画を再開できる。大統領はこれを受け入れられない」と強調。離脱ではなく、期限の変更や国際原子力機関(IAEA)の査察権限の強化など合意の修正を図っていく可能性を示唆した。
 
イラン政府関係者は「米国がシリアやミサイル開発問題など(前回の合意には含まれない)政治的争点を要求してくる可能性がある」とみる。だが、イランのロハニ大統領は20日の会見で「合意にほかの条件はない。現在の形で履行されなくてはならない。変更はない」と再交渉に応じない姿勢を強調した。

 ■イラン核合意とは
イランで2002年にウラン濃縮施設が見つかって以降、国連安保理は対イラン制裁決議を4回採択し、米国もイラン産原油輸出に関係する独自の金融制裁を科した。イランは13年のロハニ大統領就任で融和路線に転じる。
 
その後の交渉を経て15年7月、イランと米英独仏中ロ・欧州連合(EU)が最終合意した。イランは15年間は核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを製造せず、10トンあった貯蔵濃縮ウランは300キロに削減。

もし秘密裏に核開発を再開しても、核爆弾1発の原料をつくるのに最低1年はかかるレベルまで核能力を縮小し、軍事行動や外交で動きを止める時間的猶予を確保した。

その見返りとして、米欧などは金融制裁やイラン産の原油や貴金属の取引制限などを解除することに合意した。【9月22日 朝日】
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ヘイリー米国連大使は、国連総会でのトランプ大統領の発言は「破棄を検討しているとの明確なシグナルではない。大統領が満足していないことを明示するシグナルだ」と語っていますが・・・・。

合意内容にトランプ大統領が不満を持っているのはわかりますが、外交交渉を含めてすべての交渉は、まず100%満足のいく形では得られません。なにはしらかの妥協、あるいは双方が都合のいいように解釈する玉虫色の決着を認めないのであれば、あとは相手がひれ伏すまで追い詰めるか、その過程で暴発するかのいずれかになります。

何年にも及ぶ国家間の厳しい交渉の末、ようやく国連安保理の支持を得て成立した合意
イラン核合意も関係国の長期にわたる困難な交渉の末にまとまり、国際的な核の危険性を一定に落ち着かせ、また、イラン国内の強硬論台頭を抑え込む効果が期待されましたが、トランプ大統領にはお気に召さないようです。

****世界が抱えるもう1つの核危機****
<国連演説でもイランを「殺戮国家」と批判し、核合意の再交渉を試みたトランプ政権は何にこだわっているのか。その危険な反作用とは>

欧米など主要6カ国とイランが2015年に取り交わした核合意の再交渉を画策する米トランプ政権の試みは完全に頓挫した。欧州主要国はアメリカが離脱しても合意を維持すると明言、イランの大統領は再交渉に応じる考えはないと突っぱねた。

9月20日夜、イランと主要5カ国の外相、EU代表、レックス・ティラーソン米国務長官、ニッキー・ヘイリー米国連大使が非公開の協議を行い、その結果、米側もイランが合意内容を遵守していることを認めざるをえなかった。(中略)

(モEUの外交安全保障上級代表)ゲリーニはさらにクギを刺した。「国際社会には今、正常に機能しつつある核合意を引っ繰り返す余裕などない。われわれはもう1つの潜在的な核危機を抱えており、これ以上危機は要らない」

「ウラン濃縮を好きにやるぞ
イランのハサン・ロウハニ大統領は同日午後、ミレニアム・ホテルで記者会見を開き、トランプ政権が核合意を破棄するなら、現在合意によって制限されているウラン濃縮についてイランは「フリーハンド」にさせてもらうと警告した。

ロウハニは、アメリカが合意を破棄しても、核開発を再開する考えはないと断言し、国際社会に広く支持されている合意から離脱すればアメリカは信用を失うが、「イランは世界においてより強固でより良い地位に就ける」と自信を示した。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「核合意の破棄は過ち」だとの立場を鮮明にしている。トランプが「アメリカの恥」とまで言った核合意を、マクロンは「良い」内容だと評価。

ただし、弾道ミサイル開発の禁止が盛り込まれていないなど不十分な点があることは認め、アメリカの懸念には一定の理解を示した。

アメリカが核合意から離脱する可能性について、あるEUの外交トップは「この合意は国際社会のものだ」と息巻いた。トランプ政権はイランの合意順守状況について90日ごとに議会に通告することになっており、次の期限は10月15日に迫っている。

欧州寄りの米政府関係者や、イランの核合意順守状況の監視役であるIAEA(国際原子力機関)も、イランはきっちりと合意を順守していると言っているのに、報道によれば、トランプはどこからかイランは合意を順守していないと結論づけたという。

トランプは昨年の米大統領選挙の最中から、オバマ前政権下で結ばれた核合意を悪しざまに言ってきた。同合意はイランの弾道ミサイル開発を禁じておらず、ウラン濃縮活動などの制限にも最大25年の期限があって、それ以降核開発が再開されかねないことなどを問題視している。

国連総会での初演説でも、イランを「暴力、殺戮、混沌を主な輸出品とする困窮したならず者国家」と呼んだ。核合意のことは「アメリカがこれまで合意したなかで最も一方的で最悪の取引」と呼び、破棄する可能性を匂わせた。

イラン国民へ謝罪を
(中略)ロウハニは、再交渉は「現実的ではない」と言った。何年にも及ぶ国家間の厳しい交渉の末、ようやく国連安保理の支持を得て成立した合意なのだ。

「今後期待するのは」と、ロウハニは言った。「トランプ氏からイラン国民に対する謝罪だ」

だがトランプは、また正反対のことをするかもしれない。【9月21日 Newsweek】
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合意の不十分な点をあげつらえばいくらでも可能ですが、それは“ないものねだり”でもあります。
先述のように、交渉というのはそういう不満足をのみ込んで成立するもので、それが嫌なら後は喧嘩しかありません。

“イランが続けるミサイル実験やシリアのアサド政権を支援していることなどを問題視”・・・・ミサイル開発は合意範囲外の問題ですし、シリア云々は“核合意”とは別問題です。

また、合意内容に不満だから・・・と蒸し返す対応は、慰安婦問題での韓国のようでもあり、関係国を苛立たせるところがあります。

トランプ大統領の言動は、要するに“イランは嫌いだ!”“オバマ前大統領のやったことは壊してやる!”という執念にすぎないようにも思えます。

トランプ大領の妄念でアメリカがどうなろうが勝手ですが、国際社会を混乱に巻き込むのは勘弁してほしい・・・との感じも。

アメリカの対応に、イラン側も言動をエスカレート
アメリカ以外の合意各国はアメリカ・トランプ大統領の言動に強く反発していますが、当然ながら当事者イランは“売り言葉に買い言葉”的に態度を硬化させています。

トランプ大統領の国連でのイランへの敵意をむき出しにした発言に、イラン側も応戦しています。

****イラン大統領、トランプ氏を「新入りのならず者」と非難 イラン核合意破棄なら「断固とした措置取る**** 
イランのロウハニ大統領は20日、国連総会の一般討論演説で2015年に締結されたイラン核合意について、「他の国が合意に違反した際には、断固とした措置を取る」と述べ、核合意見直しを示唆したトランプ米大統領を強く牽制(けんせい)した。
 
ロウハニ師は、核合意は国際社会全体の支持を得たとして、「1つや2つの国」の判断によるものではないと強調。イラン側から核合意を破棄することはないとしたうえで、トランプ氏を念頭に「世界政治の新入りの『ならず者』によって合意が破壊されたとしたら、非常に残念なことだ」と述べた。
 
また、イランへの批判を繰り返したトランプ氏の19日の一般討論演説の内容について、「ばかばかしいほど事実無根な主張に満ちた無知で不条理、憎むべき発言」と非難。トランプ氏の攻撃に激しく反論した。
 
トランプ氏は19日の演説で、核合意を「米国にとって最悪な取引の一つ」と明言。20日にはロウハニ師の演説に先立ち、核合意への対応について「決断した」と述べ、方針転換をほのめかした。
 
核合意は、イランが制裁解除と引き換えに核開発を制限する内容。イランと米欧など6カ国が締結した。【9月21日 産経】
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イランは国内的には強硬派とロウハニ大統領らの穏健派の微妙なバランス・対立関係にあり、アメリカの挑発には強い姿勢を見せないと、“弱腰”との批判を受けて強硬派によって足元をすくわれるリスクがります。

****イラン大統領、ミサイルシステム強化明言 トランプ氏の批判一蹴****
イランのロウハニ大統領は22日、ミサイルシステムを強化していくと述べ、トランプ米大統領による批判を一蹴した。

ロウハニ氏はテヘランで行われた軍事パレードで演説し「われわれは抑止力として軍事力を強化し、ミサイルシステムを増強する。自国を防衛することに誰からの許可も求めない」と主張した。

タスニム通信によると、複数の弾頭を搭載可能で射程が2000キロに及ぶ新たな弾道ミサイルについて、イランの革命防衛隊幹部が明らかにした。

トランプ氏は19日に行った国連演説で、「危険な」ミサイルを開発しイエメンやシリアなどに暴力を輸出しているとしてイランを非難している。【9月22日 ロイター】
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実際に、イランはミサイルを飛ばしています。

****新型弾道ミサイル試射成功=米の圧力に反発―イラン****
イランは、国産の新型弾道ミサイル「ホラムシャハル」の発射実験に成功した。国営メディアが22日、発射の映像を公開した。実験の日付や場所は明らかにしていない。米国がイランとの核合意破棄も辞さない対決姿勢を強める中、イランが反発を示したとみられる。
 
「ホラムシャハル」は射程2000キロで、複数の弾頭が搭載可能。首都テヘランで22日行われた軍事パレードで公開されたばかりで、ロウハニ大統領は「抑止力のために必要なら、防衛力、軍事力を強化する」と述べていた。
 
トランプ米政権は、イランの弾道ミサイル開発に対して繰り返し追加制裁を科している。今回の発射実験に態度を硬化させるのは必至だ。【9月23日 時事】 
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緊張はエスカレートする一方のようです。

北朝鮮の問題にしても、イランの問題にしても、(北朝鮮が日本語越しにミサイルを発射したり、洋上核実験に言及したりと、常軌を逸しているようなところはありますが)、“どうして北朝鮮やイランはだめで、アメリカなどは保有が正当化されるのか?”という基本的な問題がつきまといます。

要するに、自国の安全を脅かす存在は認めないという話であり、どちらかに“正義がある”という話ではありません。“力の信奉者”たちの横暴なふるまいのとばっちりを受ける周辺国はいい迷惑です。

また、国際緊張が高まることで、国内の自由化が遅れるイラン国民も犠牲者です。

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