孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

チベット  強まる中国政府の管理・統制 開けぬ展望

2019-02-16 22:33:41 | 中国

(2018年3月10日、中国チベット自治区で2008年に起きた大規模暴動の契機となったデモから10年。チベット亡命政府があるチベット難民の最大拠点インド北部ダラムサラで、難民ら数千人がチベットの旗を振り、故郷の自由を訴えた。【2018年3月10日 産経フォト】)

【明るい展望が持てないチベット社会】
昨日のブログでは中国・新疆ウイグル自治区のウイグル族等イスラム教徒を対象にした「再教育施設」をとりあげましたが、民族弾圧ということでは、チベットでも事情は同じです。

****チベットに再教育施設 衛星写真で3つ発見=インド専門家****
インドのメディア、プリント(The Print)2月12日付によると、衛星写真分析の専門家ヴィナヤク・バット(Vinayak Bhat)氏が、チベット自治区で3つの「再教育施設」を発見したという。

20年間衛星写真を解析する経歴をもつ同氏によると、3つのうちの1つは甘孜自治州にあり、人目を避けるために都市部から遠く離れた僻地に建設されている。当局にとって「監視活動をしやすい造り」になっているという。

現在、チベットでは寺院の改修が行われており、「漢民族の建物」のように作り直されているという。これらの寺院は再教育施設として利用されると同紙は指摘した。【2月15日 大紀元時報】
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上記の「再教育施設」の真偽はわかりませんが、中国政府による厳しい管理・統制が行われているのは事実でしょう。

****中国国歌の暗唱強要、罰金も…チベット自治区で****
米政府が出資する放送局「ラジオ自由アジア」(RFA)は14日、中国・チベット自治区の住民たちが中国国歌の暗唱を強要されていると伝えた。7月1日に迎える共産党創設の記念日を前に、覚えられない場合は罰金を科す措置が取られているという。

RFAによると、この措置は5月から自治区全域で始まった。国歌を覚えるほか、共産党をたたえる歌を歌う活動への参加も義務づけられている。

自治区の農村などでは、現地のチベット語で生活する人々が多く、中国の標準語である「普通話」や歌詞を理解できない人もいる。しかし暗唱できなかったり、活動に参加しなかったりした場合は100〜500元(約1700〜8500円)の罰金が徴収されるという。【2018年6月16日 読売】
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最近は、チベットでの出来事に関するニュースはあまり目にしませんが、別に事態が好転しているという話でもないでしょう。痛ましい焼身自殺の報道を目にしないのはいいことですが。

チベットが抱える最大の問題は、ダライ・ラマ14世の後継者選定問題ですが、それについてはこれまでも再三取り上げてきましたので、今回はパスしますが、あまり先行きには明るい展望はないように見えます。

インドに置かれている亡命政府・難民社会も“ジリ貧”のようにも。それだけ、中国政府の力が強まっているということでもあります。

****印のチベット難民社会で失われる活気 国境警備厳格化、中国の圧力じわり****
中国から隣国インドに逃れるチベット難民が急減している。

2008年の中国チベット暴動から10年が経過し、国境警備が徐々に強化されてきた上、中継地だったネパールが中国の求めに応じて亡命ルートを狭めたからだ。

欧米に再亡命を図る難民も多く、亡命政府がある最大居住地インド北部ダラムサラでは、かつての難民社会の活気が失われつつある。

 ◆一帯一路で支配
「10年前は年に数千人の難民がインドに亡命したが、最近は年に数十人から100人と大きく減った」
ダライ・ラマ14世が暮らすダラムサラの亡命政府関係者が明かした。
 
09年の調査では、約15万人とみられる世界のチベット難民のうち約10万人がインドに居住しているとされる。19年の次回調査まで正確な人口は不明だが、「ダラムサラでは難民の学校や僧院などで空き部屋が目立つ」(僧侶、ロブサン・イエシさん)。亡命社会の縮小を懸念する人が多い。
 
亡命政府のロブサン・センゲ首相らによると、難民の主要なインド亡命ルートはネパールを中継する陸路だった。だが、08年のチベット暴動を受け、中国が国境管理を厳格化した上、ネパールも現代版シルクロード構想「一帯一路」を掲げる中国との結びつきから、摘発を強化した。
 
非政府組織(NGO)チベット民主人権センターのツェリン・ツォモ理事は「ネパールに到着しても、難民の個人情報が中国政府に渡されるため危険だ。中国に送還された難民もいる」と指摘する。亡命政府議会のドルマ・ツェリン議員は「中国は一帯一路の名の下に(地域を)支配している」と警鐘を鳴らした。

 ◆欧米に再亡命も
ダラムサラや首都ニューデリーの一角では、寺院や仏具店が立ち並び「リトル・チベット」と称される地域がある。しかしインドの1人当たり国民総所得は中国の約5分の1の年1680ドル(16年、約18万円)。豊かな欧米に再亡命を図る若者は増加するばかりだ。
 
ニューデリーで暮らす難民のドルマ・パルゾムさんは「インドには良い仕事がないので、欧米に亡命したい」と話した。ダラムサラで日本料理店を営む山崎直子さんの店でも、難民従業員の多くがオーストラリアなどに移住した。
 
山崎さんは「豊かになった中国で就職したいと考え、中国当局の許可を得て自治区に戻ろうとする若い難民もいる」と指摘。

「ダラムサラの難民は高齢者ばかりになった。チベット伝統の祭りも減り、チベット難民の一大拠点としての一体感も次第に薄れてきている」と話した。【2018年7月10日 SankeiBiz】
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【アメリカ 「チベット相互アクセス法」は成立したものの・・・】
中国・チベットではなく、海外でのチベット関連ニュースとしては、昨年末にアメリカで下記のような話も。

***米議会、中国チベット規制に対抗 自治区への立ち入り促す法案可決****
米議会は15日までに、米国の当局者や記者らが中国チベット自治区に立ち入るのを規制する中国当局者に対し、米国への入国を認めないとする対抗措置を定めた「チベット相互アクセス法」を可決した。

自治区への自由な立ち入りを促す狙いで、トランプ大統領が署名すれば成立する。
 
中国は「内政干渉だ」と反発、トランプ氏は米中関係の情勢をにらみ、署名するかどうか決める方針だ。
 
自治区での統治実態が調査されチベット族弾圧と批判されるのを警戒する中国当局は、外国の当局者や記者の立ち入りを厳しく規制。特別な許可が必要だが、認められることは非常に少ない。【12月16日 共同】
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下院でも、上院でも、満場一致の可決でした。
トランプ米大統領は12月19日、「チベット相互アクセス法(入国法)」に署名し、同法案は成立しました。

ただ、その後この法律に基づき何かあったという話は聞きません。

【カナダ 数にものを言わせる中国人留学生】
海外でのチベット関連のニュースとしては、カナダでの大学学生会会長をめぐる騒動の報道がありました。

****中国人留学生ら、チベット独立支持する学生会会長の解任求める=1万人近くが署名―カナダ****
2019年2月13日、観察者網によると、カナダの大学でチベット独立を支持する学生が学生会会長に選ばれたことに対し、中国人留学生らが強い反発を示している。

記事によると、先日カナダのトロント大学スカボロ校にてカナダ国籍でチベット出身のチェミ・ラーモさんが学生会会長に選出された。

しかし、8日に同大学商学部の学生コミュニティーが「中国人留学生から多額の学費を取る一方で、チベット独立主義者に学生会の管理を任せた」と学校を批判する文章を微信アカウントで発信したという。

文章は、チェミ・ラーモさんについて「大学生の金をたくさん使って、チベット独立事業に貢献している」などと指摘し、中国人留学生らに抗議のネット署名を呼び掛けている。

チェミ・ラーモさんの学生会会長解任を求めるネット上の請願書には、すでに1万人近い人が署名をしたという。

記事によると、チェミ・ラーモさんは会長選の際にはチベット独立を主張してはいなかったが、自身のインスタグラム上ではチベットの独立運動団体「フリーチベット」の名を記載し、チベット独立を主張する動画や写真、文章を多数掲載し、「チベットは中国の一部ではない」と主張しているという。

現在、同大学はすでに今回の件について調査を開始したとのこと。

また、同大学のある中国人学生は「学生会のルールでは、学生の10%の署名があれば会長を罷免できる」と指摘。

同大学の2017〜18年シーズンの学生数は9万77人で、そのうち中国本土からの留学生が最多の1万1544人で、全体の10%を超えているという。【2月14日 レコードチャイナ】
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いまや、アメリカ・カナダなど各国で中国人留学生は大学経営を支える重要な柱になっていますので、大学としても中国人留学生の意向を無視できないところはあるのでしょう。

チベットの現状に対して、中国人留学生には彼らの主張があるでしょう。
抗議声明を出すなどは問題ありませんが、ただ、上記のような大量署名を集めて罷免するというやり方はどうでしょうか?

この行動に中国当局が関与しているのか、学生らの独自の行動なのかは知りませんが、中国の存在感が世界各地で大きくなるにつれ、中国・中国人に対する反感なども各地で広まっているなかで、こうした行動は現地における中国・中国人への反感を強めるだけのように思えます。

そこらの“空気を読む”姿勢が中国側にあれば、中国を見る世界の目もだいぶ変わってくると思うのですが。


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