孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  「あんたのせいで転んだ」を防ぐ新条例「いい人法」 厳しい教育現状

2016-11-11 22:28:20 | 中国

(今回は取り上げませんでしたが、中国では、親が出稼ぎで都市部へと移動し、農村部に残されたいわゆる「留守児童」の数が902万人に上っていることが報告されています。【11月11日 AFP】)

トランプ大統領について少しだけ
トランプ大統領絡みの鬱陶しい話ばかりです。
シリア・イラクの話、アジアの情勢、ロシア・中国の動向、世界経済の話、温暖化の今後・・・・どんな話も、「で、トランプ大統領のもとでどうなるのか?」という話に行きつきます。

それだけ影響力が大きいということであり、そんな重要なポストに・・・・と言っても仕方ない話で、鬱陶しくなるだけです。

それでも、ひとつ、ふたつだけ触れておくと、選挙後はオバマ大統領との引き継ぎ会見にしても、日本への対応にしても、良識的な対応をとっているようです。それを評価して、「まともな大統領になるのでは・・・」という期待もあるようですが、“じゃ、選挙戦でのあの発言は何だったのか?有権者の気を引くためなら何を言ってもいいのか?それでまともな選挙が成立するのか?”という民主主義の根幹とも言える選挙の在り方の話にもなります。

また、大方の予測がはずれたことについて、「これまでの政治・経済の枠組みから疎外されていると感じている人々の既成政治の怒りの強さを読み間違えた」云々の釈明がありますが、そうした“怒り”があることはさんざん言われていたことで、問題はそうした“怒り”があるべき方向を向いているのか?必ずしも正しいとは言い難いものがあるとしたら、そうした“怒り”で現実政治が動かされることが許されるのか?ということではないでしょうか?

いずれも“民主主義の劣化”(“民主主義の行き着く先”と言うべきか)が懸念される問題です。

選挙後のトランプ氏の発言等で評価できるのは、彼が経済活性化のためにもインフラ投資に力点を置いていきたい抱負を持っていることです。アメリカはインフラの更新投資がなされておらず、そのことが鉄道事故頻発などにもつながっています。
トランプ版「ニューディール」は結構なことではないでしょうか。民主党大統領なら共和党議会が財政赤字を拡大する予算を絶対に認めませんが、「蜜月関係」の大統領・議会の間なら、なんとかなるのかも。

【「いい人法」が必要な中国社会の現状
鬱陶しい話はそのくらいにして、まったく関係ない暇ネタで。

中国では、道で倒れているお年寄りを助け起こしたりすると、感謝されるどころか「あんたのせいで怪我した」と逆に治療費支払を求められる・・・といった事例が多いようです。

もちろん、みんながみんなという訳ではありませんが、ここ半月ほどでも、下記のようなあきれるニュースが。
(ニュースになるということは、中国の人々も“あきれたことだ”と思っているからで、決して普通のことと考えている訳ではない証拠でしょう)

****転倒した高齢女性が「ぶつけられた」と訴え、ドライブレコーダーには****
2016年10月26日、揚子晩報によると、江蘇省南京市で、転倒した高齢の女性を助け起こした男性が責任を問われる事件があった。

中国では、路上で倒れた人を助け起こすと“犯人”扱いされ、治療費や賠償金を請求される事件が社会問題になっている。目撃者がいない場合はそのまま加害者にされてしまうこともあるが、街中の防犯カメラやドライブレコーダーが普及してきたことで真相が明らかになるケースも増えてきている。

25日午前、南京市六合区で自動車を運転していた劉(リウ)さんは、道路が非常に混雑していたため、前の車が進むのを待っていた。すると突然、自転車に乗った高齢女性が劉さんの車の前方で転倒。驚いた劉さんはすぐに車を降りて、女性を助け起こした。

ところが、女性は「ずっと私の後ろについてきて何なのよ!」と激怒。わけがわからない劉さんは「違いますよ、ついて行っていません」と反論するも、「言い訳するな。お前だ。お前がぶつけなきゃ転ぶわけないだろう!言っておくけど、人をひいた責任はとってもらうぞ!」とまくしたてたという。

劉さんの通報で駆け付けた警察が調べると、劉さんの車には追突したような痕跡はなく、女性に状況を聞くと「忘れた」と言い放った。さらに、劉さんの後ろにいた車のドライバーが「女性が自分で転んだかどうかはわからないけど、彼の車はぶつかっていないと思う」と証言。

ドライブレコーダーを確認すると、事故発生当時、劉さんの車は止まっていたことがわかった。映像を一緒に見ていた女性は発言を一変させ、「自分で転んだみたいだ」と認めた。警察は女性に口頭で注意したという。

ネットユーザーからは「詐欺未遂は立派な犯罪じゃないのか。口頭注意だけなんておかしい」「道徳論だけではだめだ。健全な社会は道徳と共に法による制限が必要だ」など、罰則強化を求める声が相次いでいる。【10月28日 Record china】
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****あんたのせいで転んだ」=中国のおばちゃん、恩人の少女に金要****
2016年11月7日、澎湃新聞によると、中国広東省で先ごろ、道に倒れた中年女性を助け起こした12歳くらいの少女が相手から金をゆすられるという騒動が起きた。

この騒動が起きたのは同省湛江市に属する廉江市の大通り。当時、少女も女性も自転車に乗っており、すれ違った女性が道の上で倒れていることに気が付いた少女は女性を助け起こした上、路上に散らばった女性の荷物を拾い集めた。

しかし、女性は礼を言うどころか少女の体をつかんで「あんたのせいで転倒した」と金を要求。

この様子を近くの喫茶店から目撃した男性は女性に対して「自分で勝手に転んだのを見た。この子は関係ない」と反論し、ぼう然とする少女に現場から離れるよう指示、女性には他の通行人からも「助けてくれた子どもにこんな言いがかりをつけるとは」「良心はあるのか」など非難の声が上がった。

中国ではこの少女のように、倒れた人を助け起こしてトラブルに巻き込まれるケースが多発しており、困っている人に手を差し伸べることをためらう人も多いようだ。

今回の騒動に中国のネット上には「厳罰を科すべき」「目撃者がいたから助かったが、もし誰も見ていなかったらどうする」「子どもに人助けの尊さを教えられない」などの意見が寄せられている。【11月8日 Record china】
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まったく唖然とするような話ですが、こうした事例があることもあって、多くの人がトラブルに巻き込まれるのを嫌い“困っている人に手を差し伸べることをためらう人も多いようだ”という社会現象ともなっているようです。

中国共産党も「これは良くない!」と憂慮しているようです。さすがです。
そこでスタートしたのが「いい人法」です。

****中国上海でスタートした新条例「いい人法」、その内容とは****
公共の場で誰かが急に倒れても、「トラブルに巻き込まれたくない」という思いから、誰も手を差し伸べないというケースが近年増加している。そのためこのような「集団的沈黙」をどのように打ち破るかが、社会各界が注目するトピックとなっている。

このような現状のなか、上海では1日から、「上海市救急医療サービス条例」(以下「条例」とする)が正式に施行された。

別名「いい人法」と称される同条例は、緊急事態における救護行為を法律で保護し、患者に損害が出た場合もその法的責任を追及しないことを明確に定め、緊急事態に遭遇した際にはすすんで救護の手を差し伸べるよう一般市民に呼び掛けている。中国新聞網が伝えた。

上海市医療救急センターの朱勤忠センター長は取材に対して、「上海が率先して行ったこの条例の制定は社会に対し、救急活動を行う際の免責範囲を明確に規定することで、助けの手を差し伸べる人の懸念をなくした」と歓迎する見方を示した。(後略)【11月3日 Record china】
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「いい人」というか、「いいこと」に関するトラブルとしては、こんな話も。

****地下鉄で席を譲ろうとした女性に相手がビンタ、その理由とは?―中国****
2016年11月9日、揚子晩報によると、中国江蘇省南京市の地下鉄車内で先日、席を譲ろうとした女性が相手の女性客にビンタされるというトラブルがあった。

被害者の余さんによると、混み合う車内で座席に座っていた余さんの側にやって来たのは子どもを連れた1人の女性だ。近くにいたお年寄りが女性に席を譲ろうとしたところ、女性は「若い乗客(余さん)だって自分に席を譲らないのだから結構です。このまま立っています」と一言。この言葉に不快感を覚えた余さんが「子どもがいるんだからタクシーに乗ればいいのに」と漏らしたことで双方は言い争いになった。

そして、一緒にいた友人からスマートフォンに送られてきた「この女性、おなかが大きいから妊娠しているのかも」というメッセージを見た余さんが思わず「もう口論は終わり。妊娠しているみたいだし、どうぞ座って下さい」と発言したことで女性がさらに激怒、「誰が妊娠してるって?。人を侮辱するにもほどがある」と最後はもみ合いとなり、余さんは相手からビンタされる事態となった。

余さんから通報を受けた警察は2人に最寄り駅で下車するよう指示。相手の女性は「“妊娠”という言葉は自分に対する皮肉だと思った」と説明しており、最終的には余さんに謝罪した。【11月10日 Record china】
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日本的感覚からすると、中国では自分の権利(と本人が考えているもの)に関する主張が強すぎるような・・・・そんな感じがします。

一気に結論にワープしますが、中国では“驚異的経済成長を実現し、軍事的にも強国となったのに、それにふさわしい敬意を諸外国から得られていない”という不満があります。

おそらく、先進国としての“敬意”は、経済力や軍事力ではなく、「いい人法」のような法律が必要のない社会が実現したとき、一部都市部だけでなく、全国の公共の場できちんと“列をつくって待つ”ことができるようになったときに、現実のものとなるのでしょう。

中国教育事情
中国関連の“暇ネタ”ついでに、最近目にした教育や若者に関する記事をいくつか。(高齢者問題はさんざん言われていますので)

****宿題に追われる中国の小中学生、夜11時を過ぎても終わらず―中国****
広東省深セン市のある名門小学校に通う4年生の児童を持つというある保護者は、最近、微信(Wechat)のモーメンツで、「夜11時を過ぎても子供が宿題をしている。母親として、子供の代わりに『宿題が多すぎる』と嘆願したい」と書き込み、大きな話題となっている。華西都市報が伝えた。

四川省成都市の梁さんも先日、同様に微信(Wechat)のモーメンツで「子供の宿題が多すぎる」と書き込み、多くの保護者が「今の小学生は大変すぎる」と共感を覚えている。

今月20日に、中国青少年研究センターが発表した「『00後(2000年代生まれ)』の発展状況研究」の調査によると、「00後」の7割以上の宿題の量が基準を超えており、塾で勉強する時間が「90後(90年代生まれ)」の2倍、過半数が睡眠不足となっている。(中略)

勉強の負担について、著名な教育専門家・紀大海氏は、「学生には負担も必要」とし、その理由について、「負担は、学生が責任感を持ったり、粘り強く何かを行ったり、ストレスに対処したりする基本的な能力を身に付けるのに役立つ」と説明。「避けなければならないのは過度の負担」と指摘している。(後略)

では、どのように負担を適度にとどめれば良いのだろう?このことについて、紀氏は、「人によって異なるが、最低限しなければならないのは、学生が十分な睡眠時間や運動する時間を取れるようにしたうえで、宿題の量や塾に通う時間などを決めること」とアドバイスしている。【Record china】
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中国の人が日本で生活すると、宿題が少ないことに驚くようです。

宿題の量はともかく、もうひとつ中国人が日本の教育現場に関して驚くのは、子供たちが教室の掃除や給食の配膳を自分たちで行っていることです。この点は、単に教育の問題にとどまらず、前述したような“敬意”を受けられる社会をつくっていくうえで、非常に重要なポイントだろうと思います。

****中国の「教育格差残酷物語****
先日、中国南部の深川先市を訪れたときのこと。現地の不動産情報を見ていて、面白いことに気付いた。中心部にある住宅地の不動産価格が、道を1本隔てただけで大きく違う。安い場所は1平方メートル3万~4万元(45万~60万円)だが、高い場所だと12万元(180万円)にもなる。
 
聞けば、値段の高い住宅地には深川市民が憧れる名門公立小学校があるのだという。中国では、名門小学校のある学区の不動産を「学区房」と呼ぶ。教員の異動は行われないため学校間の「格差」が固定されやすく、公立学校ごとに教師の質やカリキュラム、施設が大きく異なる。
 
待ち受ける厳しい受験競争を勝ち抜くため、親は何としてもレベルの高い小学校に入れたい。いい小学校にはもともと党幹部の子弟らエリートが集まっていて、生徒の質も高い。越境入学は不可なので、こぞっていい小学校のある学区への転入を目指す。その結果、「学区房」の値段は跳ね上がる・・・・。
 
教師への賄賂も横行していて、ただでさえ高い住宅ローンに苦しむ親の負担になっている。北京市のある区では、区長より教育委員会トップのほうが偉いとされる。カネと権力を一手に握っているからだ。
 
哀れなのは、このレースに加われない貧しい人々だ。名門小学校に入学できれば、エリートサークルに加わることができ、将来が開ける。カネの力で自分の子供を名門校に入れることもできる。しかしカネがなければ、永遠に「果実」の分け前にあずかることはできない。
 
もちろん名門小学校に入ったからといって、幸せになれるとも限らない。一発勝負の大学統一入学試験の翌日には、親の期待に応えられなかったと絶望して自殺する受験生のニュースが中国のソーシャルメディアをにぎわせる。親にとっても、手塩にかけたわが子が自殺されたらたまらない。
 
中国人親子が感じるプレッシャーは実に大きなもの。せめて公教育への投資をもっと増やせば学校間の格差は減るが、中国政府は遠く離れたアフリカや東南アジアにせっせとインフラ投資している。自国民の教育格差解消のほうが、他国の高速鉄道よりずっと大事なはずだが。【11月1日号 ラージャオ(「亡命」中国人漫画家)、李小牧(作家・歌舞伎町案内人) Newsweek日本版】
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“いい小学校にはもともと党幹部の子弟らエリートが集まっていて、生徒の質も高い”・・・・これらエリートも学区への転入をしたのでしょうか?それとも別方法で入学できたのでしょうか?

なお、私学に関しては“中国は義務教育期間の1年生から9年生を対象とする営利目的の私立学校の運営を禁じた。教育に対する政府の統制強化の動きで、急成長を遂げる一方で、あまり規制がされていなかった教育分野の勢いを抑える可能性がある。”【11月8日 ロイター】とも。

無料の公立に対し、高額な費用を要する私学が拡大することで、不平等感がひろがることを防ぐ格差是正の側面もありますが、“教育に対する政府の統制強化は、2012年に習近平が国家主席となって以降、情報、ニュースやインターネットなどの領域で引き締めが図られてきた流れに沿う動きだ。政府は大学における「西洋的な価値観」の広がりを阻止する運動も展開してきた。”【同上】とのことです。

ただ、法律1本で「私学禁止」となるところが、いかにも中国です。

こうした教育プレッシャーをくぐりぬけて大学を卒業しても、若者へのプレッシャーは大きなものがあるとか。(プレッシャーがあるのは、日本でも同じですが)

****GDPで日本を抜いたのに!中国の若い世代が生活上で強いストレスを抱える理由****
中国の国内総生産(GDP)が世界第2位であることは周知の事実だが、その一方で中国には「蟻族」、「鼠族」と呼ばれる若者たちが数多く存在する。

蟻族とは大学を卒業し、社会的には「高学歴」と認識されるものの、その学歴に見合った仕事を得ることができない若者たちを指す言葉であり、「鼠族」とは不動産価格の高騰のあおりを受け、太陽の当たらない地下室や防空壕など狭い空間で暮らさざるを得ない人びとを指す言葉だ。

中国経済は大きく発展したはずなのに、「蟻族」、「鼠族」のような若者が社会に存在するのだろうか。中国メディアの今日頭条はこのほど、「GDPで日本を抜いても、若い世代の中国人たちの生活上における圧力は強いまま」だと指摘する記事を掲載した。

記事は、中国のマクロ経済指標は確かに成長を続けているとしながらも、中国の若い世代の「生きるうえでの圧力は年々強まっている」と指摘し、「給与は確かに上がっているが、なぜ中国人は年々貧しくなっていると感じるのか」と疑問を投げかけた。

続けて、中国では確かに給与も上昇しているが、それ以上に物価が上昇していることを指摘したうえで、特に価格上昇が顕著なのは不動産であり、もはや中国の大都市では、親の助けなしに不動産を購入するのは難しいと不満を吐露した。

また、中国の若者たちの頭を悩ませる問題の1つは「高齢化社会」だと指摘し、世界で高齢者の数が1億人を超えているのは中国だけであり、その数はインドネシアの総人口に匹敵すると指摘している。

一人っ子政策を実施してきた中国では、1人の子どもが親の面倒を見なければならない。中国では退職後の高齢者が再就職して働くことはまずないため、若い世代は親を養ううえでの金銭的な負担を抱えることになる。記事が指摘しているとおり、現代の中国の若者たちは非常に大きなストレスを抱えている。【10月30日 Searchina】
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この手の話をしだすときりがないので、ここまで。

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